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【後編:考察】Netflixの成長戦略から学ぶ「市場価値の高め方」

はじめに

本記事は月曜日に投稿したものの後編となります。
前編ではNetflixの戦略についての記事や書籍を紹介し、後編ではそれらを総合したNetflixの成長戦略の考察と、そこから導かれる「市場価値の高め方」までを考えていきます。
まだ前編をお読みになられていない方は、先にこちらの記事をご覧ください。

Netflixのビジネスモデルと戦略

さて。

前回は記事や書籍を羅列だけになってしまったので、ここで一度戦略を俯瞰してみよう。


Netflixは創業者のリード・ヘイスティングスがレンタルDVDの返却が遅れ、多額の延滞金を支払った事をきっかけにオンラインでのDVDレンタル・販売業を開始したとされている。
このエピソードは「多少盛っている」と共同創業者のマーク・ランドルフが後に証言しているため、あまり信憑性はないのだが。

しかしながら重要なのは具体的なエピソードではなく、創業から現在までの流れだ。

現在のストリーミング事業を”点”で見れば、天才的に新しい発想のように見えるが、創業当初からの”線”で見るとこれが既存の業界を更新した結果にしかすぎないという事が良くわかる。現在のサブスクリプションモデルも、技術の進歩に合わせた自然なアップデートにすぎない

なんならオリジナルコンテンツの製作も、だ。観客が求めているものを機械的に判断できるデータを有しているのならば、それを活用した作品が最も売れる・視聴されると考えるのは十分に理解ができる。


「映画は映画館で見ることに価値がある」なんて1977年にアメリカで初めてレンタルビデオ店が開業した瞬間からまやかしである事も分かっている。技術の進歩の先に、より怠惰な環境で映画を楽しめる方法が開発される事もそりゃあるだろう。


要するに、現在のNetflixがやっていることは「古くてつまらない」なんて思わないが、「天才的に新しい世界が開けた」とも言うつもりはないという事だ。

自然であり、シンプルなビジネスモデル。一人の天才の発想力だけで勝負している訳ではないのだ。


だからこそ、競合が多い。


Netflixが競合を出し抜いた方法

これは大きく分けて2パターンあると考えている。「力任せの中央突破」「抜け道の探知」と置いて、片方ずつ見ていこう。


■力任せの中央突破

戦略と呼ぶにはお粗末過ぎるかもしれない。何故ならこれはリソースの上に胡座を書いた戦法だからだ。

Netflixはストリーミング事業における「先発組」と呼んでも差し支えない程度には早くから市場に参加した。ブルーオーシャンにいながら、前章で述べた通りのシンプルな企画を持っていれば恐らく資金調達はそれほど難しいものではない。それでシステムを構築し、いくつかの力強いコンテンツを仕入れる事ができれば多少のユーザー数は見込めるだろう。

この時点でNetflixは半分勝っていたのかもしれない。

アーリーアダプター達の視聴傾向を蓄積し、そのユーザーにハマりそうな作品をまた集める。サービスが循環し、ユーザーの輪が大きくなる。そうしている間にもしめしめと貯めたデータを元に製作したオリジナルコンテンツは、当然ハマるだろう。これの繰り返しで輪を大きくしていけば、数人の天才が集まって考えたハリウッド映画よりも、観客の心に響く大作を作る事ができる。

ここまでは何の逃げもない、完全な力技だと言える。

更にサービスが話題になればなるほど優秀な人材は集まり、ハイパフォーマー以外を「要らない」と切り捨てる事も可能になる。

もちろん、ここまで単純な話でないことは重々理解している。それを可能にする為には優秀なアナリストであったりクリエイター、人事などのポジションが必要になってくる為、こんなに短くまとめていいテーマではない。
しかしながらこれらはNetflixのアダプトのタイミングや、資金力があって初めて成立することだ。であるならば、ここまでの話を「力任せの中央突破」と言わずとして何と言おうか。


