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日記小説を書いてみる。穏やかな時間、恋人、日常。

一つ歳が上の恋人。選ぶ言葉や醸し出す空気、立ち振る舞いは本当に20代なのか?と思うほどに、達観しているように思える。
何なら人生2度目なのか?と思えるほど一緒にいるとしっくり落ち着くし、時間の流れがゆったりと穏やかなものになる。
彼といるときの自分は多幸感に包まれて、そのおかげなのか良いことばかりが起こっているような気がする。「一緒にいると良いことが起こるよね」と彼にそう言われ確信したものだ。
そんな自室にいる彼は、扉を開けっぱなしにして鼻歌を歌っている。朝の光が多方の窓から差し込んできて美しい。差し込んだ明るさの中「はーあー」と背伸びをするのが気持ちが良い。
そんなのんびりしている私の事などお構いなしに彼は着替えを始める。
交際しているのだから別に気にしなくても良いのだが、少し着替えの時はそっぽを向いてしまうのはまだ私達が初々しいのだろうか。
彼の仲良しの友達からは「お前達はもう何年もいるみたいな落ち着きだな」といわれたものだが。
パジャマからタンクトップになった彼は長く伸びた髪をふりほどく。
伸びた髪がはらりと落ちたとき、洗面所から覗き見していたこちらに気づいたようで。
「どうしたの。何見てるのよ」
と優しい口調で、すこしおねえ口調におどけて言う。
そんなおちゃめなところも、長くのびた髪が似合うところも、服を着ているとわからないけど少し筋肉がついた腕の男らしいところも好きだな。と言葉には出さずにこっそり思う。
「なんでもないよ、べつに。見ていただけ。」と言うと、
「なにさ、べつにって。」
と笑いながらも着替え続けた。
そのあと温かい飲み物を入れて湊かなえの本を読んでいると、部屋の片隅で設計図面を前にウーンウーンと唸る声。
あーでもないこーでもない、と独り言を発しながら作っている彼が
「これって何?何だと思う?」
と聞いてきたが、画面を見ても私はさっぱり分からない。同じ業界にいて、違う仕事に移動し、また同じ業界に戻ってきた私は、
仕事内容が違うだけでこうも分からないのかと少しへんなりする。
植物をぼーっと見ているとまだまだかと唸る彼の姿に笑えてきて、微笑しながら
「お茶でも…飲む?」と聞くと
「うん、飲む」と眉間に皺を寄せて頷く。
そんな彼の全ての魅力は落ち着きと気怠げからきているが、なによりも知的な雰囲気に、色気があるなあと、付き合う前から思っていたものだ。出かける度に色々な雑学を会話の端々にはさんでくるのだ。
新しい知らない事を楽しいと思える自分にはその時間やその会話が楽しくて仕方がないのだ。
窓から差し込む太陽の光と、唸る彼と、湯気が立つ温かい飲み物と、なんでもない会話のそんなありふれた日常のこの空気感に途方もない多幸を感じては永遠に続いて欲しいと思うそんな休日。

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