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北欧発急成長中のスタートアップ、「Karma」のビジネスモデルが"アリキタリ"なのに"斬新すぎた"お話

みなさん「フードロス」という言葉をご存知ですか?
日本では毎年600万トンもの食料が廃棄されており、この量は世界食料基金による世界全体の食料援助量の二倍にも及ぶのだそう。

コンビニでもレストランでも、賞味期限・消費期限切れの食品は全てゴミ箱行きです。なんとかこの食品廃棄を減らせないかという思いから、2016年にスウェーデンで立ち上がったスタートアップが「Karma」です!

本日は Karma を実際に使ってみた感想と、Karma のビジネスモデルの優れた点について紹介していきます。

廃棄食材を救うサービス!「Karma」とは?

簡単にいうと、売れ残りそうな食品や料理を売りたいレストランやカフェ、ホテルと、安く食品や料理を購入したい消費者をつなぐプラットフォームとなっているのが、「Karma」です。

2016年に4人の男女によってストックホルムで創業したKarmaは、2018年にはシリーズAで1200万USドルの資金調達に成功してイギリス(2018)、フランス(2019)に進出し、現在225の都市で利用されるまで急成長しています。

実際に Karma を使ってみた!

使い方は非常にシンプル!使い勝手は Uberと似ている印象でした。

①まずサインアップして、ユーザー情報とクレジットカード登録。カメレオンのアイコンが可愛いんです。

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②位置情報をonにして、売れ残り(売れ残りそうな)食品を探す!

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③買いたい商品を選択
思っていたより多くのお店が売れ残り食品をリストアップしていました。スタバやespresso house(北欧最強のコーヒーショップチェーン)を始めとする大手チェーンも積極的に参加しているのが印象的でした。僕は試しにスタバの商品を選んでみました。

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このように、お店を選択すると、選択したお店で購入できる商品のリストが出てきます。Karmaはフードロスを減らすことを目標にしているので、最低でも50%は値引きされているのでとてもお得です。(10%値引きぐらいだと、消費者がそこまで買いに行くインセンティブが湧かず、結局食品が廃棄されてしまうかもしれない。)

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④ピックアップ!
アプリ上で決済も済み、あとは指定された時間(だいたい閉店時間)までに食品を取りに行けばいいだけ!とても楽です。美味しく、スタバのトーストをいただきました。

1クリックで簡単にオシャレコーヒーショップや、オシャレホテルのあまりご飯を無料で頂けるこのサービス。アプリの操作方法も簡単で、非常に使いやすかったです!

「八方よし」のビジネスモデル

このサービスの優れた点として、関わるステークホルダー全員にとって"Win-Win"となる関係を作り上げられていることがあげられます。

1. 消費者にとってのWin
まず私たち消費者にとって1番嬉しいのは、「半額以下でレストランやホテルの料理が購入できる」点でしょう。メニューまで表示されるので、毎日の気分に合わせて自分の好みの料理を帰るのは嬉しいですね。

実際に街の中心地で働く、サラリーマンやOLの方達に大人気なんだそう。仕事中に支払いを済ましておき、仕事帰りにお店に寄って晩御飯をピックアップする人が多いんだとか。確かに、リーズナブルに晩御飯を手に入れられる上に晩御飯を作る手間も省ける一石二鳥のこのサービスは”忙しいけど、まあまあお金のある”20~40代のデスクワーカーにウケるのもうなづけます。

また、大学生や、年配の層の人たちも、”新しいお店を知れるチャンス”となっているようでまたまた人気なんだそう。

2. お店側にとってのWin
カフェやレストラン、ホテル側のメリットとしては、まず廃棄するはずだった商品を売ることができるので、売り上げが伸びます。

また、先述したように Karma を使えば、普段来てくれないような顧客を呼び込むチャンスになります。一度 Karma を使ってみて来てくれた新規顧客が、お店のことを気に入って普段から使ってくれるようになるかもしれません。そうなれば、新規顧客による売り上げ増加も期待できます。

また、Karma を継続して使うことで、お店の販売状況が自動的に分析され、どうしたら"もっと利益をあげられるか"、"どうしたら食料廃棄を減らせるか"についてのアドバイスを教えてくれる機能もあります。("今日は3時間早く、この商品をKarma にアップロードしよう"など)

