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私があなたを採った理由〜根本日菜子編〜

なぜ彼らは伝説の一期生に選ばれたのか 第3話

それは怪異のような奇石で

僕が採用担当者として、自分の目利きを自画自賛するとすればそれは「根本日菜子という人間を何としても採用しようとしたこと」だろう。

Wantedlyのプロフィールには過去の青やピンクの髪の毛であった写真をポートフォリオとして掲載。面談に現れたときには髪の毛こそ黒だったものの、耳には両耳合わせて二桁近いピアス

誰がどう見ても”就活生”には見えないだろう。

ただ、僕は彼女の「就活だからって就活っぽくする必要もないよね」という自然体の強さが吉と出るか、凶と出るか会ってみたかった。

だが、面談時にやりたいことを聞いても「特にない」と言うし、やりたくないことを聞いても「思いつかない」と言う。
就職活動は「最初に内定もらったところで辞めたい」と言うし、「なんでもそれなりに頑張るはずです」とまるで就活を頑張っていない学生からは、信憑性の無い発言も目立った。
これは参ったなと思い、就活相談モードに入って過去の経歴を掘り下げていくと、驚くことに彼女はこれまでの人生で本当に「流されるままに、その場で結果を残してきていた」。
それは決して生ぬるい人生では無いが、「そんなもん」と割り切り、その中で周りから求められたことは着実にこなし、だからこそ、彼女はより求められ、またそこで結果を出した。
大学時代も人の出入りの激しいスナックで、客にも店の人にも好かれていただろうことが容易に想像できる軽妙な語り口は、確かに多くの人が彼女を頼りにする説得力があった。

面白い。

これまで、新卒・中途と多くの人と面談してきたが、恐らく過去例にない体験だった。
自己分析を満足にするわけでもなく、就職活動を熱心にするわけでもないため、いわゆる就活生らしい分かりやすい話のとっかかりで無かったため、あやうくその魅力を漏らすところであったが、話せば話すほど彼女が稀有な存在であることが理解できた。

私は、多分どこに行っても、何をすることになっても、それが仕事だから当たり前のように頑張ると思う。社会に出てもいないのに、何に向いているかも何が好きかもわからない。これがやりたいなともし思った時に、それを選べるような自由な人にはなっていたいとは思います」

ともすれば、学生の何も考えていないことの言い訳のようにも聞こえるが、彼女のそれが心の底から言っていることが伝わり、この発言を心の底から言える学生が果たしてどれほどいるだろうか、と頭を駆け巡った。

エンタメ領域の造詣も深く、長くスナックで培われた当意即妙な受けごたえも出来る。単位はギリギリだと言うが、学部で厳しいと有名なゼミで学んだ教養の広さもある。
それでいて「なんでも頑張れる」。
ベンチャーの組織は日々変化する。今の組織や事業が半年後も全てそのまま同じということなどはほとんどあり得ない。(実際にこれまでの3社全てで半年以内に組織が変化していた)
職種や役割が確約出来ない中で、なんでも頑張れて任せることが出来る存在の心強さは、恐らく採用に携わる全ての人が理解出来るだろう。
そのうえ一期生は何度も書いているように「伝説の世代」を創る代だ。何をするのかも、何が出来るのかも何も見えない中で、とにかくガムシャラにやってもらわないといけない。そこでも「そんなもん」と割り切って粛々と役割を全うできる人材が魅力でないわけがない。

会社の今後のことを考えても、一期生という重要な採用ピースの一人としても、何としても欲しかった一方で、あまりにも就活らしいことをしてきていないため、役員面談や社長面談で通過するかは未知数であった。
もちろん、申し送りとしてその魅力は書き連ねていたが、「底の見えなさ」があるのも事実であった。
あまりにこっちが不安すぎて面談練習しようと呼んで来てもらっても「受かりたいですけど、まあ落ちたら就活またやらなきゃですね」とあっけらかんとしている。
結果として、役員の評価は「めちゃくちゃ興味深い」だったし、社長である芝辻は「あのタイプはもう少しいても良いかもですね(全然いないタイプだと言っているのだが)」というフィードバックで無事に内定した。

最終選考にあがった子の中で、一番心配していたため、内定が出たときは僕も随分安堵したことを覚えている。

それは桃李のような軌跡で

後学のためにも、本人が納得したキャリアを積むためにも就職活動を続けることを勧めていたのだが「就職活動を続けたくないし、これ以上いいなと思うところ探したらめちゃくちゃ時間かかりそう」という理由で早々に内定承諾をした。

