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タスマニアでワイン作り〜ワインの酵母編〜

こんにちは。私はオーストラリアのタスマニアのワイナリーでヴィンテージの間、ワイン作りを勉強しています。こちらに来たのは3月半ばですが、今後の記録も兼ねて、畑仕事やワイン作りについて色々とこちらに残していけたらと思います。

酵母とアルコール発酵について

今日は発酵の際に必要となる酵母(イースト)について。酵母は単細胞の真菌類で、糖類を発酵させる能力があります。ワイン作りにおいては、ブドウ果汁に含まれる糖分をアルコールと二酸化炭素に変換します。

発酵はワイナリーの空中に存在する野生の酵母によって自然に始まることもあれば(Wild Fermentation)、特定の酵母株を添加することによって制御されることもあります(Controlled Yeast)。発酵は通常、温度を管理された環境で行われ、数日から数週間かけて完了します。この過程はワインの風味やテクスチャーに影響を与え、最終的な製品の品質を決定する重要な段階です。

酵母はどうやって決めるの?

基本的にはブドウの品種と、作り手が実現したいスタイルによって適した酵母の種類が決まってきます。メーカーのカタログがあり、それを見ながら決めるとのこと。ただ酵母によって同じブドウでも引き出される風味が異なってくるため、必ずしもカタログで推奨されている酵母を使うのではなく、色々と試してみて決めるケースもあるようです。

例えば、今年は私たちのワイナリーでは、ピノノワールを2種類の酵母を使って発酵しています。1つは通常のピノノワール用の酵母。もう一つは、シラー用に使っている酵母で、ピノノワールに使うとフルーティーさをより強く引き出すことができるが、ボディが少し足りないので単体で使うのには向かないというものです。このシラー用の酵母で発酵したものは、後からフルーティーさを加えるために通常酵母のものに少しブレンドするというアレンジになりそうです。

以下写真のQA23は白ワイン(ピノグリ、ソーヴィニヨンブランなど)、RC212は赤ワイン(ピノノワールなど)、InitiaはProtective Yeastと呼ばれ、発酵前に望ましくない微生物を制御するために使われます。EC1118は強めのイーストで、自然発酵させようとしていたスパークリング用のワインが一定期間経っても発酵しなかったので、投入しました。

酵母の準備、投入


イーストの準備の仕方ですが、約30度のぬるま湯に、イースト(粉状)を投入し、よく混ぜ、10分ほど待ちます。その後、発酵予定のタンクからブドウ液を少し取り出して混ぜて、温度が適温である18度まで下がってからタンクに投入します。ブドウ液との温度差が大きいとイーストが驚いて死滅する可能性があるため、10度以下まで温度差を縮めます。その後、ブドウ液にミキサーのような攪拌機を使いながら、混ぜ入れます。

イーストをぬるま湯に投入し、混ぜる。
温度が適温に下がるのを待つ。
膨らんだ様子
発酵中のロゼスパークリング
発酵中ピノノワール

自然発酵(ナチュラルワイン)の良し悪し


最後に、酵母を投入せずに自然発酵させた所謂 「ナチュラルワイン」呼ばれるものとコントロールされたイーストで発酵された通常のワイン、どっちが良いの?という疑問について。

これは、作り手の方針によります。自然発酵の場合、ブドウがもつ力を最大限発揮できる一方、発酵のタイミングや風味など、コントロールできない要素が沢山あります。また、同じように作っても、毎年異なる味わいになる可能性があります。「ブドウにワインの出来を任せる」という考え方になります。この意味で、毎年継続して同じ味を作り続けたいワインメーカーにとっては適さない方法です。

全く同じヴィンテージ、同じピノノワールのワインをテイスティングしたところ、明らかにアロマ、フレーバーが異なりました。コントロールされた方のワインはクリアで雑味がない、綺麗な赤ベリー系の味わい、自然発酵の方は少しシダーやボタニカル系の味わいがあり、複雑さがありました。因みに、最初にブラインドテイスティングした時に、私が好きと答えたのはコントロールされた方のワインでした!(値段は自然発酵の方が数十ドル高い)発酵の仕方ひとつで味わいが変わる、ワインの面白さをまたひとつ感じました。

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