担当者の言葉の裏を読み取ろう【#13】

「リゾートバイト過去日記」は僕がリゾートバイトをしていた3年間を思い出しながら書いています。

【これまでのリゾートバイト過去日記は】僕は地元でアルバイトをすることも考えたが、結局リゾートバイトで貯金をすることを決め、兵庫の城崎(きのさき)温泉にある旅館で裏方業務をすることを正式に希望した。

旅館の調理師はくそウザい奴がいがち

僕が城崎の旅館の仕事を正式に希望すると、2~3日後に担当者から電話がかかってきた。仕事内容や周辺環境、必要な物などを僕に伝えてくれるという。

まずは城崎温泉について。城崎は兵庫県の北部にあり、日本海と近く、また東側にあるので京都府との県境とも近かった。関西有数の温泉地で、浴衣に下駄をはいて町を歩く風情があるという。

秋~冬は近くで取れるカニが有名で観光客が多いため働く側としては忙しく、春~夏は近年外国人の観光客が多いという。

僕が城崎温泉について知っていることといえば、高校入学直後に国語で習った志賀直哉という作家の「城崎にて」という話が城崎温泉を舞台にした話だったというぐらいだ。志賀直哉がどういう作家かも知らないし、「城崎にて」がどういった話だったかも覚えていない。


僕が希望している旅館は城崎温泉内でもかなりの高級旅館で、老舗の一つらしかった。僕が希望している中番(仲番=なかばん)という職種は調理や調理補助ではないのだが、料理を厨房から仲居まで運んだりするので調理師や仲居との連携が重要だという。

高級旅館ということもあり、調理師はプライドが高く、厳しい人も多いという。「挨拶だけはちゃんとしてください」と担当者に念を押された。

僕は高校時代に県内ではそれなりに強豪の陸上部だったのだが、そこでは恩師である顧問の先生に陸上をやる前に人として当たり前のこと、つまり誰にでも挨拶をすること(目上の人に挨拶をすることでは決してない)や周りの人に感謝することなどを徹底的に教わった。なので、職場で挨拶をするのは当然なので、それについての心配はなかった。

僕が気になったのは担当者が言う「調理師は厳しい人が多い」という言葉だった。さすがに「殴られる」とか「暴言を吐かれる」などの直接的な言い方ではなかったが、おそらくこれは「理不尽に怒られたり怒鳴られることもある」という意味だと受け取った。

僕はそれまでにも飲食系のアルバイトをしたことが何度かあったのだが、だいたいどこの職場でも10人いたら1~2人はまともに話が通じず、下の者に偉そうにしてペコペコされたいだけの奴がいた。この旅館にもそういう面倒な奴がどうしようと危惧した。


中番という業務の説明もしてもらった。中番というのは旅館の和食の厨房や料亭などに特有の職種らしく、お皿を用意したり、冷蔵庫から料理を出して仲居まで持って行く、ゴリゴリの裏方業務らしかった。

僕は事前に裏方業務を希望していることを派遣会社に伝えたし、調理補助やホテルの客室清掃など体力が必要な裏方業務のアルバイト経験もそれなりにあったので、担当者はそこに関しては心配していないようだった。

中番の業務については言葉だけで説明されてもいまいちわからなかったが、まあ行けばなんとかなるだろうと思った。

11月から3月まではカニ料理目当てのお客さんが増え、残業が増えるのでかなり稼げるらしかった。過去の実績では中番では25~30万円稼げるという。オーストラリアに留学するために3年で500万円貯金したい僕にとってはかなり魅力的だった。


それから、寮の設備や周辺環境についても説明してもらった。寮は職場のすぐ近くで、建物は古いが部屋はリフォームされていて快適に過ごせるという。部屋にはトイレとミニキッチンがあり、お風呂は共同だった。僕は一人暮らしの経験もあるし、シェアハウスに住んでいた経験もあるので心配することは何もなかった。

寮の徒歩圏内には小さなスーパーとコンビニ(ファミリーマート)、郵便局、飲食店などがあり、リゾートバイトの勤務地としては十分便利だという。最寄りの城崎温泉駅の2駅隣の豊岡駅まで行けばちょっとしたショッピングセンターがあり、そこに100均などもあるという。

典型的な田舎の中心的な駅といった感じだが、兵庫とはいっても北部なので神戸や大阪まで日帰りで遊びに行けるような距離ではなかった。僕は貯金するために城崎に行くので、周りにたいして遊ぶ場所がない環境はちょうどよかった。


城崎の仕事についての話はかなり長く、1~2時間はあったように思う。僕は電話面接のときと同じく話を聞きながら適切なタイミングで「はい」、「わかりました」と返事をし、質問があれば聞けばよかった。

担当者からのすべての説明が終わり、「どう?ここでやっていけそう」と聞かれたので、僕は「はい、希望します」と答えた。担当者は「Atsushiくんは電話面接での聞く態度もよかったし、僕がこれまで話をしてきても態度がいいので、僕も先方さんに自信を持って紹介します」と言ってもらえた。僕としてはただ話を聞いていただけなのだが。電話面接の態度も良かったといってもらえたが、これはおそらく僕の電話面接を担当した人から僕の評判がこの担当者にも共有されていたのだろう。

この時点ではまだ僕が城崎温泉のこの旅館で働けることは決まっていなくて、担当者が先方に僕のことを伝えて、先方からの返事を待つこととなった。

(続く)

Atsushi

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