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1980年代にデビューした韓国の音楽グループ「消防車」について。

消防車』は、1987年にデビューした男性3人組の歌手グループ。韓国でアイドル的な人気を獲得したグループの先駆けである。歌って踊れるグループが10代の女子学生ファンを多く獲得して人気を得たという点で「アイドルの元祖」と評価されている。1986年10月、当時の所属事務所である韓畑企画(ハンバッ企画)の先輩歌手だったク・チャンモーのバックダンサーチームとして「コスモスの上に蝶が座った」というグループ名で結成された。ハンバッ企画は、もともと歌謡曲やトロット・演歌などを中心とした芸能会社だったため、彼らにも演歌のタイトル(曲名)のようなチーム名が付けられたが、「名前が長すぎる」・「コスモス(お花)は女の子をイメージするような名前」といった理由で最終的に日本の男性アイドルグループ¨少年隊¨の名前を意識し、消防士のような赤い衣装を着用して歌っていたことから消防車(소방차 / ソバンチャ)と名付けられた。

デビュー当時の消防車の初期メンバー3人

ソバンチャのファンクラブは所属事務所が運営するのではなく、ファンが自らファンクラブを作って応援するスタイルであった。日本で言う昔の親衛隊のようなもので「消防隊員」、「赤い戦線」、「緊急出動」、「B By Too」など韓国内で約30ヶ所のファンクラブが存在した。消防車が活躍していた1980年代~1990年代前半は、韓国内で歌手とアイドルの境界線が曖昧な時代であり、現在のK-POPアイドルとも音楽性、方向性、グループのコンセプトなど含めて路線が大きく異なるため、日本でも微妙なポジションに置かれている場面もある。

■消防車
●DSPメディア所属のアイドルだと思われているが、彼らの所属事務所はハンバッ企画である。
●消防車をプロデュースした人物とDSPメディアの創設者が同じ人物(イ・ホヨン)だったため混合している人も多いが、ハンバッ企画とDSPメディアは別の芸能会社である。
●日本のジャニーズグループ「少年隊」と比較されることが多いが、あくまで3人組という人数、アクロバット的な振り付けなど一部のコンセプトをお手本にしたというだけであって少年隊とは直接の関係はない。
●現在、活躍しているK-POPアイドルたちの中で少年隊および消防車に影響を受けたグループは皆無である。後世代のアイドルたちに与えた影響力も低いので事実上、「企画モノグループ」・「期間限定ユニット」的なポジションに近い。
●韓国内では消防車がデビューした後、第三世代や世代交代という3人組のグループが登場したが、こちらの場合は少年隊ではなく、消防車の影響を受けて出てきたグループである。

■オジャパメン(オジェパム・イヤギ~ゆうべの話)
●本来は1980年代後半に発表された楽曲だが、「ダウンタウンのごっつええ感じ」の影響で1990年代の曲だと誤って認識されてることが多い。
●韓国語の曲ではあるが、K-POPではない。
※音楽ジャンルとしては歌謡曲(韓国歌謡)に近い楽曲となる。
●デビュー曲と誤解されているが、消防車のデビュー曲は「彼女に伝えて」という歌である。

■少年隊との関係性
ハンバッ企画は、当初から日本のアイドルを手本としていた訳ではなく、チョン・ウォングァン、イ・サンウォン、キム・テヒョンの3人はあくまで事務所の先輩歌手のバックダンサーとしての活躍に留める予定だった。しかし、消防車のメンバー3人はハンバッ企画の社長であるヤン・スングクと一緒に生活しながら社長が運営していたナイトクラブやイベントでパフォーマンスを披露するなどして人気を集める。そこで当時、事務所の専務理事として働いていたイ・ホヨンがその状況を見て3人を歌手グループとして売り出すことにする。日本のジャニーズ事務所へ「少年隊の映像資料を貸してほしい」とコンタクトを取り、¨少年隊¨をベンチマークしたという。イ・ホヨンは社長のヤン・スングクと一緒に企画及び広報などにおいてグループ製作に参加した(この様子は当時、NHKの番組で放送されたことがある)。

■ダウンタウンのごっつええ感じ

2丁目おでかけ探検隊IN韓国(毎日放送)で消防車の曲を歌う吉本興業の芸人たち

1996年、日本のテレビ番組『ダウンタウンのごっつええ感じ』でダウンタウンら男性レギュラー陣が、消防車の『オジェパム・イヤギ~ゆうべの話』をオジャパメンとしてカバーした。同年の9月に放送されたHEY!HEY!HEY!夏のチャンプカーニバルでは実際にダウンタウンとソバンチャの共演が実現している。ダウンタウンが大阪でのレギュラー番組「4時ですよーだ」でのコント等で使用した。その後、松本が「皆で歌ってみるか」と発案、「オジャパメン」が誕生した。あえて翻訳、日本語詞にはせず、当時の番組の放送作家であった木村祐一が、聞こえたままにカタカナに起こした。『ダウンタウンのごっつええ感じ』でカバーされる前、1988年に放送された番組「2丁目おでかけ探検隊 in 韓国(読売テレビ/関西ローカル)」でダウンタウン、ハイヒール、岡けん太・ゆう太、今田耕司、東野幸治、非常階段、ピンクダック、メンバメイコボルスミ11ココ、ボブキャッツ、リットン調査団、130RなどのNSC出身の吉本芸人たちによって現地の観客の前で「昨夜の話(オジャパメン)」を披露したことがある。

■消防車の盗作疑惑曲
通話中(2集)

少年隊のダイヤモンド・アイズ / 消防車の通話中

1988年にヒットした消防車の楽曲「通話中」は、1986年に日本の少年隊が発表した「ダイヤモンド・アイズ」の曲構成とコード進行をほぼ借用して作り、衣装や振り付けまで似ていると盗作疑惑を受けたことがある。

●G Cafe(4集)

KUWATA BANDのスキップ・ビート / 消防車のG cafe

1995年に発表された4集タイトル「G-CAFE」は、1970年代後半から80年代初頭の懐古調の楽曲でヒットしたが、1986年に桑田佳祐(KUWATA BAND)が発表した「スキップ・ビート」を盗作したのではないか?という意見が多く挙がった。

●中南時代(5集)

Coolioの1, 2, 3, 4, (Sumpin' New) / 消防車の中南時代

1996年にリリースした5集アルバムに収録されている「中南時代」のイントロ部分が同時期の96年にリリースされたCoolioの「1,2,3,4 (Sumpin' New)」に酷似している。またサビ部分は1997年に発表されたSechsKiesの「男の生きる道(ポムセンポムサ)」と似ている。

消防車 / デビューアルバムのジャケット

韓国では人気を獲得した一方で、1980年代~1990年代当時の日本ではブレイクしておらず、「少年隊みたいなグループが韓国にもいる」といった程度の認知度であり、消防車をアイドルと呼ぶ人も少なかった。彼らの存在が知られるようになったのは「ダウンタウンのごっつええ感じ」が終了した後の2000年代に入ってからである。現在までのK-POPアイドルの源流は、1990年代後半に誕生した第1世代アイドルたちからと見るのが主流のため、消防車が活躍していた1980年代、1990年初頭の歌手グループには基本的にアイドルという表現を使わないのが一般的である。

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