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企業アーキビストとして意識すべきこと

私は自分が大学で学んだ歴史学を活かした仕事をしたいと思い、様々な挫折と経験を経た後、歴史学の知見を役立てた企業アーカイブ構築支援事業をしています。

そんな職業があるんだ!

アーカイブ構築を専門的に行う人のことを"アーキビスト"と呼びますが、それを企業にて実施する人を「企業アーキビスト」「ビジネスアーキビスト」「コーポレートアーキビスト」などと呼びます。私は企業のアーカイブ"構築支援"を専門としている企業アーキビストです。メジャーな職業ではないので、PRも兼ねて母校で自分の仕事を紹介することがあるのですが、そんな職業があるんだと初めて企業アーキビストという職業を知る学生もいて、興味をもってくれた学生もいます。中には「企業アーキビストになるにはどんな勉強をしたらよいですか」と質問してくれる学生がいました。(実際に採用試験を受けに来てくれました)

現在も司書、学芸員課程を受講している学生の多くは、その資格を活かした就職先は少ないようです。私も就職は相当苦労したので、そのような新しい世界を学生達に教えてあげられるような立場になったのは嬉しいことです。

企業アーキビストとして意識すべきこと

さて、企業アーキビストになるためには、どんな勉強や知識を身に着ければよいかという質問に対して、やはり具体的には学芸員資格や司書資格、デジタルアーキビスト資格などの取得、あるいはデータベースの基礎知識など、学芸員課程で学ぶようなことを身に着けるのが望ましい旨をお答えしています。

ただし、私が仕事にしている"企業アーカイブ構築支援事業"は業務内容が広範囲に及ぶため、上記の知識に限らず、様々な専門性(技能)が必要となり、企業アーキビストが1人で全部対応できるものではありません。

では、企業アーキビストとはどんな存在なのかということですが、今回は私が仕事にしている"企業のアーカイブ構築を支援する"企業アーキビストに求められる専門性(技能)を考える前に、アーキビストとして意識すべきことについて2つほど述べてみたいと思います。

①企業アーカイブについて説明できるか

当たり前のようで難しいのが、アーカイブの意義・概念を説明することです。「アーカイブは何のためにするのか?」と聞かれて、一言で説明するのは私でも難しいのです。

企業におけるアーカイブ(一般的には”企業アーカイブ” ”ビジネスアーカイブズ”と呼ばれます)とは、簡潔に述べますと企業ブランディング、内部統制のための企業経営手法のひとつであると考えていますが、なぜアーカイブが企業経営において重要な取り組みとなるのか、どんなプロセスをもって企業経営に貢献するのか(ベネフィット、便益)ということをアーキビストが説明し、お客様が理解してはじめて、手法の専門性が問われるのだと感じています。

また、業務を進めていくなかでも、予算取得支援、計画立案、手順説明、進捗報告など、お客様に説明をする機会が多くあります。特にアーカイブ業務はそのプロセスを説明することも難しいため、お客様への説明を補足する資料づくりも重要だと考えています。

つまり、アーキビストは「そもそもアーカイブはわかりづらい」ことを意識することが重要です。

②自治体系(博物館系、図書館系)アーカイブとの違いが説明できるか

アーカイブとは一般的には記録を残す、情報の蓄積という意味合いでも用いられる言葉です。また、博物館や美術館にて貴重な資料を収集・保存していく活動もアーカイブの意味として含まれます。
企業アーカイブも基本的には企業にとって貴重な資料を収集・保存してくという意味においては、博物館、美術館におけるアーカイブと考え方は同じです。
その点で学芸員課程、司書課程で学んだことは大いに役立ちます。

ただし、企業アーカイブと博物館、美術館などのいわゆる自治体系アーカイブとの違いも当然あります。例を挙げると、自治体系アーカイブでは対象資料をいかに高品質(劣化させずに)で残していくかということを求められることが多いのですが、企業におけるアーカイブでは、どの資料をアーカイブ化すればよいかを決めることから始める場合もあるといった違いがあるように感じます。それは、企業がアーカイブの専門機関ではないという事に尽きるのですが、そもそも支援する企業は

業界、業種、規模、社歴がそれぞれ違います。

所有している資料の内容、量もそれぞれ違います。

アーカイブに関する知識も、抱えている課題もそれぞれ違います。

つまり、アーキビストは「相手の立場、状況によって、求められることが違う」ことを意識することが重要です。

企業アーキビストに必要な専門性とは?

最後に私のような"企業のアーカイブ構築を支援する"アーキビストに必要な専門性について答えるとすれば、資料から読み取れる「情報」の整理・共有・活用のプロセスを各社の実状に合わせて組み立てながら、それをクライアントに理解させる、あるいは実行・管理させる能力だと考えています。

そこには、広範な業務範囲に対応するために必要な知識と事例を有するとともに、アーカイブを実施するための実務的なリソースを提供できる手段を持ち合わせていることもアーキビストには必要な能力だと考えています。





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