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「諦めたら試合終了」は漫画の世界で、現実は主観ではない

1/10に、人口減少対策を有識者らが議論する人口戦略会議のメンバーが岸田首相と面会し、8,000万人で人口を安定させることなどを盛り込んだ提言を手渡したというニュースがあったのたが、これがまた「何言ってんだ?」感が満載。

百歩譲って、これが人口6000万人で維持する(静止人口)というならまだ努力目標として許せる範囲だが、8000万人はどうあがいても無理。

下記のグラフの一番上が今回の提言で、下のふたつが社人研の推計です。社人研の推計も中位推計はいろいろ忖度ありの鉛筆なめなめなのでこれも当たらない、官僚の本気は低位推計で、私個人としてもここらあたりが妥当な予測だと思う。

社人研将来推計より荒川和久作成

低位推計では2100年の人口は5000万人で、8000万人なんか2070年あたりで切る。8000万人なんて、2100年どころかその30年前に通過してしまう話でしかない。

ところで、いいカッコしたいのかわからんが、こういう推計に「先の話は誰にもわからない」「推計は当たらない」とかしたり顔で言ってる有識者もいるんだが、それも勉強が足りないというか、無知というか、人口動態の推計はもっとも精度吏高い予測が可能な領域で、社人研の推計はいままでも大体合っている。

以下は1997年に推計した日本人人口の2020年までの約25年予測だが、ほぼ的中しているといっていい。

ちなみに、これが提言のベースとなっている国際なんとか大学の教授が作った試算表らしいのだが、何を根拠に計算しているか不明。多分なんの根拠もないのだろう。だって、これを出している教授自体が元官僚の天下りご褒美教授だからね。
元官僚だったり、元国会議員だったり、元知事だったり、もう現役から離れて隠居させられた元経営者だったりのご老人たちの趣味の領域ならご自由にどうぞの話。

2100年8000万人とするためには2040年までに出生率2.07が前提の計算。鉛筆なめなめも甚だしい。あと16年でそれができるなら今こうなってないでしょって話。
2.07にするためには、最低でも一人の母親が全員3.5人産まないと到達しない。それも無理でしょ。それでなくても金持ちし子ども産めなくなっているというのに。
社人研の推計は、1.2-1.4をベースにしている。頑張ってそんなもんだと思うし、1.6すら不可能だと思うよ。

そもそもヤフーニュースで本件記事にコメントが80何件しか書かれていないこと自体、世間の関心外というか、反論コメント書く気も失せるくらいの内容だったということだろう。私の個人の記事でさえ400件くらい書かれるのに…。


よく恥ずかし気もなくこんないい加減な机上の空論を「提言でございます」なんて首相に出せるものだ。Fラン大学の学生の方がもっとまともな論文書くぞ。

これが老人の鈍感力というものなのか。

そもそもこのおじいさん達、10年前は「目標9000万人」などという提言を出していた。10年たって、1000万人下げて8000万人とか言ってるだけで、何も考えてない。

基本的に、出生率は改善されないし、出生数は増えないし、人口減少は不可避。大体、出生数が多少あがったところで、すでに年間150万人以上死ぬ多死時代に突入しているのだから、焼け石に水。
年間70万人しか生まれずに150万人ずつ死んでいくのだから小学生でも計算できる話ね。そしてこれは日本に限らず、今世紀中に他の先進諸国も同様になる。少産多死時代になる。


こう言うと「人口減少は受け入れるしかないとか、最早手遅れといった諦観論を言うな」という大学老教授とかがいるんだが、諦観ではなく、正確かつ客観的現実認識を諦観とか悲観とか主観の問題にすり替える事の方が害悪

何度もいうように不可避な5000-6000万人なら、その人口でで運営できる体制をまず検討するのが先で、それをいつまでも先延ばしにしていつまでたっても「できもしない事をさもできるかのように言い続ける」事の方が無責任。単なる勝ち逃げ論でしかない。

但し、この提言の中で唯一賛同できるのは、移民人口比率10%が限界とし、無節操な移民政策に対してはNOと判断しているところ。まあ、10%も多いんだが、これは社人研の推計でも2070年には移民率10%と推計しているから。

移民を受け入れることのリスクについてはこちらの記事をどうぞ。

こうした人口減少が不可避なことを前提に、OECDがいろいろお節介を書いているらしいが、実際、OECDより前に政府はこういうことを議論しないといけない。

とはいえ、このOECDの提案も的外れだけど。
それについては別の機会に。

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