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低空飛行は緩やかに死に向かうなかれ。むしろいましか残せない「サッカー」もある

「いまは何を発信しても深く届く感じがしない」

と、前回のnoteに書いた。絶望的に、本気でそんな気がしていた。
2月25日にJリーグの開催延期が決まって、翌日、一般の見学者はすでに立ち入り禁止となったグラウンドで滑り込むようにメディア取材だけは行われたけれど、それっきり、大分トリニータは長い非公開期間に入りました。

電話やweb会議システムを使った遠隔取材なら直接接触しないから問題ないのではないかと何度か申し入れたものの、やはり世の中の情勢が情勢だけにクラブの腰は重く、次第にメディアからチームやクラブの情報が少しずつ消えていきました。

緊急事態宣言がいつ出されるかという状況になり、活動休止するチームが相次ぐ中で、情報発信はクラブごとにバラつきがある状態。それも少しずつ勢いを失っていく感じで、事態が長引くにつれ、さまざまなサッカーメディアが存在の影を薄くしていくように見えました。

低空飛行でも飛び続けることが大事。そう思っていた時期もありました。でも、たまに記事を書いても、読者の反応が薄い。いまはみんな開催されないサッカーのことよりも、マスクや給付金や感染者数のことで気持ちがいっぱいいっぱいなのです。それが当然です。でもそのことがSNSを通じてある程度の肌感として測れるので、ダイレクトにメンタルダメージを食らう。同様の不安について、何人かの同業者たちと話しあい励ましあったりしました。

まだまだ続くであろうこの状況下では、たとえそれが低空飛行であったとしても、すべてが疲弊していく中で同じ高度を保とうとすれば、求められる力は次第に大きくなる。現状維持は後退でしかない。現にクラブ公式SNSへの反応の数値もあからさまに落ちている。トリテンTVの日々の再生数もガタ落ちです。

これは目先の仕事の死だけを意味するものではありません。放置すればJリーグそのものの衰退を、ただ見ているだけになってしまう。自分たちの生業が脅かされることももちろんですが、それ以上にここまでコツコツとみんなで築いてきた日本のサッカー文化が瓦解しかねないのが本当につらい。

ほとんどのクラブが経営面を圧迫されているに違いなく、アルビレックス新潟の是永社長が真っ先に声を上げました。

経営面・運営面は各クラブに頑張ってもらうしかないのですが、それを少しでもメディアが支えていかなくてはなりません。きっといまクラブには広報戦略を練るまでの余裕がないのです。だからお願い、まず取材させてー!!

…で、ようやく4月10日、トリテン用に、zoom経由で片野坂知宏監督のインタビューが実現しました。続いて14日には島川俊郎選手のインタビュー。15日には片野坂監督の合同記者会見。18日には鈴木義宜キャプテンのインタビュー。インタビューを終えたら片っ端から記事を書き、動画を編集して次々に更新しました。クラブもひとたび動き出せば弾みがつきます。リズミカルにスケジュールをつないでいくために、トリテンTVではリレーインタビューをはじめました。選手から選手へ。

もしかしたら今季かぎりで引退を考えていた選手だっているかもしれない。契約満了や移籍によってチームを離れる選手もいるはず。2020年の大分トリニータは二度と再現できないのに、もしかしたらこのまままともにリーグ戦を闘うことなく解散することにもなりかねません。活躍を期して今季をスタートした選手たちも、彼らを編成した強化スタッフも、コーチたちやチームスタッフも、新チームに期待してシーズンパスやレプリカユニフォームを買ったファンやサポーターも、それではみんな報われなさすぎる。

サッカーが出来ないのに何かを発信したところでどうなるんだという逡巡もなくはなかったけれど、人生には想定外のこういう時期があり、それをそれぞれがどう乗り越えたかも含めサッカー選手やクラブ関係者やサポーターやサッカーメディアに携わる者としての生き方だと思うから、やっぱりそれはサッカーの一部であり、ちゃんと残さなきゃならない、と思うのです。

鈴木義宜キャプテンも、インタビューのときに聞きましたが、キャプテンらしくいろいろ考えていたようです。そしてこう言ってくれました。

「選手の負担がどうこうとかも言いますけど、これだけ時間があって負担とかは、そんなにないから。大丈夫です」

心強い。ありがたい。

選手たちも各種SNS個人アカウントでファンやサポーター向けにいろいろと発信しています。それももっと有機的にたくさんの人たちに届けたい。その仕組みを腰を据えて作れるのは、リーグが中断しているいまかもしれない。

というわけで、いろいろ進めています。もう世知辛いことは言っていられない。逆転の発想的メディアミックス作戦とかね。

やっぱり、一度落ち込んだ数字は簡単には元に戻せません。だけど立て続けにジャブを打つことで、少しずつ、自分の身のまわりから、空気感が変わってきた感触があります。これを息切れせずにどこまで続けられるか。

でも、取材できる環境・状況が整ったことで、自分自身もちょっと息を吹き返しつつあると感じていたり。徹底して現場主義を貫いてきた自分は、取材できないとこんなにも死ぬのだとあらためて知った。

取材に応えてくださるみなさま、取材をセッティングしてくださるみなさま、書く場所を与えてくださるみなさま、そして読者のみなさま。そのありがたさがいっそう身にしみる昨今であります。

サッカーを原点として、その周辺で、それぞれの立場で、みんなが互いに求め求められる存在で。

昨日インタビューさせてもらった小出悠太選手がこう言ってました。

「(再開したら)僕自身もサッカーの楽しさをあらためて感じると思うし、サッカーができることの喜びを噛み締めながら思い切りプレーしたいです」

そうそう。ここんとこ、トリテンは無料記事多めです。有料会員でない方も、この機会に是非御覧ください。以下3本、リンク貼っときます。


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サッカーと短歌を主軸とした物書き。サッカー専門紙「エルゴラッソ」、大分トリニータ公式サイト「トリテン」などに執筆。著書『大分から世界へ』『サッカーで一番大切な「あたりまえ」のこと』『監督の異常な愛情』『救世主監督 片野坂知宏』『カタノサッカークロニクル』、歌集『きりんのうた。』。