里山で見つけた、自分のこころを満たす時間
こんにちは。ホールアース自然学校の小野です。
いつもこのnoteでは広報担当として、色んなスタッフの事業の思いを綴っていますが、今回は初めて、今年始める私自身のプログラム企画について、その思いを書いてみようかなと思います。
アパレル業界から自然ガイドへ
東京から富士宮にやってきて、5年が経った。
それまで、7年くらいアパレル業界でものづくりにエネルギーを注いできたけれど、「これからは、“モノ”ではなく“コト”を提供できるようになりたい」と思い、一念発起してこの地にやってきた。植物のこと、動物のこと、生態系、大地の成り立ちなど、教科書で習うくらいしか知らなかった自分が、里山や森、川、湖などの自然の魅力を、経験や実感を持って伝えられると思えるようになるまで、数年かかった。誰かの言葉を借りて、表面的なことはいくらでも言えるけど、それではなんだか薄っぺらくて気持ち悪い。
時間はかかってしまったけれど、ようやく自分が思い描いた“コト”を形にできるようになった。というと、なんだか大げさに聞こえてしまうけれど、ただただ里山や自然の中で過ごすプライスレスな時間と経験を、他の人たちにも体験してほしくて、Satoyama me time(サトヤマミータイム)というプログラムを実施することにした。
me timeとは、“わたしのための”時間。里山をメインとした富士山麓の自然でのアクティビティや食を通して、自分の体と心を満たす豊かな時間を過ごしてほしいと思っている。
里山には縁もゆかりもなかった自分が、その魅力に気づくまで
里山と聞けばきっと、その情景はなんとなく思い浮かべられると思う。だけど、「言葉で説明して」と言われると、ちょっと考えてしまうかもしれない。数年過ごした自分の解釈で言うと、里山とは「人間が、食べるものや使う道具、家を作る材料など様々な形で自然から恵みをもらうため、林業や農業を営み、その営みが自然の循環の一部となっている場所」なんだと思う。田んぼをやっていたら、そこにカエルやいろんな生きものがやってくる。その生きものを食べるため、ヘビや鳥がやってくる。生きものの住みかを提供するために田んぼをやろうと思っていなくても、結果的にその環境が、ある生きものにとっては大切な場所になっている。自然へ悪影響を与える人間の経済活動が目立っているけれど、人間の営みも自然の一部なんだと思い出させてくれる場所だ。
自然の循環と人間の営みが混ざり合う場所、里山。そこで、感性を研ぎ澄ませてみれば、何気ない植物の美しさや生きものの息吹をそこかしこに感じることができる。お花屋さんみたいな華やかさはないけれど、黄色に水色、ピンクに紫と、小さくてもけなげでかわいらしい花々がいたるところで咲いている。水辺には水辺の、草地には草地の、「私はここが好きなの」と言わんばかりに、花々は凛としていつもその場所にいる。朝露でかがやく草花、ゆらゆらと揺れている木々、田んぼ越しに見える夕陽がにじんだ富士山―自分なりの美しさを見いだせた時、里山の存在はぐっと近くなる。
忙しい日々の中で、ふと立ち止まるための登山
こうやって綴っていると、いつもゆったりとした時間が流れているように感じるけれど、日常の仕事はやっぱりせわしない。朝から夕方までガイドの仕事で外に出ることもあれば、企業研修で東京に行くこともあれば、週末は親子キャンプで色んなご家族を受け入れることもあれば、情報発信をすることもあれば…と、こっちはこっちでバリエーションに富んでいる。「あれもしなきゃ、これもしなきゃ」と不安要素があると、心がざわざわしたりする。そして忙しいと、「今自分が何を感じていて、どうしたいのか」みたいなことが置き去りになってしまったりする。
次から次へとやってくる仕事をこなしていくことを、「充実している」と言うこともできるけど、「うーん、このままでいいんだっけ」と、たまにちょっと立ち止まりたくなる。そんな時に行きたくなるのが、登りやすい低山だ。高い山だと、「よし、行くぞ!」と少し気合を入れてルートをしっかり調べたり、忘れ物しないように色々と準備をする。でも、行きなれた低山だと「明日晴れそうだし、行くかな~」くらいのテンションで行くことができる。もちろん最低限の情報収集はするけれど、行くまでのハードルは遠くの高い山よりも低い。低い山と高い山は、登る目的が違うのだ。
