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2021年から映画をしっかり見始めたやつが、2022年4月に鑑賞した新旧混在の映画の中から5作品を選んで発表します

今年1月、「2021年から映画をしっかり見始めたやつによる2021年映画ランキング」を行いましたが、それの月次バージョン(ベスト5作品)です。

4月もたくさんの素晴らしい作品に巡り会えました。(悩んだ・・・)
では、早速発表していきます。


5位 「SR サイタマノラッパー」

[あらすじ]
レコード屋もライブハウスもない、サイタマ県北部のフクヤ市。地元の青年IKKUの夢は、いつか世界的なラッパーになることだった。彼は、仲間のTOM、MIGHTYたちとヒップホップ・グループ「SHO-GUNG」を結成し、ライブを実現しようと奮闘する。

インディペンデント映画でスマッシュヒットしたという前情報、及び私が曲がりなりにもサラリーマンラッパーをしている、という諸前提から、強く興味を抱いていた本作。
観てみたけど、確かにこれは良い!
ジャパニーズヒップホップが置かれている微妙な空気感(最近これは結構良い方向に変わりつつあるが)を、「田舎」という舞台設定になぞらえて表現しつつ、その微妙な立ち位置、切なさ、哀しさを浮き彫りにして描き出している。
パンチ力が桁外れなシーンも多し。
・役所のシーンの気まずさ&おかしさ、そしてその裏返しとしての哀しさ
・ラストシーンの、ダサいんだけど、だからこその震えるほどのかっこ良さ
ここら辺はなかなか記憶にこびり付いて離れないレベルかも。
みひろとの関係性も、最後まで絶妙にドライなラインを守り抜いたのに拍手。
観終わって一か月経った今も、登場人物を愛しているし、次作で早く会いたくなっている。ということ、キャラクター造形としてもちゃんと勝っているのよね。
期待通りに面白かったです。


4位 「ドライブ・マイ・カー」

[あらすじ]
舞台俳優であり、演出家の家福悠介。彼は、脚本家の妻・音と満ち足りた日々を送っていた。しかし、妻はある秘密を残したまま突然この世からいなくなってしまう――。2年後、演劇祭で演出を任されることになった家福は、愛車のサーブで広島へと向かう。そこで出会ったのは、寡黙な専属ドライバーみさきだった。喪失感を抱えたまま生きる家福は、みさきと過ごすなか、それまで目を背けていたあることに気づかされていく…

カンヌやアカデミー賞で華々しい成績を収めた本作。こういう前評判が良い作品を観る際には、その権威に引っ張られないよう意識して観賞するようにしていて、本作もそういう目線で観た。
ただ、悲しいかな(嬉しいかな、か)そういう前評判が良い作品って、やっぱ面白いのよね。本作もご多分に漏れず、非常に良かったです。
まず、3時間という長さ、これを全く感じさせない作り。派手な展開がある映画ではないんだけど、最後の最後まで先が読めないというか、主題自体も掴みづらいこともあって、興味がずっと持続する。食い入るように画面を見てしまう3時間。
また、3時間という時間をかけた結果、少しずつ少しずつ、登場人物間の関係性の変化が非常に自然に、納得感をもって描き出されるのも、この「観ていて飽きない」という印象を構成する一要因なのかもしれない。
最後の最後に提示されるこの作品のテーマ、「人間なんて所詮分からないもの。その分からなさをそのまま包み込んで持っていくしかないんだ」ということ、最近色んなところで目にしたり考えたりするテーマでもあって、やっぱり胸に染みた。
複雑性を増す世界・社会の中にあり、それを構成する人間をどう捉まえるか、この理解モデルを皆、希求してるんだろうな。
っていうロジックで語れるところ以外でも、本作、なんか映画的に「はちゃめちゃドチャクソやべぇ」奇跡のようなシーンが複数収められているのが、本作の真に価値ある部分のような気もする。
結構どのシーンもそういう色はあるものの、一つだけ取り上げるのであれば、やはり岡田将生との車中での会話のシーン。なによこれ笑。。何が起こってるのか分からんくなるわ。。私、人の表情でゲシュタルト崩壊起こした経験初めてでした。。他にも奇跡のシーン多数。それぞれのシーンについて人と語りてぇ・・・。
村上春樹的な「いけすかなさ」は全編に漂ってたんだけど、それがこの映画の独特な「湿度感」(「温度感」というより「湿度感」なのよ)に一役買っているのは明らか。良いクセです。
以上。予想を上回る素晴らしい映画でした。