3. Karma にとってのWin

では、Karma はどのように収益をあげているのでしょう。実は、各店舗はKarmaを通じた売り上げの25%を仲介料として支払う必要があります。また、各取引ごとに取引量として、消費者は3kr(30円ほど) Karma に支払います。プラットフォームとしての地位を一度確立してしまえば、Karma を使う人が増えていけばいくほど、Karma の売り上げも向上していく仕組みです。また、各消費者の食に対する好みなどに関するビックデータから得たインサイトを活かせば、新しい技術や新サービスの開拓も可能かもしれません。

4. 環境にもWin

冒頭にも少し触れましたが、世界では毎年約100億トンの食料が生産されていますが、そのうちの実に3分の1の量の食料が廃棄されているそうです。このフードロスによる余分な年間のCO2排出量は、300万台の車のCO2排出量と同等にまで上るというのですから、驚きです。

日本でもコンビニで、よく賞味期限切れのお弁当の大量廃棄や、恵方巻きやクリスマスケーキの大量廃棄が話題になりますが、このアプリがあればそういった問題の解決に繋がるかもしれません。

でもこのサービス、フードロスの根本的解決になっている?

このように Karma は、消費者にもサプライヤーにも環境にも優しい「八方よし」のビジネスモデルを採用しています。

“Food has an expire date, our planet shouldn’t”  というスローガンをかがけ、廃棄されゆく食品を救う Karma のサービスはシンプルながら画期的でした。

また、Karma, 「カルマ」とは仏教用語で「将来にまで引き継がれていく行いこと」を意味するそうです。SDGsを始めとする持続可能な発展がどの企業やサービスにおいても強調される中、実際に次の世代の社会の利益に直結するサービスが日常的に受けられているのは素敵ですね。

ただ、ずっと心に引っかかっている疑問が一つだけあります。果たして、このサービスのやってることはフードロスの根本的な解決に貢献しているのでしょうか。もちろん、素晴らしいサービスだとは思います。ただ、お得にご飯が買えるからといって、消費者全体の食事の消費量は増えるでしょうか。

消費者が Karma を使ってご飯を買うということは、Karma がなかったらその消費者が買うはずだったスーパーや他のレストランの食材が買われなかったということになります。つまりKarma を使ったところで、一部の店舗のフードロス問題は解決するかもしれませんが、全体としてフードロスの問題は解決していないのではないでしょうか。

フードロスの根本的な問題は、合計の供給の量が合計の需要の量を超えていることだと思います。
少し専門的な話になってしまいますが、Karma は価格弾力性が1以上の食品のフードロス問題解決には貢献しているが、価格弾力性が1以下の食品のフードロス問題解決には貢献していないのではないのでしょうか。

価格弾力性…価格が1%下がった時に、需要が何%向上するかを示した経済学用語。例えば、スタバなどの嗜好品は価格が1%低くなっていたら、1%以上の人が買いたいと思う傾向が強いです。(このような商品は、価格が下がると合計の売り上げは向上することが知られています。)しかし、コメやパンといった日常的に食べるものは価格が1%下がっても、買いたいと思う人の人数はそこまで変わりません。(このような商品は、価格が下がると合計の売り上げは下がります。)

農業は年々の天候に左右されやすいこともあり、安定してこの量を提供することが難しいです。そのため豊作になりすぎても、豊作貧乏と呼ばれる、過剰供給による市場価格の低下を避けるために農家がトラクターで野菜を潰すような現象が起きてしまいます。

フードロスの根本的解決のためには、市場に出回る前の生産過程まで含めて、現在の流通過程を見直す必要があります。しかし、そこまで大きい構図で社会を捉え、変えられる影響力をもつ機関って国ぐらいしかないのではないのでしょうか。

この点に関しては、また時間があったらNoteに書こうかなと思います。

最後に

本日は、Karma という北欧のスタートアップとともに自分が思っているこのサービスの優れた点・不十分かもしれない点を書きました。

なにはともあれ、フードロスという大きな問題に対して、このように目を向けているスタートアップが社会に受け入られ、成功しているのは素晴らしいことだと思います。

また、一消費者目線からみるとこのサービス、本当にお得だし使い勝手がいいんです!!!(今日の晩ご飯と明日の朝ご飯用のパンの詰め合わせを半額でゲット!)

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千里の道も一歩から。

Tsubasa

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