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必ず書ける「3つが基本」の文章術【ブックレビュー】

不思議なもので、どんなことも「3つ」と言われると、スルッと頭に入ってきたりするものだ。
覚えにくいものも「3つ」という呪文にかかれば、「なんか、覚えられそう」と安易に食いついてしまう。
実に単純なものである。

本書は、コラムニスト・毎日新聞客員編集委員である近藤勝重氏による

必ず書ける「3つが基本」の文章術

出版社: 幻冬舎新書
発売日: 2015/11/30(第一刷)


文章にはこの「3つ」が基本になる

冒頭で、文章で必要なことを以下の3つだと著者はいう。

①何を書くか
②どう書くか
③どう構成するか

著者は往々にして3つをポイントに置いて説明している。このことから、本著でも見出しに対して3つのポイントにまとめている。

本著は早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコースで著者が担当していた「文章表現」の授業内容とも被っているそうで、少し講義っぽい雰囲気も残しつつ、一般の方にもわかりやすく書かれている。

今回は、本著の中で特に覚えておきたい文章をいくつか残しておこう。


結びを決めておけばラクに書ける

著者は、作文を書く上で3つのポイントをあげている。

①個人的な体験が題材になっている
②その体験を通して気づいたことが書かれている
③その気づきがどう社会とかかわっているか、普遍的な意味合いを見出そうと努めている。

必ず書ける「3つが基本」の文章術

書き始める時に、③で何を書くかを決めておくと、スムーズに書けるということだ。

著者がいう、いい文章の条件とは【独自の内容】であることだという。
実体験を読み手の五感に訴えるように、言葉を綴る。
受け止め方は人それぞれ、気づいたことも切り口はさまざま。

推敲の重要ポイント

書くことがお仕事となってから、何よりも大切だと実感したのが「推敲」。
たわいもない文章を書いているうちは、推敲なんてお構いなし。
書いては出し、書いては出し…。
今となっては恐ろしいことをしていたと身が震える。

著者は以下の3つをポイントに置いていてる。

①簡素な文章であるか
②読みやすい文章であるか
③味わい深い文章であるか

必ず書ける「3つが基本」の文章術

①、②まではできそうだけれど、③で思い悩む。

決まり文句でドヤ顔していないだろうか。
くどくど説明してはいないか。
削るところは削っているか。

味わい深い文章を目指して。

「?」のメモが文章力アップの鍵

ふとした疑問はメモして心に刻み込み、さらに「なぜだろう」とこだわってみること。
何?をそのままにせず、疑問として育てること。

そして思いついたこともメモする。
忘れないうちにメモする。
ここでの3つのポイントは以下の通り。

①何?
②なぜ
③それにしても

必ず書ける「3つが基本」の文章術

③では、つぶやきであったり、ボヤキであったり、深く感嘆してみたり。
体験による思いを綴る。
自分の文章ができあがる。

周囲を描くと情感が伝わる

文章で一つの世界を描くとき、以下の3つが大切になるという。自分と周りとの関係性をどう描写するか、文章力が問われる。

①人
②人物
③自然

必ず書ける「3つが基本」の文章術

著者は余情の描き方をフォークソングで学べといっている。
情緒豊かな文章は周りの描き方次第で大きく変わる。
細部にまで心を砕き、文章にあらわす。

たとえには遊び心を

受ける文章を書くためには、以下3つがポイントだという。

①たとえ
②まじめな冗談
③なるほどの共有化

必ず書ける「3つが基本」の文章術

たとえば~のようなといった比喩は、村上春樹氏に言わせればこうだ。

比喩というのはごく簡単に言ってしまえば、「他者への付託を通して行われるメッセージの共有化」なのです。

若い読者のための短編小説案内|文春文庫

比喩は、簡単なようで意外に難しい。
元々あった表現を言い換えるには、相応の語彙力が伴うからだ。

「なるほどの共有化」には、その文章にイメージをもたらす力があるかないかが重要になる。
「孤独」と書いても、どんな風に孤独なのかわからない。
情景やたとえ話、物語を用いるとか。いろんな書き方があるからこそ、書き手の力量が問われる。

読まれる文章は核心から書いてある

どこから文章を書くといいか。核心から入るといいという。

①現在
②過去
③未来

必ず書ける「3つが基本」の文章術

独自の表現や内容であっても、構成が伴っていなければ読み手にうまく伝わらない。
まずは現在から、時間的な流れを踏まえることが大切。

これは起承転結とも重なる便利な更生法だと、筆者は言う。

①起・承  ⇒  現在
②転    ⇒  過去
③結    ⇒  未来

内容によっては微妙に異なるけれど、上記のように3つに分ければ同じようにとらえられる。

聞いて知る。すべてはそこから

最後の章で、3つのポイントを挙げている。

①聞く
②事実
③真実

必ず書ける「3つが基本」の文章術

まずは現場に行って話を聞く。とにかく聞く。
そうして、事実をつかむ。

では、事実と真実はどう違うのか?
本著では以下の引用文が書かれている。

「事実」は、理想的でもない、空想的でもない、時と場所を占めて、物理的にも心理的にも、実際に生じたこと・あること・経験したことをいう。つまり、本当に起こったこと、あったこと。「事実をかくすことはできない」。「真実」は、虚偽や幻想の反対で、見せかけや形式的であることとも反すること。純粋な、うそをつかない、ものごとのありよう・状態をいう。つまり、うそではないということ。「真実を語りたい」。

角川必携国語辞典|大野進、田中章夫編|角川書店

事実と真実ということで、筆者は司馬遼太郎氏のことばに興味を覚えたという。

史料に盛られているものは、ファクトにすぎません。しかし、このファクトをできるだけ多く集めなければ、真実が出てこない。できるだけたくさんのファクトを机の上に並べて、ジーっと見ていると、ファクトからの刺激で立ち昇ってくる気体のようなもの、それが真実だとおもいます。

手掘り日本史|文春文庫

実際に話を聞いてできるだけ多くの事実を集め、そこから真実が見えてくる。
それを文章にあらわす。

茂みの奥深くまでもぐりこみ、真実をつかみとりたい。

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