3位 「異端の鳥」

[あらすじ]
東欧のどこか。家を失った少年はひとり辺境の地を歩き始める。それは想像を絶する艱難辛苦の旅の始まりだった。過酷過ぎる状況をサバイブする少年の受難を鮮烈なタッチで描き、ヴェネチア映画祭コンペ入りを果たした。

とうとう観てしまった・・・。
凄まじい作品という評価は耳にしていて、「首から下を埋められた少年と烏」という衝撃のアートワークと併せ、強く興味を惹かれていた。
が。2時間49分。白黒映画。あらすじを読むに、ストーリー上のエンタメ要素を期待することも当然困難。
しかも、私が契約している配信プラットフォームでカバーされていないので、DVDをレンタルして観るしかない。
そのため隙間時間で観進めることが出来ず、ガチで作品と対峙するしかない。
そういう諸要素が影響し、1年以上も観ようか観まいかうじうじしていたが、2,3日のまとまった休みを確保できるタイミングが訪れたことから、満を持して鑑賞したのであった。
結論から言うと、非常に映画らしい映画だった。
ほとんどセリフがない映画だけど、演出が行き届いているせいか映像として雄弁。全編通して「意味」がしっかりと理解できるつくり。なので退屈しない。
また、これは事前にかなり身構えていたせいだとは思うが、思ったほどは精神的にキツい描写は少なかった印象。(少年が可哀そう過ぎるのは事前の予想通りだったが・・・)
あと意外だったのが、(不謹慎な表現かもしれないが)想像していたよりもシンプルに面白い映画だな、という印象を覚えたこと。
結局本作、少年が流浪していく中で、「差別」「分断」「強欲」「暴力」「色欲」「妄信」などなど、人間の負の本質を体現するような色々な人と出会う、という構成なので、「次はどんなパターンのやべぇ奴が出てくるんだろう」みたいな俗な楽しみ方も可能になってる。
(めちゃくちゃ語弊があると思うけど、私の中での「東欧」のイメージと終始合致した人間描写だった・・・。なんかこう、「じとっと黒い」んだよね・・・。)
それでいて、物語が展開するにつれて少年の成長(というか変化)についても分かりやすく描かれるので、ただのお化け屋敷的な楽しませ方を超えたところで、一本筋の通ったストーリーにもなっているという。
また、やはりこの白黒で描かれる映像の美しさは、ちょっと並でないところがありました。ゾッとするような美しさというか。私の「白黒映画ってなんか抵抗あるな」という印象を払拭してくれた気がします。
ということで、この映画の観賞に向けてハードルとなる要素、「長い」「白黒」「内容がエグい」についてはあまり気にしなくて良いかと。純粋に面白く、かつ良い映画なので、悩んでいる方は観たほうが良いと思います。


2位 「ワイルド・スピード MEGA MAX」

[あらすじ]
前科者のドミニクと共に追われる身となった元FBI捜査官ブライアンは、ブラジルに潜伏していた。そんな逃亡生活から脱して自由を手にするため、彼らは1億ドルを強奪しようと企む。標的は、リオの裏社会を牛耳るレイエス。かつての仲間たちが集まる中、2人を追ってDSS (外交保安部)の凄腕捜査官ホブスが現れる。

