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【歴史小話】帰納法と演繹法【超短編】

思考方法の一つに帰納法演繹法というものがある。

※帰納法とは
観察や実験を重ねて多くの個別的事実をつかみ、そこから一般的な法則(理論)を導き出そうとする思考方法。
※演繹法とは
ある命題を立てて、それを論理的に発展させ、結論を導き出そうとする思考方法。

これらは17世紀以降のヨーロッパで生まれ、発展した。
特に、イギリスフランスで。

イギリスでは帰納法が、フランスでは演繹法が生まれ発展した。

地理的には近い両地域で、異なる思考方法が生まれたのは大変興味深い。

この違いは、歴史にも現れている。

イギリスの歴史を振り返ると、国の根幹を揺るがし、社会構造を劇的に変化させるような革命や動乱といったものが少ないように思える。
フランスやロシアと比較して。

少なくとも、国民が王家を打倒し、共和制に移行するようなことはなかった。

政治的・社会的な根幹を揺るがすような事態の少なかったイギリスでは、過去の事実というのは大変参考になった。

つまり、過去の失敗や成功の事実を参考にしながら、政治運営を行えた。

故に、過去の経験から得られた個別的事実から、一般的な法則(理論)を導き出そうとする帰納法が生まれたのは自然なことだと言えるだろう。

一方、演繹法の生まれたフランスはどうであったか。

18世紀には、歴史の転換点とも言うべき革命がフランスの地で起こる。
即ち、フランス革命である。

革命とは過去との決別を意味する。

過去の遺物と化した王を否定し、その後誕生した皇帝もまた過去のものとなった。

フランスでは歴史の揺れ幅が大き過ぎて、過去の事実が参考にならなかったのだ。

故に、絶対的な前提を求め、そこから結論を導き出そうとした演繹法が生まれた。

絶対的な前提があったから、フランス国民はフランス革命という一大事を成し遂げられたといえる。

このように、考え方一つとっても歴史は息づいてるものだ。

(終わり)

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