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#エッセイ

十年後のモーニングルーティン/ビリー(田園都市線)

十年後のモーニングルーティン/ビリー(田園都市線)

朝は五時か六時に目を覚ます。まず感じるのは、夜中ずっと寝汗を吸った布団の居心地の良さだ。次に、手の届く範囲で充電されたスマートフォン。スヌーズボタンをタップしもう一度脱力する。木製の床は寝返りごとに軋み、部屋の隅にはバッタがいたりする。季節は初秋で、居室の風通しは素晴らしい。相変わらず、夏を惜しみつつも一陣の風だけで「まあ生きてみるか!」と楽観出来る俺だ。

俺の家は俺が作る。便利ではないが広いと

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青森のこと/ビリー(横須賀線)

青森のこと/ビリー(横須賀線)

青森が好きだった。

学生の頃、何となく取得した一年の休学期間にバイクで日本中を巡り、文字通りそこはドン詰まりであり、最終の地に違いなかった。正確には、最後の到着地は青森市よりまだ先、津軽半島の先端、竜飛岬のホテルだったが、在来線ならいざ知らずバイク持ちからすれば何にも縛られずぷらっと市内に出ることが出来たのだ。竜飛岬のホテルで週五日働き、残りの二日を何となく青森市のゲームセンターや図書館で過ごす

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『センス・オブ・ワンダー』/ビリー(南武線)

『センス・オブ・ワンダー』/ビリー(南武線)

僕はこの本を、土曜の夜の渋谷駅で読んだことを覚えています。色々書いていたけれど、「感覚を研ぎ澄ませ」の一事を説いているように感じました。目に見えるもの、耳に聞こえるものに意識を集中させてみれば、これまで素通りしていたものにハッとさせられる感覚。

自分はこの感覚に似た知識を、浪人時代、閉塞した予備校の教室で聞いたことを覚えていました。その日は何故か謎のおじいちゃんが講演に来ていて、既視感(デジャブ

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