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こころの雫

NHKハート展に行ってきた。身体や精神、知的に障害を持つ人たちが詠んだ詩の展覧会だ。数年前に初めて行って虜になり、以来毎年欠かさず足を運んでいる。今年の作品も、素晴らしかった。

障害を持つ方々はとても優れた観察眼や感性をお持ちのようで、彼らが提示してくれる世界の豊かさに、あぁと感嘆が漏れる。「障害を持つ人の作品」と思うと、鑑賞する心も狭まってしまいがちだが、実際に作品に触れていると、感動が「障害」を飛び越えていく。

「障害者」という名札を与えられていなくても、私たちは日々、それぞれの苦しみを抱えて生きている。ハート展に並ぶ作品たちは、障害者のそれと健常者のそれとが、決して異質なものではなく、人間として通底したものであることに気付かせてくれる。その気付きは「障害者」「健常者」という壁を少しだけ壊し、異質なものと捉えてしまいがちな「障害者」を、少し身近に感じさせてくれる。健常者である自分の中にある苦しみの存在にも、気付かせてくれる。それでも障害を持つ方々の苦しみが分かるということでは、決してないけれど。

ハート展の作品は、「心の雫」だなぁと思う。

頑張らなくちゃ。どうして自分だけ。それでもなんとか。いつまでこんな。もういっそ・・・。

そんなふうに、繊維が切れてしまいそうなほどに絞り込まれた心。カラカラに絞られたはずのその心から、ふっと漏れ落ちる一滴の雫。

そういう雫は、どれも等しく美しくて、切なくて。こぼれ落ちた誰かの水たまりに、あたたかい波紋を広げる。「生きている」ことを、思い出させる。

そんな雫みたいな表現が、僕はたまらなく、好きだ。

https://www.nhk.or.jp/heart-net/event/art/

(写真は田口昇大さんの作品「何 どう生きる 何して生きる」から)


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