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葉っぱで分かる沖縄の木々明解

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琉球新報の副読紙「レキオ」で連載した、沖縄の樹木の見分け方紹介記事
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目がはれる毒の木・ミフクラギ

目がはれる毒の木・ミフクラギ

 人は生きていく上で、危険なものを知っておかねばならない。車、海、火、ハブ、ハチなど。同様に、危険な植物も知る必要がある。沖縄を代表する有毒植物が、ミフクラギ(別名オキナワキョウチクトウ)だ。枝葉や果実を傷つけると、有毒の白い汁が出る。

 これは友人の体験談。結婚式の出席で本土から沖縄に訪れ、ホテルの庭でテニスボールサイズの赤い実をみつけ、何の実だろう? と触っていたら、結婚式が始まりそのまま参

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風ニモ 火事ニモマケヌ フクギ

風ニモ 火事ニモマケヌ フクギ

雨ニモマケズ 風ニモマケズ
で始まるのは、詩人・宮沢賢治の遺作。フクギ(福木)の場合は少し違う。

風ニモマケズ 火事ニモマケズ

 沖縄の古い集落には、フクギで囲われた民家が連なり、特有の並木風景を作っている。直立した幹に分厚い葉が密集し、縦長の樹形をつくる姿が特徴的。一見して見分けやすい木で、知名度も高い。

 台風の常襲地帯で、強風や潮風から家を守っていることは想像しやすいが、実際には火事の

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葉は車輪状、花は梅に似るからシャリンバイ

葉は車輪状、花は梅に似るからシャリンバイ

 鮮やかな花が多い沖縄でも、春の野山で目につく花は、清楚な白色が主流です。シャリンバイ、トベラ、エゴノキ、シマイズセンリョウなどがそうです。中でもシャリンバイ(車輪梅)は、海岸(石灰岩地)から山地(非石灰岩地)まで生え、公園や街路、防風林にも植えられるので、町中でも比較的よく出会える低木です。

 名前は、葉が車輪状に集まってつき、枝先にウメに似た花が咲くため。沖縄ではウメの木がほとんど植えられて

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広い木陰を作るモモタマナ(クヮーディーサー)

広い木陰を作るモモタマナ(クヮーディーサー)

 駐車場にこの木が植えられていたら、ありがたい。枝を大きく横に広げて傘のような姿(樹形)になり、ちょうどいい木陰を作ってくれるからだ。テカテカした大きな葉が枝先に集まり、その中心にモモのタネの形に似た実がなる。

 筆者は19歳で初めて沖縄を訪れた時、印象に残った樹形の木トップ3が、コバノナンヨウスギ、ガジュマル、そしてこのモモタマナだった。枝を水平面に低く長く伸ばすので、緑陰樹(木陰を作る木)に

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良くも悪くも沖縄らしい? 外来種ギンネム

良くも悪くも沖縄らしい? 外来種ギンネム

「沖縄で一番多い木は何?」 と問われたら、うーん、と少し考えて「ギンネム」と答えるだろう。
 ガジュマルは石灰岩地だけだし、イタジイやリュウキュウマツは山地だけ。ハイビスカスやブーゲンビレアもよく見るが、町中だけだ。それにくらべてギンネムは、町中にも生えるし、石灰岩地の空き地には大群生するし、山地の林道沿いにもたくさん生えている。少なくとも人の生活圏で一番よく目にするのは確かと思う。

 1〜2㎝

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首里城再建の木材 イヌマキとオキナワウラジロガシ

首里城再建の木材 イヌマキとオキナワウラジロガシ

 衝撃的な朝だった。テレビに燃えさかる首里城が映り、夢か映画でも見ているようだった。あれから3年、首里城再建の準備が着々と進み、今年はいよいよ着工予定(冒頭写真は2022年1月の首里城再建現場)。議論を呼んでいるのが、正殿に使う木材だ。

