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そのまんまねこの記事

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2022年9月の記事一覧

秋を踝に感じて/そのまんまねこ

秋を踝に感じて/そのまんまねこ

朝は、辛い。特に辛いのは、昨日の疲れが完全には消え去っていないことを自覚したとき、朝一番の想像力が「今日」を指向して働いた瞬間だ。顔を洗って、歯を磨いて、寝癖を直して、辛さを希釈して1日が始まる。

・・・

以下を書いているのは、休日前の深夜だ。余裕のあるうちに、朝のことを考えながら枕元を見回してみる。
音が大きいことを謳い文句にしていたデジタルの目覚まし時計。もし寝ている間にこいつの電池が切れ

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予備校で見えない花火の音を聞く/そのまんまねこ

予備校で見えない花火の音を聞く/そのまんまねこ

覚えている限りで最後に親を泣かせたのは、大学受験で最後の1校まで合格が出なかったときの、居間での家族会議だった。やや閉鎖的な田舎で慢心していた僕の、最低で最悪な挫折だった。僕は寮付きの予備校に通うために、地元を遠く離れ、東京都の立川市まで父の車で自転車とともに輸送された。

予備校と寮を往復する生活は、1年間で結果を出さなければいけないというプレッシャーこそあれ、次の3月には否応なく終わるという点

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『シッダールタ』/そのまんまねこ

『シッダールタ』/そのまんまねこ

先に公開されたnoteにて「待読」という一個の読書のスタイルが紹介されていたが、僕のそれは彼のものとは少し異なるようだ。すなわち、本を買うなり借りるなりしたとき、あるいはその前段におけるまだ小さな衝動が消えないうちに最後まで読み切ってしまう、というのが僕のスタイルだ。ただ、本に限らず長い付き合いになる存在との「出会い」に関しては記憶に残りづらい性質のようで、解散の報に涙したバンドも、枕元に置いてあ

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