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【イベントレポート】ベンチャー人事に聞く「裁量権とは」


「裁量権が欲しい」

ベンチャーを志望する多くの学生が採用イベントで口にしている言葉です。

しかし、実際の「裁量権」とはどういうものなのでしょう。
「裁量権を持つ」とはどういう意味で、会社が裁量権を与えるのか。

今回はそんな「裁量権とは」について、メガベンチャー出身の人事の方3名が語り合うイベント
【ベンチャー人事に聞く裁量権とは】
に参加してきました!

今回はフーモアの採用責任者である西尾さんもスピーカーとして登壇していたので、内定者も参加し、お話を聞いてきました。

■登壇者紹介

・脇坂雄大さん

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Talknote新卒採用担当。
大学時代に1年間休学し、「社会人において大卒資格はどれほど重要か」を見るために長期インターンに参加。その後大学を中退して紆余曲折経てTalknote入社。


・森太毅さん

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BrandingEngineer新卒採用担当。
大学時代はフリーのバーテンダー。新卒で人材メガベンチャー入社後、大手教育会社を経てBrandingEngineerへ。


・西尾輝さん

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Whomor新卒採用担当。
高校卒業後に草津温泉で働き、大学入学。
事業立ち上げなどをしながら新卒で人材メガベンチャー入社。Webマーケティング会社の人事部門立ち上げを経てWhomor入社。

■そもそも私達は裁量権をどんなものだと思っているか

裁量権、裁量権とみな口を揃えて求めるが、そもそも就活生にとっての裁量権とは、
仕事を動かせて自由に意思決定ができる!
既存の型にとらわれない!
裁量権があれば若手のうちから活躍できるし、1人が負うべき責任が大きくなる。
会社への貢献度が高くなる!
というような「自由度」と「責任範囲」、「影響力」というのがキーワードになっていそうです。

果たして、私達が思う「裁量権」とメガベンチャーやベンチャーを経験して活躍している社会人の考える「裁量権」は一致しているのでしょうか...?

※当イベントでは便宜上「大手」「ベンチャー」という単語を使用していますが、3人ともメガベンチャーとベンチャーで働いた経験があるため、単語の意味がやや混じった表現になっている箇所もあります。


■大手ほどハンコが遠くて、「何人に提案しなきゃならないんだ」と思った

司会:メガベンチャー出身、かつこれまでに多くの会社で働いてきたお三方。
多くのベンチャーでの経験から何を感じたのでしょうか。

脇坂雄大さん(以下、脇坂):ベンチャーでしか働いたことないから、ベンチャー=社会になってはしまうけど…(笑)
正直、ベンチャーっていうても年功序列なのかなって思ってた。
中途と新卒の関係については想像つかなかった中で、インターン時代に中途社員のメンターをやらせてもらえたことで、「へーベンチャーってすげえな」って思ったかも。

森太毅さん(以下、森):大手でも年功序列のようで実力者は評価されるから、ベンチャーだけでは無いかもしれないけど。
西尾輝さん(以下、西尾)だいたいは一定実力社会だからなあ。

脇坂:あと、営業とかやってて思うのは、大手とベンチャーで違うなって感じるのは、意思決定のスピードの速さ。
大手ほどハンコが遠くて、「何人に提案しなきゃならないんだ」と思ったり。

西尾:某日本最大手メーカーで働いてる友達が、稟議が通るまでまで11か月かかると。
世の中は変わり続けているから、最初の提案が意味を成さなくなるっていうのは聞いたかな。

:大手教育会社にいた時は、稟議が通るまで半年かかってたせいで、受講者もこっちも結果として損するみたいになってたよ。

脇坂:今回のイベントとかも、イベントやろうってなってから、すぐに森がOK出してこの場所(BrandingEngineerオフィス)開催になったけど、これがベンチャーだよね。
大手だと「何のイベント?どんな目的?主催の会社安全?」って聞かれて調べて、紙に書いて出してはいハンコ、さあ開催ってなるから、大きく違うなあとは思う。

