読者感想:ノルウェイの森
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飛行機が着地を完了すると禁煙のサインが消え、天井のスピーチから小さな音でBGMが流れはじめた。それはどこかのオーケストラが甘く演奏するビートルズの「ノルウェイの森」だった。
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言わずと知れた、村上春樹の永遠の名作
「ノルウェイの森」
今回で通して読んだのは3回目でした。
この本を始めて読んだのは、大学3年の冬でした。図書館にあったのを手に取りパラパラとめくり、主人公も同じ大学生ということもあり、すぐその世界観に入っていけたことを覚えています。
今回は、まずノルウェイの森の僕の好きなセリフや名言だと思う言葉を、いくつか紹介していこうと思います。 そこにはネタバレはないので、ご安心ください。
そのあとは僕なりの感想を書きます。
そちらには、多少ネタバレも含まれるので、ご注意下さい。
ノルウェイの森 名言
「結局のところーと僕は思うー文章という不完全な容器に盛ることができるのは不完全な記憶や不完全な想いでしかないのだ。」
「現代文学を信用しないというわけじゃないよ。ただ俺は時の洗礼を受けてないものを読んで貴重な時間を無駄にしたくはないんだ。人生は短い。」
「どれも、ガラス版を二、三枚あいだにはさんだみたいに奇妙によそよそしく非現実的にかんじられたが、間違いなく僕の身に実際に起こった出来事だった。」
「「私たちがまともな点は」とーさんは言った。「自分たちがまともじゃないってわかっていることよね」」
「自分同情するな。それは下劣な人間のすることだ」
「ときどき俺は自分が博物館の管理人になったような気がするよ。誰一人訪れるものもないがらんとした博物館でね、俺は俺自身のためにそこの管理をしているんだ。」
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ノルウェイの森 感想
今までこの本を2回読んできたのだが、思えば主人公に文章で書かれている以上に感情移入して、気持ちを考えることは少なかった。
つまり、文章中に、「僕は辛かった」とあると、辛かったんだな、と思い、それ以上は想像していなかったのだ。
というのは、主人公目線で書かれているため、彼の気持ちを中心に描かれているため、気持ちの描写は多いのだが、彼が、外部と距離を取る(そして周りにあまり興味がない)性格なのもあって、心の中の揺れがあまり深刻には書かれていないのだ。
だからこう読んでいて、何と無く彼は飄々と、深刻に考え込むこともなく(まあ、そうしているのには理由があるのだが)、スマートに過ごしているような印象があった。
今回はもう少し深読みしてみて、彼の立場になって考えてみた。すると、「これは本当に辛いだろな」と強く思った。
彼が別に落ち込んではいないかのように書かれているところも、よく読めば、心に空洞がある所をいくつも感じ取れた。
彼は、葛藤していたのだ。
自分の殻の中に入らないと潰れてしまいそうだし、かといって殻に入ると相手に向き合わず、逃げているように感じ、自分が嫌になってしまう。
他人に心を開きたいが、開くと自分が傷つくのが怖い。だから、それを「諦め」という言葉で自分を納得させていたのだが思うが、彼は自分のことをよく考えるので、自分の嘘に、薄々気がついていたのだろう。
ある意味、そんな薄い幕を張った彼に手を差し伸べてくれたのは、緑だったのだろう。
彼は、他の人ー直子や永沢さん、レイコさんなどには、たまにキツイ冗談を言うことはあっても、ふと出たような、考えもなしに、相手を傷つけるようなことは全く言っていない。
しかし、彼女に対しては、ちょっとひどいこと、いつも考えて物をいう彼からしたら、失言のように取れる言葉がいくつかある。彼女には言えたのだろうー。
培ってきた希望がポッキリと折られ、そして自分の元から色んな人が離れ、これまでは、少々のことでは大丈夫(そうに見えた)彼も、何もかもが分からなくなってしまう。
先の見えないトンネルの中で、ずっと彼は葛藤していた。上手く受け流せず、静かな春の中で、沈み込んでいってしまう。
それは、彼がキズキを失ってから初めて、本気で何かを守ろうとしたからかも知れない。
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この本は僕に、大切なことを色々と教えてくれました。とても悲しくてやるせない小説ですが、読むと元気が出ます。それは、多くの「死」が描かれていることで、逆に「生きている今」が、有り難く感じられるから、かも知れないですね。
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