トレイルを歩いていると、その世界にどっぷりと浸かって、いつの間にか余計なことを考えなくなっていることがある。いわゆる、“マインドフルネス”。カフェでコーヒーを飲んで考えごとをするのも好きだけど、ぼーっとする時間と、心が揺さぶられる時間がバランスよく、程よく交互にやってくるのはやっぱり登山だ。マインドフルネスな時間を過ごした後、スッキリとした頭でものごとを考えると、なんだか整理されやすいように思う。体を動かせば、思考も活性化しますよね。
自分を大切にすることを知った30代
仕事のこと、家族のこと、過去のこと、未来のこと…人それぞれ考えることは色々ある。ただ頑張っているほど、自分が疲れていることにすら気づかないことがある。他の誰かのことを優先して自分のことは後回し、なんていうことはよくあると思う。誰かのために動けることは素晴らしいし、喜びも感じる一方、やっぱり最終的には、自分を大切にできないと、他人のことも大切にできないんじゃないかと思う。“自分を大切にする”なんて聞き慣れた言葉、いまさらって思うかもしれないけど、それができてないことって結構あると、今まで周りの人たちを見ながら感じてきた。何より、自分がそれが苦手だった。
変化のきっかけは、本当にささいなことだった。ある時ふと、「いいヘアブラシ買ってみようかな」と思うことがあった。それまでプラスチックのどこにでもあるようなものを使っていたけれど、ブラシの毛の部分の密度が高く、持ち手も木製のものを買って使ってみると、梳いた瞬間のサラサラ感が全然違ってびっくりした。同時に、“ちゃんと自分をケアしている”という気持ちに満たされた。道具が違うと、感じることもこんなに違うんだという発見だった。それをきっかけに、「もっと自分の喜ぶことを選ぼう」と思うようになった。“なんでもいい”から、“自分の機嫌をよくできる”ことへ。たとえば、自分に合ったスキンケア、ゆっくり入浴すること、疲れ切る前に休むこと、美味しいもの―なにより、「あー、自分は今日も頑張った!」って自分を労わる気持ちが大事で、同時に、自分を意識的に認めることが重要だと思う。
自分のための“わたし時間”
Satoyama me timeのme timeは、そんな意味で名付けた。仕事にまい進している人も、家族のために頑張っている人も、どんな状況でも、この2日間だけは“me time(わたしのための時間)”を満喫してほしいと思っている。
1日目は富士山周辺の低山トレッキング、2日目は里山の自然の中で行うマインドフルネスヨガ。この、ヨガというのが、五感を研ぎ澄ませて里山の自然を全身で感じるとともに、心の状態をスキャンすることができる、心地のよい時間なのだ。教えてくれるのは、富士宮でヨガスタジオを運営されている、ヨガ講師の渡辺彩(みどり)さん。無為風為(むいふうい) という名前で活動されています。トレッキングとヨガがメインではあるけれど、それ以外の時間でも、“小さな楽しみ”をちりばめたいと思っている。焚き火を囲んだり、美味しい朝ごはんをしっかり食べたり、まったり紅茶やコーヒーを飲んだり。登山後は、アロマオイルでフットケアをしたり。ジビエを食べたり、新鮮な野菜をいっぱい食べたり。どんなことができたら嬉しいか、皆さんのme timeを教えてもらえると嬉しいです。
ここ数年のホールアースにはなかった、女性限定のプログラムになります。異性がいるとちょっと緊張してしまったりすることもあると思うので、女性のみとさせていただければと思います。
このプログラムに参加してくれた方々の日常に、充実したme timeが増えますように!
文:小野亜季子
▶プログラムの詳細や、里山の様子、富士山麓のトレッキングの様子はInstagramで綴っています。
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