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必見!世界三大疼痛とその予防法

さて本日は星の数ほどある病気の中でも特に「痛みが強い」と言われている三つの病気についてお話します。そして、その予防法にも踏み込んでいきたいと思います。

「痒い」「息苦しい」「ふらつく」「気持ち悪い」「イライラする」「眠りが浅い」・・・・

世の中には様々な症状があります。その中でも最も嫌なのが「痛い」という症状ではないでしょうか?外来をやっていても、「頭痛」「腹痛」「胸痛」「腰痛」など、様々な部位の痛みで患者さんが受診します。むしろ「痛い」という症状が出るまでみんな病院を受診しないんじゃないか?(他の症状は結構我慢しちゃってるんじゃないか?)と思うくらい「痛み」を主訴に病院に来る方は多いです。病院を訪れ重大な病気が見つかるきっかけになるという意味で、「痛み」という感覚は非常に重要な気もします。

とはいえ、やっぱり出来るなら痛い病気は避けたいですよね?今回はその中で特に痛いと言われている「世界三大疼痛」を見ていこうと思います。それは、「尿路結石症」「心筋梗塞」「群発性頭痛」の三つです。どの患者さんも実際に見たことがありますが、皆さん本当にのたうち回っています。信じられない位痛いようです。。(※他にも「胆石」「くも膜下出血」「急性大動脈解離」「三叉神経痛」などがランクインすることもありますが、概ねのコンセンサスは上記三つのようです。)

まずはどんな病気かざっくり知っておきましょう。

1、尿路結石症

尿路結石症は名前の通り、尿路(腎臓で尿が出来て、尿管という管を通って膀胱に溜まり、尿道を通って出て行く、という一連の通り道)に石が詰まってしまうことで激痛が生じる病気です。石が詰まり尿の流れが悪くなるため腎臓の感染症を起こすきっかけになったり、通り道を傷つけて血尿が出たりしますが、受診のきっかけになるのはほとんどが激烈な腹痛です(今救急外来で毎週のように診ていますが、皆さん冷や汗をかいてのたうち回っています)。

診断は背中を叩いて響く(CVA叩打痛)や尿検査での潜血、CT検査での石の指摘などで比較的容易に行うことが出来ます。治療は基本的に点滴や飲水で、尿と一緒に出すことを目指しますが、自然に出すことが難しい場合には衝撃波で石を砕く治療(ESWL)や手術(TUL)を行うこともあります。

「まあ俺はならないっしょ。」そう思いますか?

まず、尿路結石症は日本人で増えています。肥満の増加や生活習慣の変化が影響していると思われますが、2005年の調査では1995年の調査と比べて約1.6倍に増加しています。すごいペースですね。また生涯罹患率(死ぬまでに一回かかる確率)は女性で6.8%、男性ではなんと15.1%です。7人に1人が死ぬまでに一度、死にたくなるような痛みを経験していることになります。決して他人事ではないのです。

2、心筋梗塞

心筋梗塞は、心臓を栄養する冠動脈という血管が詰まることで心筋が壊死してしまう病気です。胸を締め付けられるような胸部の著しい圧迫感・胸痛が生じ、長時間持続します。こちらも相当に痛いようです(ただし高齢者や糖尿病の人では無痛性のことも少なくないという特徴があります。この点は今回は割愛)。また心筋梗塞に続いて致死的な不整脈が生じることも多く、心停止で発見されることも少なくありません。発症すると致死率は実に20%といわれる恐ろしい病気です。

診断は心電図異常や採血での心筋逸脱酵素の上昇、冠動脈造影検査などで行われます。一刻を争う病気であり、大きな病院で1秒でも早く治療に至る必要がある重大な病気です。カテーテル治療(PCI)や手術(CABG)が行われます。

「ま、万一症状出たら病院行けばいいでしょ。治療あるんでしょ?」そう思いますか?

実は急性心筋梗塞患者の14%は病院に搬送される前に心停止に至ります。そして心停止が起こるとわずか1分経過するごとに救命率は10%ずつ下がるといわれています。倒れたとき周りに緊急対応を心得ている人がいなければ助からない、本当に恐ろしい病気です。

3、群発性頭痛

群発性頭痛は数ヶ月から数年に一度、数週間以上の間ほぼ毎日決まった時間(大抵は夜間〜明け方)に目の奥をえぐられるような激烈な頭痛が生じる病気です。痛すぎて動かずにはいられない、ひどい時には壁に頭を打ち付けてしまうくらいに痛い、やばい頭痛です。頭痛と同じ側で、目の充血や鼻水などの症状が現れることもあります。

診断は検査というよりも特徴的な病歴からつけられることになります。くも膜下出血や髄膜炎など、命に関わる頭痛と鑑別をしっかり行うことも重要です。治療は基本的にお薬(トリプタン系製剤)の内服です。

「俺はまだ若いし、大丈夫。」そう思いますか?