最高だった!!このシリーズ、どんどん面白くなってるなー!!
過去に出て来たキャラが全員集合状態なので、自ずとテンション上がります。アベンジャーズみたい。
内容としてはスパイアクション的なものにシフトチェンジしているが、この見せ方も上手い!
だいたいこういうのって、内容が複雑で、そもそものミッション内容が分かりにくくなること必至なんだけど、非常に丁寧に丁寧にミッションを物語に落とし込んでくれているので、「今何が行われているか」がとても分かりやすい。「おもてなし」の心。
あとは、「チーム感×カラッとした感じ×ド迫力アクション」という誰もが楽しい要素しかないので、そりゃもう傑作になりますよな、ということです。
特に最後のカーチェイスシーンは「そう来る!?」と感動。しかもただのパワー推しではなく、頭脳戦に持ち込んでるところがほんとね。憎いね。
各論で言うと、本作では「ドムは皆のリーダー的存在である」ということの説得力が大増しした印象。チームの精神的支柱として機能しているのがなんか納得出来るというか。いるだけで安心感がぱねぇ。
あとはやはりドウェイン・ジョンソンの登場ですね。純粋にここまでバキバキの身体はさすがに神々しい。眼福です。
以上。期待通り、いや期待以上の傑作。


1位 「遠い空の向こうに」

[あらすじ]
1957年10月ソ連から打ち上げられた人類初の人工衛星を見たアメリカ合衆国ウエスト・ヴァージニアの小さな炭坑の町の高校生4人が、ロケット作りに挑戦し、ロケット作りを通して、時にはぶつかり、また励まされながら成長していく。

「ロケットへの夢に賭けた若者たちの挑戦を描いたドラマ」っていうあらすじからは、「いや、ベタ〜〜・・・、これ下手したら何の琴線にも触れないパターンだな・・・」と思っていた。が。
むっちゃくちゃ良かった!!
むっちゃくちゃ良かった!!
(むっちゃくちゃ良過ぎて2回言いました)
決して泣かせることが映画の価値ではないけども、それにしても泣いた・・・。
(私、アカデミー賞受賞作品「コーダ」がビックリするくらい心の襞に触れず、「俺、情緒大丈夫かいな?」と不安に思ってましたが、本作で安心できました笑)
いや、正直、上のあらすじの通りなのよ。そこから想定できるようなストーリーと、ある意味そのまんまのド直球な感動。
だがしかし。
映画を構成する諸要素、脚本、演技、演出、音楽、美術、これら一つ一つにおいてめちゃくちゃ丁寧な仕事がなされ、その結果、総合芸術としての映画作品として素晴らしいレベルに到達しているという。そういう意味ではある意味映画の正解に近いのでは。。
ということで、「細かな加点ポイント」が無数に積み上がり全体として高評価となる作品につき、詳細な良いところを語り始めるときりがないので、いくつかに絞って。
まず、配役と演技。
配役が完璧過ぎる。なんつーんだろう、ものすごリアルな配役というか。全員の顔の座りが良いというか笑。やべーうまく言えない。
「本当にこの作品内の世界に当たり前にいそうな顔」なんだよな。
これは配役というか、演出や演技でそう思わせられているんだろうか。。
主人公も友達も先生も良いけど、特にお父さん役のクリス・クーパーが最高。まじで頑固そうで、ディスコミュニケートな雰囲気がプンプン。だからこそ、最後の展開での涙腺破壊効果が凄い。
あと言及しておきたいのが、活き活きと描かれる「DIY」的な楽しさ。
やっぱ、「人が工夫しながら何かを作っていくさま」ってめちゃくちゃワクワクする!
「アイアンマン」の前半もこの要素が強くて楽しいんだけど、本作は少年たちが没頭しつつ、スモールにPDCAを回しながらロケットを作っていくところが「具体的に」描かれて、そこはもう最高過ぎる。この「具体的」ってところがミソですね。本当に神は細部に宿りやがる・・・。
あと、音楽が素晴らしかった。クラシカルで優しい演奏。この映画の本質を表現したような音楽だったなー。
終盤で主人公が「あのアイテム」を持ってたところとか、最後のロケットの打ち上げを見る「あの人」のシーンを差し込むところとか、「いやまじで映画としてやるべきことをしっかりやって、その結果感動させるってー!!このーー!!優等生やろうがーー!!好きだ—!!」となりました。(どういう感想だ笑)
以上。映画好き全員にお勧めできる作品では。


4月のランキングは以上です。

【おまけ:次点】
・ライト・ハウス
・アナザー・ラウンド

5月もお楽しみに!

↓ 以下、過去のランキングです!



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