■抜け道の探知

上記のような技もトップに行くには必要だ。しかし自分たちよりも強大な会社が現れた時、これだけでは太刀打ちが出来なくなってしまうのも事実。

狡猾な抜け道を見つける事ができて初めて相手を出し抜く事ができる。Netflixの場合では作品種類であったり媒体の選択にそれが見える。

ストリーミングサービスは従来のテレビやマスメディアと違って制限が異常に少ない。自己責任で視聴しているという前提にある為、かなり人を選ぶコンテンツでも人気に火がついたりするのだ。世界中で配信していれば尚更。

そこで多くのサービスはニッチな作品を集め始めた。Netflixは大量に作り始めた。

前述のデータを活用して現在のユーザーに響く大作を撮る事も可能だったはずが、その資金を分散し、自社コンテンツの幅を広げることに注力したのだ。ニッチな作品こそ簡単に国境を超えるということは以前の記事でも書いた通りだ。つまりNetflixはこれらの作品でも恐らく採算が取れてしまう。

更に自社コンテンツが豊富にあると、今後増えるユーザーにとって他社サービスよりも魅力に感じるはずだ。既存の作品が別サービスにあったとして、それがNetflixにも登場する可能性はある訳だから。


他にも媒体をパソコンやスマホからテレビに戻す流れもNetflixが創り出した。後発のAmazonもFire TVなどで対応はしているが、Netflixボタンがリモコンに最初から埋め込まれていたらそんな商品は必要なくなる。


他社が目をつけない箇所を見たり、同じものを見ていてもより効果的な戦略を打てるNetflixが業界トップを我が物にしたのは当然のことなのかもしれない。


自分はNetflixになれるのか

今やFAANGは明らかに世界でも有数の影響力を持っている。
世界をリードする超トップ企業であり、どのサービスも人々の生活に当たり前のように溶け込んでいる。


この話を個人に落とし込む際、自分がそういった存在になりたいか、と考える必要がある。


漠然とした影響力や市場価値で1億人の中のトップ10に入りたいのならば、Netflixの戦略をそのまま取り込めばいい。

大勢に求められる人格やスキルセットを習得し、誰にも負けない資金力や人脈といったリソースを持ち、同時に他者が思いつかない戦術を考える狡猾さを身につければいいのだ。

漠然としているから少し絞ろう。例えば国家公務員になったり、銀行や大手IT企業に勤めてエリートコースに乗り、史上最年少の肩書きを持てる役職につけばいい。10年後にまだ必要とされているポジションであれば、市場価値はかなり高いだろう。


ただし、これは誰にでも思いつく人生設計であり、実現する為には努力はもちろん、運も体力も尋常ではなくかかってしまう。


私個人の話で言うと、その人生は絶対に選びたくはない。
今、分かりやすく強い場所に行ったところで、その業界や企業が常に力を持ち続ける訳では無いからだ。


Netflixだって20年後には影響力が間違いなく下がっているだろう。ハードウェア業界は10年周期でパワーバランスが変化するというのが通説だ。web上のサービスはこれに食らいつく施策は当然打つだろうが、その周期が2−3度周った後ではまず間違いなくIT業界も変化しているだろう。

であれば、Netflixの「今」だけを見ることはあまりにも間違っている。


前章でNetflixの勝ち方を2点並べたが、参考にすべきは明らかに後者の「抜け道の探知」であり、身につけるべきは狡猾さだ。
創業当初はただのレンタル屋だったNetflixが現在世界をリードしているなんて誰も夢にも思わなかっただろう。その頃からエンタメ業界の抜け道をヘイスティングスは見ていた、と言える。


視座を高くし、遠くを見据える事が出来てはじめてこの章の題である「Netflixになる」という事が完成される。

終身雇用もなくなり、自分の選択で100年を生きなければいけない以上、賢く狡猾に立ち回る必要がありそうだ。


文責:清田

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