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聞き出す力【ブックレビュー】

人と話すとき、何となく気構えてしまうときがある。

なぜだろう?心のどこかで、うまく話さなきゃいけない…と思ってしまうのだろうか。

仕事でももちろん人に話を聞く場面はある。ただ、聞く側に徹していると、そこまででもない。「話す」「聞く」の両方を同時にするのが個人的に苦手なだけか??

…と、話は変わり。

私が聞き手に回るとき、できれば話し手に気持ち良く話してもらえたら…そう思いつつ、この本を手に取ったのだった。


本書は、コラムニスト・毎日新聞客員編集委員である近藤勝重氏による

聞き出す力

出版社: 幻冬舎
発売日: 2022/2/25(第一刷)

近藤勝重氏の書籍は以下でも紹介している。

記者の仕事は○○こと。

記者というと、「書く」仕事であると多くの人が思っているだろう。けれど、筆者はとにかく「聞く」のが仕事だという。

そして、ただ受け身的に聞くだけでなく、「聞き出す」という能動的な力も求められるそうだ。

どれだけAIやITが発展したとしても、商談や交渉ごとなど、利害が関連してくるケースでは聞き出す力、コミュニケーション能力が関わってくる。

本書では、実例を出しながら聞き出す力について考えていく。


「聞く」と「聴く」の違いは?

大野晋・田中章夫編『角川必携国語辞典』では、聞くについてこう書かれている。

①音や声を耳の感覚でとらえる
②聞いて内容を理解する
③知りたいことを訪ねる

一方で聴くについてはこうだ。

自分から進んで、注意したり関心をもったりしてきく
抗議を--。クラシック音楽を--。

使い分けは、どちらでもいい場合だと「聞く」になろうか。


『聞く力』阿川佐和子さんのエピソード

作家・エッセイストで知られる阿川佐和子さんとの対談話では、阿川さんの魅力についてこう書かれている。

阿川さんお話はわかりやすいうえに、自分の考えも交えてのものなので、向かい合っているこちらも刺激され、何か言いたくなってくるのです。当然、話は進みます。

また、『聞く力』に書かれているように、阿川さんは対談の際に事前に3つの質問を用意するという。多すぎず、少なすぎずの質問で、自分のエピソードも交えながら話すことがポイントか。

ちなみに上手なしかり方については、阿川さんは産業カウンセラーの渡辺卓さんが考え出した「借りてきた猫」論を紹介している。

「か」感情的にならない
「り」理由を話す
「て」手短に
「き」キャラクターに触れない
「た」他人と比べない
「ね」根に持たない
「こ」個別に叱る

これは、子どもの子育てにも通用しそう。大変ありがたい。

高倉健さんやアンミカさんのエピソード

高倉健さんの言葉を紹介している。

心で思わないと演じることなどできません。涙は目からではない、心から流れ出るんです

この言葉から、筆者はこのように語る。

人から話を聞き出す場合にも、まず相手の思いや考えをよく知り、心を寄り添わせてみることが大事なのではないかと思うのです。うわべだけの話ではない、本当のところが聞きたいのなら、まず自分の物差しは一旦脇に置いて、決して否定的にならず相手の話によく耳を傾けることが大切なんですね。

コーチング・傾聴などでもよく聞くのが「まずは一旦相手の言葉を受け入れる」ということ。すぐに話を横取りしてしまうのではなく、最後までしっかりと話を聞き、「そうですね」という意思表示をする。

人の話を大切にきく姿勢が大事だ。

アンミカさんの言葉も紹介している。

人と話す時は相手の方に胸を向けて話しなさい、と母によく言われました。それが身についてから、苦手だった人との会話が苦でなくなりました

確かに、体ごと相手の方へ向けていると、ひとりの人間として真っ向から向き合っている心地になる。相手を受け入れている姿勢ともいえるし、実践してみたいエピソードだ。

英語のことわざも紹介している。

Words don't move someone's heart: the heart does.
(言葉が人を動かすんじゃない。心が人を動かすんだ。)

心で聞くことで、相手の心が開く。聞き出す力にも大きく関係してくる。

筆者がチェックする原稿「3つのポイント」

記者当時より、筆者は以下の3点をこだわってチェックしていたという。

現在(今の現状、状態)
過去(その状況、状態をもたらした背景)
未来(その状況、状態がこれからどうなるのか)

例えば頭を悩ませている相手に対して、聞きただすのではなく聞き出す形で現在・過去・未来を尋ねれば、うまくいきそうだ。

最初に「結論を先に言う」としてから話に入るとなおいいという。


良寛さんの「戒語」から

江戸後期の僧、良 寛さんの戒語から、いくつか紹介している。

「ことばの多き」(口数が多い)
「口のはやき」(早口)
「さしで口」(出しゃばって言う)
「手がら話」
「人の物いひきらぬ中に物いふ」(人が話し終えていないのに口を挟む)
「能く心得ぬことを人に教ふる」(よくわかっていないことを人に教える)
「ことごとしく物いふ」(おおげさに言う)
「人のはなしのじやまする」
「親切らしく物いふ」
・・・・・・

江戸時代にすでにこんな日常会話の心得を述べられていたのだ。

耳の痛い言葉は、ためになる言葉。しかと心に留め置き、日々に反映したいものである。

エピソード・ブック

本書は、著者がインタビューや取材記事のほか、何らかで関わった人のエピソードを踏まえて「聞き出す力」のヒントを紹介している。

随所に名言が落ちているので、拾ってみてほしい。

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