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ひらがなエッセイ    #7  【き】

    映画の話題になった場合、大袈裟に相槌を打ち皆の映画評論の聞き役に徹する、という作業を繰り返しているだけなので、「面白い映画ある?」なんて聞かれる事はあまり無い。見るからに映画に詳しそうではない、と言った偏見の賜物なのかも知れないが、誰かが話し、誰かが聞き、私が大袈裟なリアクションを取っている、という状況が往々にしてある。携帯電話に搭載されているアプリケーションのメモ帳に作成した「みんなのお勧め映画」は最早「社交辞令のコレクションBOX」と名前を変更しようかとさえ思うぐらいに見返した事が無い。流石にこれは不義理な行為だ、改めて行こう、とは思うものの、いざ映画を観ようと思い立った時にはメモ帳の事などさっぱり忘れ、その時観たい映画を自分で選び鑑賞しているのが、嘘偽り無く私である。でもたまには観るんだよ、だからまた聞かせて下さい。

    なんて言ってるが、本当は私も私なりに今まで少なからず観て来た映画をお勧めしたかったのかも知れない、なんて思い立ったが吉日、ちょうどエッセイのタイミングも良いので、私の好きな映画を紹介してみる事にした。

    と言う訳で、今日のエッセイは1998年のフランス映画【奇人達の晩餐会】を紹介する。あらすじをざっくり書くと、金持ち野郎共が各々馬鹿を一人招待して晩餐会を開き、誰が連れてきた馬鹿が一番馬鹿なのか競い合う、というブラックコメディ。普段サイコスリラーやサスペンスしか観ない私が何故コメディ映画を紹介するのか。それは映画として90分と言う時間の短さと、愛すべき馬鹿が活躍して、綺麗な落ちがある、という人情喜劇に、大好きな落語の与太郎噺を重ねて観てしまったから、なのかも知れない。

    落語では馬鹿や愚かな者を与太郎と呼ぶ。与太郎噺、なんて言うのは笑い話が多く、お笑い芸人さんが今でもよくやってる聞き間違いによるすれ違いコントみたいな噺もあれば、知ったかぶりの嫌な若旦那に「私ゃこんな珍味を見た事もございません、若旦那ならご存知でしょう?」なんて言って、腐った豆腐を食べさせて「パクパク‥‥うぅん、これは、舶来モノの酢豆腐だね。」とか何とか言って「もう一口どうです?」と尋ねると、キメ顔で「いやいや酢豆腐は一口に限ります。」うわーイキるなぁー、若旦那だいぶイキっとるなぁー。あははは。ってな具合の噺もある。因みにこの話での与太郎は豆腐を腐らせただけの、どうしようもない馬鹿であるが。

    こうして書いている内に、フランスの人情喜劇と落語の繋がりが気になって、ポチポチとインターネットで調べ始めて、いやいや、違う違う、映画の紹介をするんだった。と我に返ったのだが、せっかく人にお勧めするんだから、もう一度観てみよう、なんつって、再生ボタンに手を伸ばし、あはは、と笑い、見終わった後に、あれ、私がやってる事は、この映画の主人公と同じじゃないか、成程どうして、よくわからない近似性を持ち出して色々述べたが、結局の所は、この映画の主人公に親近感を覚えていただけなのかも知れない。お暇ならご覧下さい。そこに私がいますよ。

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ありがとう、雨になって君の街に降り注ぐよ
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森羅万象を色眼鏡で見てます。
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