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2つの偶然に身をゆだねる

子育てって思うようにいかないものですよね。幼稚園から帰ってくる娘が、最近多発する竜巻に見えます。さて、今日は何をしでかすのやら… 小さな大自然を相手に戦々恐々とする毎日です。子育てとは、「偶然」に対処すること。かねてより気になっていた「偶然」について考えてみました。

先日、妻がつぶやきました。

第1次産業の家庭は、子育て上手ではないか…

自然相手の仕事

農業・漁業・林業と言えば、自然が相手。なかなか計画通りに事が運びません。台風被害で、その年の収穫がパーになる。海水温の上昇で、これまで通りの漁ができなくなる。長雨やドカ雪で、予定本数の間伐ができない。不確実なのは収穫・収獲だけではありません。不慮の事故だって多発します。

思うようにならないのは、子育てだって同じ。スープの入ったお椀をひっくり返す。ジャムだらけの手を座布団になすりつける。どこかに帽子やぬいぐるみを落としてくる。急に熱を出す。小さな「大自然」を相手に、親は毎日、右往左往します。

「あきらめ上手」は「子育て上手」。普段から、思うようにならない自然を相手に仕事をしていれば、思うようにならない子供にもあきらめがつくはず。親の都合を無理やり押し通すような子育てにはならないと思う…

そう聴いて、「あきらめ上手枠」を多少広げてみたくなりました。

偶然に左右される職業の家庭は、子育て上手ではないか…

偶然相手の仕事

自営業・商売
勝負の世界(スポーツ選手・囲碁将棋の棋士など)
人気商売(政治家・芸能人など)
芸術家(作家・画家・音楽家・映画監督など)
自由業・フリーランス

こうした職業は、ほんのちょっとしたことで、その日の仕事の明暗がわかれます。ですから、縁起をかつぐ人が多いと聞きます。スパイクシューズは必ず左足からはくとか、ラインは必ず右足でまたぐとか…

やっぱり、「自然・偶然相手の仕事」→「あきらめ上手」→「子育て上手」という仮説には、短絡があるようです。自然や偶然に左右される仕事だからこそ、生活面はなるべく計画的に、っていう人もいるでしょうし…

それとは対極の、比較的思うようになる職業(サラリーマン・公務員など)だって、職場に「天然ボケ」の同僚がいたり、上司との相性が最悪だったりすれば、もうそれだけで何が起きるかわからない…

人はみな、多かれ少なかれ、自然や偶然に左右されるものです。そして、思い通りにならない現実の対処方法は、人それぞれ。そこに個性が表れます。

もう一つの「偶然」

ここまでの「偶然」は、事件とか事故のような、個人の力でコントロールしにくい「偶発的な出来事」です。その反意語は、「意図」とか「計画」あたりでしょうか?

でも、もっとドラマのある「偶然」もあります。「思うようにならないこと」ではなく、「思いがけないこと」です。この手の偶然が頻発する赤瀬川原平さんは、偶然日記をつけていました。

赤瀬川さんの親しい方がガンで亡くなります。お葬式の後で、その奥さんからはがきが届きました。「うちの順ちゃんたちはお父さんが死んで悲しがっていたけど、今は元気になって、うちの中に虫が入ってくると あ、お父さんが会いに来たんだと言って歓迎しています。」そのはがきを、赤瀬川さんはお嬢さんに読んであげます。「うちの中に虫が入ってくると…」と読んで、その「虫」と言ったときに、小さなテントウ虫が、「虫」という字の上にポツーンと落ちてきた…

こうした「偶然」は、「意味ありげな符合」です。ユング心理学では「synchronicity(共時性)」と呼ばれます。

この小さなお話の中に、どれだけの符合があるでしょうか?「うちの中に入ってきた虫」と「亡くなったお父さん」の符合から始まって、「虫」と読んだときに、その「虫」という文字の上に、「虫」が落ちてきた… 「虫の知らせ」なんて表現もあるし…

「因果(原因と結果)」が時間軸で生じるのに対して、偶然は空間的にばらまかれるそうです。それは、サイコロをふったら同じ目が3連続するようなものです。何かの意味がありそうだけれども、因果関係ではない。あるときに集中して起きるけれども、しばらくしたら起きなくなる。

思いがけない子

どんな人にも偶然は生じるものです。でも、ドラマチックな偶然の生じやすい人がいれば、生じにくい人もいる。偶然を意識する生き方があれば、意識しない生き方もある。

私といえば、偶然から進学し、偶然から就職し、偶然から結婚し… 偶然が頼みの綱の人生です。裏返して言えば、計画通りにいかない人生。はなから計画することをあきらめて、ドラマを予感させる偶然を期待するしまつ…

そんな私がこの世に生を受けたことすら、そもそも偶然ではなかったのか?自分が親になって知るのは、いくつかの偶然が重なって子供を授かるということ。この子じゃなかった可能性だって十分ある…

子供は親を選べない、って言うけれど、親だって子供を選べない。わが子と、親子という関係の中で出会うことの偶然。思うようにならなくてため息ばかりの子育てが、ほんのチョットだけ違って見えます。

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