実は群発性頭痛は1000人に1人がかかる決して珍しくない病気です。また20-40代の若い男性に起こることが多く、むしろ若者が知っておくべき病気なんです。残念なことに医者の中には群発性頭痛を見たことがない人も少なくなく、診断をつけてもらえないケースや精神科に送られてしまうケースもあるようです。これもある意味恐ろしいですね。。

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さて、ここまで「世界三大痛い」病気を解説してきました。怖いですよね。「そんな痛いの絶対いやだ」そう思いますよね。僕も絶対嫌です。なりたくなければ、予防すればいいんですよ。

ここからはそれぞれの病気について、具体的な予防法を解説していきます。

「痛いの嫌だ」という人、必見です。

1、尿路結石症

まず、そもそも「何で体の中に石なんてできるんだよ」って思いませんか?実は石にもいくつか種類がありまして、尿路結石で多いのは「カルシウム結石(シュウ酸Ca, リン酸Ca)」と「尿酸結石」の二種類(90%以上)になります。今回はこれらを予防する方法を箇条書き形式で示します。

十分な水分をとる・・・これが最も基本的な対策です。脱水状態では尿が濃縮されることで石ができやすくなってしまいます。食事以外に2L程度の十分な水分をとり、一日尿量を2L以上に維持することが予防になります。特に脱水になりやすい夏場は注意しましょう。

カルシウムを適量とる・・・「カルシウムの石なんだから、カルシウム取らない方がよくね?」って思いますよね。実は昔はそう考えられていましたが、ちょっと複雑な機序(腸管内のCaがシュウ酸と結合して便に排泄されるetc.)により、適量のCa摂取を行った方が再発率が低いというデータがあります。医学って複雑で、面白いですね。

クエン酸をとり、塩分や糖分を控えめにする・・・理由は複雑なので省略!(笑)興味ある人は別途聞いてください。

尿酸値に気をつける・・・定期的に健診で尿酸の値をcheckしつつ、プリン体の多く含まれる食品(レバーや内臓系)や過剰なアルコール摂取を避けることが重要です。「ビールはプリン体が多いからね」というのは結構知られてますが、アルコール摂取自体が血中の尿酸値を高めるリスクとなりますので、注意です。

健診で腹部エコーを受けてみる・・・腎臓をエコーでみると、腎結石(落ちてくる前の石)が結構見えたりします。実感を持って生活習慣を変えるきっかけになると思う方は受けてみてもいいかもしれません。ただし、保険医療の日本において、一般外来では無症状のうちに検査をするのは難しいので、健診施設や人間ドックで受診するようにしましょう。

2、心筋梗塞

心筋梗塞の予防とはズバリ、動脈硬化の予防とほぼイコールです。そして動脈硬化を予防するためには、「高血圧」「脂質異常症」「糖尿病」をしっかりと治療することです。塩分を控え、過剰な赤身肉の摂取を控え、甘いジュースや白米の取りすぎを避けるなど、生活習慣に気をつけることです。またこれらの原因となる「肥満」を避けるため、食事量に気をつけつつ適度な運動を行うこと。そして、「禁煙」することです。

あーなんてシンプルなんでしょう。

勿論、「人は病気にならないために生きている訳ではない」ので、何でもかんでも完璧を目指す必要はないと思います。

しかし、自分の身体の状態やリスクを適切に把握し、我慢できるものは我慢する。健診で異常を指摘されたら、しっかり医師に一度相談する。心臓が止まってしまう前に、可能な治療はしっかり受ける。

これが最大の予防です。何度も言いますが、別に難しいことは何もありません。ただ、各自の意思の問題なのです。

例えばタバコ。今から禁煙でも全く遅くありません。喫煙者が禁煙すると、心筋梗塞の危険はほぼ非喫煙者と同等まで下がると言われています。「やめようかな?」と思ったあなた。今日から是非スパッとやめてみましょう。きっと10年後の自分が今日の自分に感謝していると思いますよ。

3、群発性頭痛

さて、この病気に関してはそもそも病態自体がはっきりとは分かっておらず、「誰がなるか分からない」というのが実情です。しかし、一度起こった場合に再発を防げる可能性はあります。

群発性頭痛は先ほどお話した通り「数日間連続して起こる」ため、症状がで始めたら少しでも早く診断し、翌日以降の発作を抑えることが重要になります。ではどうすればいいか?それは、アルコール摂取を控えることです。

群発性頭痛の発作期にアルコールを摂取すると、ほぼ100%症状が生じてしまうと言われています。群発性頭痛が疑われている時は、たとえ症状が一時的に落ち着いているとしても数週間お酒を控えることが予防になります。これも実にシンプルですね。

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さて、今回は世界で最も「痛い」と言われる三つの病気とその予防法を見てきました。どれも怖い病気ですが、敵をしっかり知っていれば手をうつことは可能です。

ただ、「すげえ地味・・・」って思う人も多いでしょう。そう、予防って地味なんです。けど、すごく大切なものなんですよね。各自の自己責任と言えばそれまでですが、これからは健康に気をつけることが「楽しい」とか「価値がある」と思えるような仕組みを作っていくことも必要かもしれませんね。

今回の記事が、ほんの少しでも生活習慣を見直すきっかけになったら嬉しいです!

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