 何度も再建を繰り返してきた首里城は、過去にイヌマキ(沖縄名チャーギ)、オキナワウラジロガシ、タイワンヒノキなどの木材が使われてきた。中でもイヌマキは、白アリに

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海岸に生えるスーキ
 クサトベラとモンパノキ

海岸に生えるスーキ  クサトベラとモンパノキ

 南国の海を求めてやって来る観光客にとって、クサトベラはテンションの上がる木だろう。沖縄や小笠原の海岸に行けば、あちこちでクサトベラが群生している。内地では見かけない、テカテカした大きな厚い葉が、枝先に集まってつく姿が印象的で、瑠璃色の海とともに脳裏に焼きつく。

 沖縄ではスーキ(潮木)の方言名があるが、「スーキ」「ハマスーキ」と呼ばれる木には、モンパノキもある。この両者、まったく別の木でありな

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3枚セットの葉の受難 アカギとデイゴ

3枚セットの葉の受難 アカギとデイゴ

 コロナ禍直前の2019年秋。イベントで訪れた那覇市の奥武島公園で、まるで本土の秋のように、くすんだ黄色に紅葉(?)したアカギを初めて見て驚いた。アカギは常緑樹だから、一斉に紅葉するはずはない。この現象はみるみる分布を広げ、那覇近郊の街路樹をはじめ、名護市周辺のアカギも黄色く染まり、落葉樹のように葉がすべて落ちた木も見る。

 犯人は3mmほどの虫、ヨコバイの仲間。大量発生して葉裏などで汁を吸うた

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眺めるだけにしたい、かぶれる木 ハゼノキ

眺めるだけにしたい、かぶれる木 ハゼノキ

 沖縄の新聞「琉球新報」に毎週木曜日に折り込まれる副読紙「週刊レキオ」にて、連載「葉っぱで分かる木々明解」を書いています。第3回目にしてはや最終回ですが、2020年10月30日号に掲載されたハゼノキの記事をアップします。本土でも紅葉が綺麗な木、かぶれる木として有名ですが、もともとは沖縄原産の木。沖縄でも紅葉するの? 沖縄でも名は知られている? そんな素朴な疑問を紹介します。

眺めるだけにしたい、

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梅雨を彩る“七変化”の花木 イジュ

梅雨を彩る“七変化”の花木 イジュ

 沖縄の新聞「琉球新報」に毎週木曜日に折り込まれる副読紙「週刊レキオ」にて、連載「葉っぱで分かる木々明解」をたまに書いています。ご好評につき、今年度も継続することになりました。2021年4月29日号に掲載されたイジュの記事をアップします。

 * * *

 4年ほど前、東京に住む人から、銀座に植えられた白い花の木の名前を尋ねられた。写真を見ると、なんと沖縄のイジュではないか。沖縄ではゴールデンウ

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マツと思ったらモクマオウ?

マツと思ったらモクマオウ?

 沖縄の新聞「琉球新報」に毎週木曜日に折り込まれる副読紙「週刊レキオ」にて、連載「葉っぱで分かる木々明解」を書いています。今回は、2020年7月30日号に掲載された第2回の記事をアップします。沖縄でよく見かける外来種のモクマオウと、在来種のリュウキュウマツ。よく間違われる両者の見分け方を、あなたは知っていましたか?

マツと思ったらモクマオウ? 

「あれ何の木かわかる?」と、モクマオウを指差し

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気根を垂らした木はガジュマル?  アコウ?

気根を垂らした木はガジュマル? アコウ?

 沖縄の新聞「琉球新報」に毎週木曜日に折り込まれる副読紙「週刊レキオ」にて、3ヶ月に1回の連載を書くことになりました。「葉っぱで分かる木々明解」というタイトルで、沖縄で見られる代表的な樹木の見分け方を紹介しています。今回は、2020年4月30日号に掲載された初回の記事「気根を垂らした木はガジュマル? アコウ?」をアップします。

気根を垂らした木はガジュマル? アコウ?

 沖縄の風景を象徴する木

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