:ハンコ押していく人の数が全然違うよね
前職は上場してたところのグループ会社だったから、グループで最終決裁出さなきゃいけなくで、30ぐらいハンコ貰ってたわ。

西尾:ただ、ベンチャーは意思決定は速いけど、悪い言い方すると学生団体ノリが消えない部分もやっぱりあるかなと。「これで社会人って大丈夫かよ」みたいな。

脇坂:例えば今ここで喋っている人は、学生団体ノリの中で成果を出せた人ってだけで。でも成果を残さずに消えて行ってしまった人はその何倍もいる。
言っちゃえば、学生団体ノリってゆるいし、楽なんだけど、だからこそ自分のおしりを叩けない人はダメだよね。
大手でもベンチャーでも成長できる環境はどちらもそれぞれあるけど、大手とベンチャーの違いって、「壊れない橋だからこそ全力で走れる人(大手)」と「壊れそうな橋だからこそ全力で走れる人(ベンチャー)」がいて、どっちが自分に合ってるかでしかない。だから自分の特性を見誤ってしまうとすごく後悔することになる。

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■対人での評価を気にしすぎる人ほど2年目で消えていく

司会:現在ベンチャー人事として活躍されているお三方。
社会人になってどのようなことを感じたのでしょうか。

西尾:社会人1年目の夏までってみんな頑張るけど、冬や春を越えると頑張る人がぐんと減って、「あれ?こんなに頑張っている人少なかったっけ?」って状態になるんだよね。

脇坂:学生時代周りから優秀って言われていた人がベンチャーに行ったとき、社内では評価が振るわなくて「俺は本当ならもっとできるのに」ってなって、ここの環境が悪いからってなって頑張らなくなっちゃうんだろうね。

:優秀だった人がベンチャーみたいなあまり知られていない会社で、不満持ちながら働いてるのを見ると、周りがそれを見て「よくわからない会社でしかも仕事辛いのかよ」って蔑んでくるから「あれ、俺ここにいないほうが良いんじゃないか?」って迷ったり。

脇坂:やっぱり自分の軸って大事だよね。

:対人での評価を気にしすぎる人ほど2年目で消えていく。

脇坂だんだん負けて悔しくなくなってくるんだろうね。
「まあ別に自分こうだし」って言い訳しちゃったり。

西尾:新卒で成果が出ないことがある中で、大手は名前だけでも世間体とかどうにでもなるけど、ベンチャーは成果を出さなきゃ話にならない。その成果を出す過程で耐えられず折れちゃう人は結構いるのかな。

脇坂:何者でもない時間ね。

西尾:そこで折れずに初速を保ち続けられるのってメガベンチャーだと2割くらいに感じるなあ。

森・脇坂:2割もいないんじゃない(笑)

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■裁量権は企業と学生の生んだ「幻影」

司会:やりたいことを追求していった結果ベンチャー企業で働いているお三方。
「裁量権がありそう」と言われるベンチャーで働いていて、実際に思うこととは何ですか?

西尾:大学4年生の欲しいものランキング1位「裁量権」ってぐらいみんな言うよね。

脇坂:実際(採用の場面で)裁量権って使う?

西尾・森:使わない。

:(企業が)就職活動時期に裁量権って言うことの裏返しは「人手が足りない」だと思う。
人がいないからやれることがいっぱいだよ、みたいな。

脇坂:「裁量権」「アットホーム」はイケてない人事のキラーワードよ。

:個人的には「個性のある会社」

脇坂・西尾:あ~(笑)

脇坂:裁量権っていうと「どれくらいの仕事を任せてもらえるか」をイメージしてるのかな?
裁量権がイケてないと思う理由なんだけど、仕事って任せる/任されるものじゃなくて、誰かがつくってそれをやるものだと思うのね。
裁量に「任せる/任される」という認識ができて上下関係になってるの、そういう問題じゃないよなって。
裁量って、仕事を任されてもらえるものじゃなくて、自分で創っていけばいいと思う。
そういう文化があれば「裁量」なんて言葉に行きつかないだろうな。

西尾:僕らみたいな規模のベンチャーの新卒採用ってわりと学生とフラットなのに、「裁量権」ってなった瞬間に上下関係が発生する。それって「入ったらすぐ上下関係発生します」って宣言と同義だから使わないってのはあるかもね。

