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《17投稿目》風をいたみ
小学校の時、かるたの授業があった。
本当は”百人一首”とかいうらしいが、言ってしまえば古風なかるたじゃないか。
それか今のかるたが”現代風百人一首”になる。どちらでも良い。
正直百人一首は性に合った。
瞬発性や判断力ももちろん大事だが、小学生レベルのかるたごときじゃ「いかに札を記憶できるか」で勝敗が決まるところがあった。
努力は人一倍できた。だからこそ頑張った。
でも、凡人以下が努力で勝てるのは、たかだか思春期ぐらいまでだった。
風をいたみ岩うつ波のおのれのみ くだけてものを思ふころかな
現代語訳:風が激しくて、岩に打ち当たる波が(岩はびくともしないのに)自分だけ砕け散るように、(相手は平気なのに)私だけが心も砕けんばかりに物事を思い悩んでいるこの頃だなあ
21歳の今になって、自分の平々凡々さに呆れてしまう。
それだけではない。
自分がいかに慢心していたかを目の当たりにして、「私のライフはもうゼロよ!」状態である。
源重之の「風をいたみ」という歌は、今の私のためにあるのではなかろうか。
もっぱら私を落としてくれやがった御社が”岩”、お祈りの連発をくらう私が”波”であるのは自明だろう。
「そこそこいい大学にいくことができれば将来安泰」なんていう暗黙の希望をみんなが持っていたように、私だって持っていた。
持っていた。
しかしあんなのは努力じゃどうにもならない。
平凡以下の自分では、打つ手がない。
なのに、これまで馬鹿だ阿保だと見下していたアイツらは、次々に解放されていく。
ああ、なんて理不尽な世の中なんだ。
遺伝子や環境だけでなく、後天的なモノでも評価をしてくれよ。
ただ喋れるだけの脳無しを採って、どうなるんだよ。
ああ、こんな考え方をしているから、見透かされてしまうから、
平凡じゃ、ダメなんだろうか。
ーー
「もう就活やめちゃいたいな」と零した私に、友人のAは困ったように眉を下げる。
「アンタはただ、自分のことをわかってないだけ。」
はあ?と思う。これだけ自己分析をしていて、まだ自分が知らない自分がいるというのか。
そういえばこいつ、「卒業が危うい」と言って早々に就活を終わらせていたな…。
なおさら腹が立ってきた。
「アンタが輝ける場所は、”アンタが行きたいところ”とは限らなくない?」
「行きたい場所とは限らないーー、、、?」
ーー
あんなこと言われたって、私の取り柄は「努力してきたこと」しかない。
それはただ、平凡だっただけ。
「才能」に、コンプレックスがあっただけ。
でも、もしかしたら視界が狭かっただけかもしれない、と不安になったりもする。
私の視界にいつもあったのは、なんだっただろうか。
私は、何を見ていたんだっけ。
友達?テレビ?ゲーム画面?好きな男の子?
ーーーちがったな。
私が見ていたのは、いつだって参考書だけだった。
参考書しか、友と呼べるものはなかった。
それはもうすでに、早々に自分をカテゴライズしてしまっているだけかもしれない。
4年生春の一世一代のイベントに疲弊した私は、酒好きだけが取柄だと思っていた彼女の言葉を受け入れることにしてみた。
今思えばこんなこと、二度としないのではないだろうか。
いや、確実にしない。絶対しない。するわけない。
……と思う。
私は、今まで志望していた有名企業への就活を休息させ、いわゆる”ベンチャー企業”へ足を運んでみた。
何の気なしに訪れた、就活の休息。
くらいに思っていた。
いつだって話すことは同じで。
今までの生き方、努力したこと、将来の理想像、、、
こんなこと、どこへ行ったって話すことは変わらない。
私は平凡以下の凡人以下で、努力だけが取柄ですーーー
なんだこれ、今回ばかりはさすがにみじめになってきた。
誰が好き好んで自分のコンプレックスを言い続けられるのだろう。
ああもう、早く帰りたーーー
「コツコツ努力できるのは、才能だね」
才能。
才能、?
天才が集まるベンチャー企業は、努力すらも馬鹿にできるのか。
結局ひねくれたままの自分は、素直に受け取ることができない。
「確かにベンチャーって、天才が集まる傾向にある。その中で”普通っぽい”と言われる奴も、何だかんだ変なところはある。それは事実。
だからこそ、自分を”平凡”とカテゴライズしながらもずっと努力を怠らないっていうのは、本当に才能だと思う。僕はそう断言したい」
天才を支え、刺激になる。
君の才を、新しい視点で生かしてみたらどうかーーー。
なんてことない。
結局はお祈りされてしまったようだが、今までで1番心が晴れやかだった、ような気がする。
私にも、もしかしたら何か誇れるところが残っているのかもしれない。
それを示してくれただけでも大きな、大きな収穫で。
なんでもっと、そんなことに早く気づけなかったのだろうか。
思ひわびさても命はあるものを憂きに堪へぬは涙なりけり
結局こんな時でも、思い出せるのは過去の栄光ーーただのマウントでしかなかったけれどーーそれだけで、
それでも、それでもいいやと思える道を拓いてもらえたことが、私にとってどれだけ大きなことだったか。
彼女は天才だった。だから彼女なりの生き方で正解を出せたのだ。
私は平凡以下だ。だから頑張って百人一首を覚える少女だった。
彼女は百人一首は覚えられていない。
けれど、私は覚えている。
きっと、天才なんてそういうもんなんだ。
そう思うと、彼女とも美味しいお酒が飲めそうな気がする。
私は平凡だ。
でも、私だってまだ、
まだなにも捨ててはいない。
ーー
あとがき
就活がテーマの小説を書くことになりました。
メッチャ難しかったですが、小説を書くのは好きなのでまあ、、まあ楽しかったです。
これは、自分の経験談をちょーーーーーーっとだけ含めたフィクション小説なので、就活生の背中を押すことはできませんが。
就活生時代に視界が狭かったのもまた事実。
あなたの魅力は、あなたが思っているところだけではないですよ。
これだけは肝に銘じておいてほしいです。
うーん、なんだか煮え切らないまま終わってしまいましたが、時間の都合上ここで切り上げです。残念、、、
次回作はもっと超大作にしたいものです。
こんな感じで、フレックスに記事を書かせていただいているので、きっと今後も面白い記事が出てくるはずです。(そう願いたい)
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
それでは、重ね重ね皆さんの就活の成功を願って。
文責:根本
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