ショートショート「シャープペンシル」
言葉にしたほうがいい一日、というのがまれにある。
でもそれは同時に、言葉にしすぎて自分が感じたはずのそのままの気持ちを取りこぼしてしまうこともある。
だから、今日はショートショートを言い訳のように更新します。
テーマは「シャープペンシル」でした。
そういえば小学生のとき、なぜだかわからないけどシャープペンシルは禁止で、鉛筆で授業を受けるように先生から言われたことがあった。
でも、「シャープペンシルは禁止です」は、まるでダチョウ俱楽部の「押すなよ押すなよ!」みたいに、みんなの背徳感をゆっくりと撫でまわしたのだと思う。
次の日、学校に鉛筆型シャープペンシルを持ってきたクラスメイトがいた。
クラスメイトは一躍人気者になって、みんなが同じような鉛筆型シャープペンシルをこっそり学校に持ってくるようになった。例にもれず私も、鉛筆型シャープペンシルを買ってもらいどきどきしながら授業中にこっそり使ったりしていた。
でも、結局シャープペンシルはバレるのだ。
シャープペンシルをシャープペンシルをたらしめているのは、鉛筆では出せない独特のカリカリ音と、力を入れすぎたときに芯が折れる「パキッ」という小さな音だ。
静かな授業中、「パキッ」「パキッ」「パキッ」っと3連続折れが続いたとき、先生が「シャープペンシルを使ってますね?」とクラスを見回した。
そのときの、「悪いことをしてしまった」といううっすらとした罪悪感と、「でもみんな使っていたし……」という連帯感がクラスに蔓延したことを私は忘れないだろう。
”終わりよければすべてよし” になれましたか?もし、そうだったら嬉しいなあ。あなたの1日を彩れたサポートは、私の1日を鮮やかにできるよう、大好きな本に使わせていただければと思います。