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小説・「塔とパイン」

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作:よわ🔎 概要:45歳、片田舎の洋菓子店のパティシエが、紆余曲折、海を渡ってドイツでバームクーヘンを焼き始めた。 ※毎週日曜日更新(予定) ※作品は全てフィクションです。著…
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#バベッタ

小説・「塔とパイン」 #21

小説・「塔とパイン」 #21

「おはよう」

スマホに届いたメッセージで、まどろみから抜け出した。そうだった。昨日の夜、ベッドの上でスマホ片手に彼女ととりとめのないメッセージのやり取りをいくつか交わしてしていたはずだった。

いつの間にか、眠りについていたらしい。

スマホの電池表示が62%を示している。使い切ったわけでもなく、かといってこの残量では、一日を乗り切ることもできない。一喜一憂せず、快適に過ごすのなら、補給が必要だ

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小説・「塔とパイン」 #20

小説・「塔とパイン」 #20

バベッタと初めて出会ったのは、そう、市役所だ。右も左もわからない中、渡欧してドイツに来た。来ただけではダメで、住民となるには役所に届け出をしなけりゃならない。

前情報では「英語が読めれば何とかなる。」はずだったけれど、期待外れだった。英語での案内などなく、文字はほぼドイツ語だ。特段ドイツ語ができるわけでもなかった僕。

「全く、わからない・・・」

どこにいって、なにをすればいいのか、なにがどこ

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