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コンサートづくり |『弦楽』


母校のホールでの自主公演『弦楽』。
一からつくる、全てが自分次第の一大決心のコンサートを、洗足学園音楽大学 前田ホールで開催することになりました。

開催の経緯、コンセプトやプログラム、フライヤーのことなど、コンサートづくりの裏側やこの演奏会に込めた思いを綴りたいと思います。


洗足の大学院では、修了試験後に各専攻首席奏者による『大学院グランプリ』という演奏会が行われます。
有難いことに、私は2016年度にそのコンサートに出演させていただき、準グランプリに選ばれました。そして、副賞としていただいたのが“前田ホールでの演奏会開催権”でした。

大ホールでコンサートを開催すること(前田ホールは約1000人収容)は、音楽家にとって夢のようなことです。夢なようなこと過ぎて、正直いただいた当初は何をすれば良いんだ?!と想像がつかず、半パニック状態でした。
しかし、学生の頃から数え切れないくらい演奏をし、たくさんの思い出の詰まった場所で、自分だけのコンサートをできるという本当に恵まれたこの機会を「特別なものにしたい!」という思いがどんどん湧き上がっていきました。そして、コンサート開催を決断し準備を進めていきました。


この特別なコンサートでどんなことをしたいか、届けたいかを考えたとき、主催は私なのだから、私の好きなことで埋め尽くしたい、色々な枠に捉われず、且つ独り善がりでなく、きちんと伝わるものにしたいと思いました。



弦楽器オンリーで色々な編成のプログラム
ソロの自主公演というと、無伴奏曲やピアノとのデュオの曲を選ぶことが多いですが、今回は「弦楽器の魅力」をたっぷり伝えたいという思いから、ヴァイオリン無伴奏、ヴァイオリン&チェロのデュオ、ストリングオーケストラ…といった弦楽器だけの様々な編成の曲目でプログラムを構成しました。

私はヴァイオリンはもちろんですが、ヴィオラやチェロ、コントラバスのそれぞれの音色、また4つの楽器が合わさった時の響きがたまらなく好きです。
弦楽器の魅力は、多面性、多彩性なところ。
奥深く響く重厚感のある音色、華やかで煌びやかな音色、優しい音や鋭い音、繊細だったり大胆な迫力があったり…様々な性格があります。
今回は、その弦楽器の魅力を存分に味わえる、私の大好きな曲を選びました。
1曲目はひとり、2曲目はふたり、3曲目は弦楽合奏、4曲目は弦楽合奏+ソロ。編成が大きくなっていくごとの変化や面白さも楽しんでいただけたらと思います。

その中でも弦楽合奏+ソロの編成の『ブエノスアイレスの四季』はずっと憧れていた曲でした。いつか演奏したいと思っていたけれど、実現できる機会が本当に巡ってくるとは…

弦楽オーケストラのメンバーは、学生時代の大好きな同期や後輩、社会に出てから仕事で仲良くなった方など、素晴らしい演奏家の方々です。みんな快く引き受けてくださり本当に感謝です。


こだわりが詰まったフライヤー

ラックに設置されている数あるフライヤーの中から、目に留まり手に取ってもらえるようなものにしたい、
私を知らない方にも、フライヤーを通して興味を持ってもらい「行ってみようかな!行ってみたいな!」という気持ちにさせられるようなものを作りたいと考えていました。

フライヤーはイイダユキさんに作成していただきました。
彼女はグラフィックデザインを専門とする方で、実は小中学校の同級生でもあります。
なかなか会う機会は無かったけれど、SNSで繋がっていたため作品を目にする機会があり、本当に素敵だな〜と惹かれていました。
今回迷うことなくユキさんにお願いしたいと自分の中では決めていました。しかしそれまで連絡を取り合うことはしていなかったので、いきなりお願いすることにかなり緊張していましたが、あのとき思い切ってお願いして良かったと本当に思います。
私のイメージすることを拙い言葉で伝え、それを汲み取り発展させ、思いがけない別の角度からの発想や提案をしてくれ、どんどん形になっていきました。

また、このフライヤーのメインである花々で埋め尽くされたヴァイオリンは、マスク作家のkokiさんに手掛けていただきました。
ユキさんと打ち合わせで出来上がったイメージを、この見事に形にしてくださいました。

フライヤーに込めたメッセージは、

「花々で埋め尽くされたヴァイオリン」
四季の花をそれぞれ構成していて、
ビオトープ(生物の生活空間のこと)をイメージしています。
生活空間に弦楽器の音楽を楽しんでもらうことをメッセージにしています。

よく見ると、アルゼンチンに実際に生息する昆虫が隠れています。(今回演奏するブエノスアイレスの四季と関連づけて…)

「蝶」
羽ばたき=振動 というところから、音と親和性があると感じ、バタフライエフェクト(ほんの些細な事がさまざまな要因を引き起こした後、非常に大きな事象の引き金に繋がることがあるという考え方のこと)をモチーフに持ってきました。
蝶の羽ばたきひとつで竜巻がおこるような、そんな衝撃的な演奏会になるといいなという思いを込めています。


生配信

今回、有観客での開催ですが、同時に生配信も行います。

去年、予想していなかったコロナウイルスの影響での演奏会の仕事の激減。
この『弦楽』も当初は昨年度末に行う予定でしたが、延期せざるを得ない状況になりました。

どうにか演奏をする機会を作りたいと、昨年は無観客生配信コンサートを4回行いました。
最初は、「会場にお客さまを入れることができないから」というある意味ネガティブな理由で始めましたが、実際はこんなに可能性のあることなのか、とプラスの面を実感しました。
私は故郷が島根なのですが、地元の友達や家族が楽しみにして観てくれたり、youtubeを通して知っていただいた方が観てくれたり、場所を選ばず色々な地域で見られるという点がありました。
また、お家から気軽に観られて良い、いう感想もいただきました。

考えてみれば、以前からアーティストがライブをするのと同時に、生配信や映画館でのライブビューイングを行ったりするというのは何も珍しいことではありませんよね。

遠方の方など今回足を運べない方にも観ていただけるように、
また、少し覗いてみようかなと気軽な気持ちで観ていただいたり、より多くの方に楽しんでいただけたら、という思いです。

生演奏を現地で聴くことも、生配信を視聴することも、それぞれの良さがあって、色々な鑑賞方法を選択できるってとても良いことだなと気づいたことは、コロナ渦で得た学びです。

クラウドファンディング
より多くの方にこのコンサートのことを知っていただきたいという思いから、クラウドファンディングを12/11〜1/11の期間で行うことにしました。
返礼品としてチケットをご用意していて、一般発売より早く受け取ることができます(一般発売は1/12〜)。
またクラウドファンディング限定のペアチケットもあったり、その他フライヤーデザインのステッカーやポストカードなどのグッズも製作予定です。

長くなりましたが、もちろん何より、聴いてくださった皆さんに伝わる演奏をできるよう、しっかりと準備を進めていきたいと思います。
会場でお会いできること、心から楽しみにしています。









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