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【映画で楽しむ歴史】俺たちに明日はない

『俺たちに明日はない(原題:BONNIE AND CLYDE)』

※この記事は結末のネタバレを含みます

1967年に公開された、アーサー・ペン監督のクライム作品。

この作品はアメリカン・ニューシネマの先駆けとして有名だ。

主人公は実在した強盗コンビ、ボニーとクライド。

彼らの恐ろしく、そして自由な生き方を描いている。

舞台は1930年代前半のアメリカ。

テキサスの片田舎で暮らしていたボニーの前にならず者のクライドが現れる。

彼女はクライドの危険な香りに惹かれ、彼と行動を共にするようになる。

やがて2人は町から町へと銀行強盗を繰り返していく。

道中、車の整備係としてC・W・モス、クライドの兄とその妻も仲間に加え、5人で世間を賑わす強盗団となる。

彼らは銀行を襲い、貧しい者からは金を奪わない義賊的振る舞いから、時のロビン・フッドだと持てはやされた。

しかし、彼らを捕まえようと追いかける者は着々と増えていく。

そして遂に銃撃戦の末、クライドの兄とその妻が捕まってしまう。

ボニーとクライド、それにモスは撃たれながらも何とか逃げ出すことが出来た。

だが、クライドの兄が死に、その死を嘆き悲しんだ妻がボニーとクライドを追いつめる証言をする。

満身創痍のボニーとクライド、モスの一行はモスの実家を頼る。

そこで傷を癒し、再起を図ろうとしていた。

しかし、クライド兄の妻の証言、それにモスの父親による密告により、ボニーとクライドの背後には密かに追跡者が迫っていた。

そして、ボニーとクライドは買い物からの帰り道、待ち伏せていた追跡者たちから一斉射撃をくらい、80発以上の弾丸を浴びて絶命した。

1934年5月23日のことであった。 

ボニーとクライドが各地で暴れ回った時代、世は世界恐慌の真っ只中であった。

「暗黒の木曜日」と呼ばれる1929年10月24日、ニューヨーク株式証券取引所での株価の大暴落を引き金として始まった世界恐慌。

世界が未だ経験したことのない最大規模の大不況であった。

資本主義諸国では次々と企業・銀行が倒産し、失業者の増大、社会不安が広がった。

そのような息苦しさの中で、人々は自由に振る舞うボニーとクライドに光を見出したのであろう。

苦しい状況を少しでも忘れさせてくれる光を。

人々はボニーとクライドを英雄視した。

だが、2人はまごうことなき悪人である。
銀行を襲い、罪のない人々を殺したのだから。

しかし、人は暗闇の中にあってはどんな光でも求めるものなのだろう。

たとえ、罪深き犯罪者であっても。

(終わり)


※『俺たちに明日はない』一言メモ

Netflixオリジナル映画『ザ・テキサス・レンジャーズ』という作品。
この作品はボニーとクライドを追う側の話である。
逃げる話と追う話、両作品を見比べるのも面白い。

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