:裁量権欲しいと思ったことないからなあ。
ものすごく言えば、会社というハコにいるからできることがあるという考え方もあって。
就活市場にいるみんなは無限に裁量権がある中で、「じゃあ何がやりたいのか」で企業を選んでいく。会社に入って仕事を任されることを「裁量権」とは言わないと思う。
むしろ会社に入ることで君たちの無限の裁量権は会社に奪われてしまうわけだ。
だから「裁量権あげるよ」って採用の場面で言う企業は、「裁量権奪うよ」って言ったほうがいい。

西尾:そもそも、成果って「自分の気になった数」ほど生まれると思ってて。
気になった分色々やってみてるだけで、それが結果として裁量権があるように見えているだけ。一般的に言われている裁量権って「すぐ1人で営業いかせてあげます!」「早いうちにこんなポジションあげます」じゃないですか。これって裁量権じゃなくてただの仕事/職種だと思うんですよ。
業務のことを「裁量権」って言う会社と、それが「裁量権なのか!」思っている学生が生み出した幻想だよね。

脇坂:将来どんな生き方をしたくて、そのためにどんな働き方をしたいか・どんな権限が欲しいかってなった時、裁量権に頼るんじゃなくて、(求める働き方の)解像度を上げていくことはできるんじゃないのかな。
裁量権という言葉にしても何をどう自由にする権利だと扱っているのかをはっきりさせないとね。

:仮に裁量権という言葉が本物だったとしても、1人1人にとって違うしね。
それをひとまとめにして「ポジションをあげる」「好きな仕事を任せる」「早いうちからキャリアを積ませる」とかに代用してるだけなんじゃないかと。

西尾:会社での肩書なんて会社内のものでしかないから、市場的に見ると何も変わってないと思ったほうがいい。あくまでも引き留める、ブランディングのための名前なだけ。

脇坂:いったんの目標としては大事だと思うけど、その状態で終わる就活は未来が見えてないからイケてない。
役職という手段を通して何を経験しどんなスキルを得たいか、ゴールを決めないとブレる。
目標を細分化して落とし込んでいくのは大事。

西尾:「成長」という言葉ひとつとっても会社によって違うから、しっかり掘り下げないと思ってたことと違うってなる。

:成長って「できないことをできるようになる」っていう大まかな意味合いはあるから、「じゃあどんな?」って決めていかないと。うちじゃなくても、なんならどこでも成長できる。
ういうものが欲しいという観点がある人が、得たものを次の場面へと持っていくことができるから結果的に市場価値が上がる。アウトプットができたりそれで成果を出したことは市場価値が上がった瞬間。

脇坂:就活生のみんなは見分けるの大変だと思う。とにかく人を集めようと思ったら共通の認識を持てるほうが簡単だから。

西尾:採用で甘い言葉を言うのって簡単で、だからこそそれに乗っかってしまうと「はい残念でした」ってなってしまう。

:ゆくゆくは大衆が疑っていくとは思うけどね。

西尾:僕たちが学生の時もやっぱり色々迷ったけど、今大人になると「大人ってこんなに迷わせるのか」と思って。そういうのは正していきたいですね。

:正すって言うか、これが正解ですよってなっている状態から、まっさらに戻したいよね。

脇坂:もうちょっと言葉を扱いやすくする仕組みを作りたいよね。

西尾:こういう機会もそうだけど、人事から発信できることを増やしていって少しずつ変えられると良いね。

裁量権という言葉から始まり、今の就職活動・採用活動について新しい切り口からのお話をいただきました。
20卒として、就活が終わった身だからこそなるほどなと思える部分も多くありました。

イベント後にもお話をさせていただいて、それぞれの会社の人材採用だったり採用にかける想いを聞くと、やはり三者三様で。
それぞれの違いを認めつつお互い楽しそうなのが「これが”理想となるべき採用”なんじゃないかな」と感じました。

就活が終わってもこういったイベントに参加する機会があるのはありがたいことです。
いずれまた、次は違ったテーマでのお話が聞けることを心待ちにしています。

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最後に、主催の黒澤さん、登壇者の脇坂さん、森さん、西尾さんに多大なる感謝を込めて、
【ベンチャー人事に聞く裁量権とは】レポを締めさせていただきます。


文責:根本

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