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遠くなった東京

信州にやってきて大学の同級生と最初に話すとき、出身地の話になることが多いのですが、東京出身と告げると必ずと言っていいほど返ってくるのが「シティーボーイやん!」という一言。そして気付く、自分がシティーボーイだということに。東京に住んでいた高校時代までは、同級生のほとんどがシティーボーイなわけで、そりゃ無自覚でいることも無理のない話なのですが。住んでいる地域によってものの見方は変わるんだなあ、と実感させられるのです。

さて、そんな話は置いておいて。大学入学と同時に長野・松本の地に越して来てから早2年が経ったわけですが、松本からは特急あずさに乗れば約2時間半で新宿に着いてしまうので、帰省と言っても気軽に帰ることができます。実際に去年はライブを見に行くために1日だけ帰省したり、今年に入ってからも1月から3月までの間に既に4回も帰省していたり...(何のためか知りたい方はこちらへ...笑)。まあ、何が言いたいかって松本からして東京は案外近い、という認識でいたのです。

その認識がこの春、大きく変わってしまいました。3月中旬に帰省から戻って以降、ずっと松本で生活を続けていますが、今、東京は少なくとも僕の中では帰ることのできない場所になってしまっていて。特急あずさは動いているし、それに乗れば2時間半で帰れることに変わりはないのだけれど。本当に予想もしていなかった現実が、目の前にあります。東京と、松本にいる僕との心的距離がとても長くなってしまったように感じられるのです。

遠くなっていく、東京。

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様々なところで高速化が進み、今まで遠かった場所ががどんどん近くなっていく世の中にあっても、こうして心的距離が遠くなってしまうことはあり得るんだな、ということを身を以て実感させられています。

往来ができないということが心的距離を生み、いま、各地域はそれぞれがバラバラで孤立化している状態にあるのではないかと思います。私たちの地域は私たちの地域、他は別、という。孤立化したときこそ支え合いだ、と言いたいけれど、いまは往来を控えて孤立化することが支え合うことだというパラドックス。新たな支え合いのかたちを模索するときなのかもしれません。

一方で、この難局を乗り越えて東京が再び近くなったとき、帰った先の東京の風景はいったいどのように見えるのだろうという点は、ちょっと楽しみでもあります。松本在住の者の視点で見る、コロナを乗り越えた東京の風景。昔見た東京の空と、そこの空は同じ色だろうか。同じ風はそこに吹いているだろうか、と。

それを確認できる日が来るまで、あとどれだけかかるでしょうか。

(2020.5.4)



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