5月の末からは内定者インターンとして、会社の業務や採用活動の補佐を行い、同時に膨大な課題をほとんど漏らすことなくこなしている。極端に「全然出来ない」ものが少ない。
面談での話通り、本当になんでもそつなくこなし、同期からも社員からも頼りにされている。次第にリーダーのような動きをするようになってきたため、その後押しをすると「この代のリーダーとしての自覚と責任」を自分で考え、まとめるようになった。

21新卒の採用活動においては、もはや彼女無しの採用イベントが考えられないくらい非常に上手いアシストをしてくれる。加えて、彼女はたぐい稀な速筆かつ文才家である。このnoteの運用も彼女が柱としてここまで成長させてきた。
部署としての仕事は唯一全部署の業務のカバーに入っているし、その一つひとつでやるべきことをやってきた。
まだインターンを始めてから5か月ほどだが、彼女がこのような動きを「そんなもん」だと思ってこれまでもやってきたのだとしたら、彼女が人から頼りにされ、好かれてきたのは至極当然のことだろう。

インターンを始めてから何回も面談をしているが、配属は「会社が必要なところに入れてくれたらどこでもいい」と言うし、やりたいことは「なんでもやりたいし、もし出来なくでもそれはそれで大丈夫」と言う。
一方、彼女は淡泊なわけでもない。思うようなクオリティに届かない時や、自信がなくなると涙を流して「もっと出来るようになりたい」と言う。
ただ、どんな存在になりたいかと聞くと「どんな仕事の領域でもカバーできて、上から引っ張るというよりも全体を底上げできるような、そんな人になりたい」と強く語る。

だからこそ、彼女が多くの部署から求められ、結果として新規事業の部署に配属されたのは必然なのだろう。

これまでの内定者研修や21新卒の採用活動でも何も無いところから形にすることが出来たのは、彼女の力抜きにはあり得なかった。

恐らく、彼女の今考える「なりたい姿」にはそう遠くない未来、なることが出来るだろう。そうなったとき、彼女が次に目指すものが何なのか、楽しみでならない。

それは夏雪のような奇跡で

「伝説の世代」がそれぞれどう成長し、どんなキャリアを、どんな人生を歩むのか本当に楽しみだが、その中でも予想できないというファクターも含めて、もっとも面白そうなのは彼女だろう。

1000分の1の奇跡で見つけた「真のオールラウンダー」それが根本日菜子だ。

だが、彼女の本当の魅力はその器用さよりも「あらゆる仕事からでも意味を見出せる」ところにあると、僕は思う。

大酒飲みで声が大きく、カラフルな髪の毛にゴツいピアス。その姿からは想像も出来ない緻密な視点にコツコツした堅実な作業能力。

彼女は自分の経歴が、他の内定者よりも華やかでないことに焦りを感じ、コンプレックスを持っている。だが、甲子園に出場した選手以外にも、ドラフト1位で指名される選手がいるように、これまでの実績だけでない、確かな地力が彼女にはある。

僕は今、様々な他社交流の場所になるべく彼女を連れて行くようにしている。
それは、自分がフーモアの一期生なんだという強い自覚があるから。
自分の言葉や見られ方が、同期や、フーモアの見られ方につながっているんだと理解しているから。
何より、いろんな世界を見ることで、自分や会社のステージを深く理解し、その先を見据えて欲しいから。

「伝説の世代」をつくる同士であり、頼もしい仲間として、一緒に頭を悩ませることも多い。仲間思いで、根が真面目で、自信がない。
彼女が悩みながら、焦りながら、ひたむきにつくっている道は、間違いなく「伝説の世代」を創る瞬間へと伸びている。その物語が、いつか彼女にも見えるといいなと思う。


先日、僕は彼女に叱られた。
「西尾さんに自信を持ってもらわないと、採用された自分たちはどう思ったらいいんだ」と。

彼女を採用した自分を、僕は褒めたい。自画自賛だと笑われても。
こんな才能を見つけた自分の運に感謝したい。
彼女の新たな側面を発見し、その能力が、姿勢が、誰かの感心を誘うたび、僕はひっそりと旨い酒をすする。

いつか、「伝説の世代」の物語が完結した時、僕はこの世代と飲み、語りたいと思う。君たちの物語を。その、軌跡を。
その時に、たくさん謝ってたくさん感謝するだろう。
そして、その中心には大輪の花のような存在感で、大きな声で笑う彼女がいるのだ。

文責:採用責任者 西尾 輝

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