神田古本まつり2022に行ってきた

先日、3年ぶりに開催された神田古本まつり2022に行ってきた。

帰るときには日が暮れ始めていた。日が短くなってきた。

昼間から行ったけれど、めちゃめちゃ晴れてた。朝のニュース番組では、きれいなニュースキャスターが「秋の行楽日和が戻ってきます」と言っていた。その通りだった。

歴史的古本も、文学的古本も、音楽的古本も、カルチャー的古本も、すべてが青空の下で並び置かれていた。縦にいく段にも並んだ本棚の中で、高さの同じ本がぴったりとはまっていた。

ああ、この光景が好きだと思った。

本棚だけじゃなくて、ワゴンの中にも背表紙が見えるようにぴったりと本が敷き詰まっていた。小学生のとき、運動会でお母さんが大きなお弁当箱にサンドイッチを詰めてきてくれたのを思い出した。サンドイッチたちも、お弁当箱の中で綺麗に詰まれていて、中身が見えた。

そんな高い本棚や、本が詰まったワゴンの前に人がワラっと集まっていた。「ああ、これは……」と手に取った本をしげしげと眺める教授のような人もいれば、ぱたぱたと表紙を確認するだけのお姉さんがいて、「うわ! 懐かしい!」と図鑑を指さす恋人がいた。

ああ、この光景が好きだと思った。

そしてきっとそれを思っているのは私だけではないことがよくわかった。

「3年ぶりの開催だよー! 特別に50%オフで売り出してるよー!」と叫ぶお店の人がいて、「実は今日のために仕入れてきたんです」と囁くお店の人がいて、「この日がかき入れ時なんです」と笑うお店の人がいた。

楽しみにしてた。お客さんも、お店の人も。そのことが、並ぶ本からもわかったし交わされる会話からも見えてなんだかぽかぽかした。

途中、ワゴンを眺めていると、隣に小学生の男の子がきた。私と同じように、熱心に背表紙を眺めては気になる本を取り上げて表紙を見ていた。そして「これ、絶対ほしいな……」と彼が小さく呟く。その手には、妖怪大全2000、というタイトルの本が握られていた。「何かいい本あったか?」とちょうどいいタイミングで彼のお父さんがやってきて声をかける。「これ」と男の子が本を渡すと、お父さんが「懐かしいなー!」と息子の頭を撫でた。

妖怪大全2000は、200円だった。200円で本が親子の過去と今を繋げたのか、と思った。泣きそうになった。


私は本が好きだから、こうして本が集まるイベントも大好きだ。読むときはどうしたって孤独なのに、イベントはこんなにも騒がしい。ここにいる人は「本が好き」という共通点があることが不思議で、その共通点を持った人がたくさんいることも不思議だった。

青空の下。吸い込んだ空気の中に、古本の黴た匂いが混じっていた。酸素と一緒に身体に入る本の匂い。

青空の下。信じられないぐらいたくさんの本があった。たくさんたくさん本があった。たぶん、読み切れることはない。でもそれが生命線になるし、死ねない理由になるなと思った。


私も調子にのって5冊のカバー本と、3冊の文庫本をお迎え。ちょうど昨日、本屋大賞の「同志少女よ、敵を撃て」を読み終わったからいいだろうと自分に甘えた。

心なしか狸も笑っていた。3年ぶりのこのまつりが嬉しかったのだろうし、私が自分に甘いのを見透かしていて笑っていた。ような気がする。

”終わりよければすべてよし” になれましたか?もし、そうだったら嬉しいなあ。あなたの1日を彩れたサポートは、私の1日を鮮やかにできるよう、大好きな本に使わせていただければと思います。