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2021年の健康経営を概観~人もしくみも変化し続ける~

2021年は、コロナ禍での経済活動が2年目となって、企業活動のあり方も、社会の暮らし方も、再構築が進んだ年でした。
これまでご紹介した記事をふまえつつ2021年を概観してまいりましょう。

2021年によく読まれた記事

2021年によく読まれたのは、実務的な情報記事では、健康管理の基本・健康経営度調査、コラム記事では、Well-being・人材投資戦略でした。

実務的な情報記事でよく読まれたもの

コラム記事でよく読まれたもの


健康経営の進め方の基本となる健康管理と、その本質として押さえておきたい考え方の Well-being の概念や人的資本への投資のあり方に注目が集まっているといえるでしょう。

コロナ禍の活動は一過性でなくなった

2020年初頭からの新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、社会は一気に「新しい生活様式」への転換を迫られました。
フィジカル(現実)の関係が保てなくなり、事業継続の危機に晒された多くの企業が、テレワークをはじめとしたデジタルコミュニケーションへと大きく舵を切りました。

デジタルへのシフトは一時的な回避策とはならず、パンデミックの波が何度も押し寄せて長期化する中、環境の変化に対し、柔軟に対応できた企業と、できなかった企業との差が拡大しているようにも見受けます。

変革を迫られたのは個人も同じです。コロナ禍で急速に拡大した非接触でのコミュニケーションは様々なデジタル技術を前提に展開しています。そしてその利便性や新しい行動様式に順応しつつあります。
コロナ環境下の生活は2年目となり、一過性の代替策ではなくなってすでに新しい価値を生み出し、固定観念を変化させています。もはや以前の状態には戻らないでしょう。

2021年9月に内閣府が公開した「満足度・生活の質に関する調査報告書」で個人と社会全体が満たされた状態(Well-being)を実現するための鍵を握るのは人との関わりかたであり、今後デジタル化・オンライン化でさらに変容していく可能性があることをお伝えしました。


VUCA時代の健康経営は「SX」

コロナ禍だけではありません。気候変動など企業経営を取り巻く環境は不確実性を増す一方です。デジタルシフトが進んだことにより、災害時などの非常事態への対応も、一過性のものとして復旧対策を立てるのではなく、平常時と地続きで事業継続を図るレジリエンスの必要が高まっています。

この2年間で加速したデジタル化もあり、商習慣やビジネスモデル、インフラ構築のあり方やセキュリティ対策など、企業の事業構造も急速に変化し、経営課題が一気にあぶり出されたともいえるでしょう。
企業も社会もサステナビリティを重視する時代に入っています。

新しい環境の変化に合わせてビジネスをすばやく変革し続け、しなやかに生き続けるための企業文化の変革、SXが求められています。
変化し続ける社会事象を的確に捉え、すばやく変化し続けるために不可欠なのがDXといえるでしょう。


DXの推進の要となるのは「しくみ」と「人」

経済産業省がまとめた「DXレポート2」によると、2020年10月時点でDX推進への取組状況を分析した結果、回答企業500社の9割以上がDXに取り組めていないことが明らかになりました。
背後に存在する回答を寄せていない企業の多さを踏まえると、DXはまだまだ浸透しきれていない様子がうかがえます。

DXレポートによるメッセージは正しく伝わっておらず、「DX=レガシーシステム刷新」、あるいは、現時点で競争優位性が確保できていればこれ以上のDXは不要である、等の本質ではない解釈が是となっていたとも言える。
一方、2020年に猛威を振るった新型コロナウイルスの影響により、企業は事業継続の危機にさらされた。(中略)これまで疑問を持たなかった企業文化、商習慣、決済プロセス等の変革に踏み込むことができたか否かが、その分かれ目となっており、デジタル競争における勝者と敗者の明暗がさらに明確になっていくことになろう。

経済産業省「DXレポート2中間とりまとめ(概要)」より

健康管理のデジタル化

DXレポート2では、今後企業がただちに取り組むべきアクションとして、「業務のオンライン化」「業務プロセスのデジタル化」「顧客接点のデジタル化」に加え、「従業員の安全・健康管理のデジタル化」が重要であるとしています。

従業員の安全・健康管理のデジタル化に向けては、現場作業の安全確保に加え、健康管理などの可視化による効率的な環境整備や、従業員の不調・異常の早期発見を推進するよう示しています。

DX推進の3段階とデジタル化のしくみ

DXレポート2が示すDXの推進指標では、企業が具体的なアクションを設計するために、DXを次の3つの段階で整理しています。

  • デジタイゼーション(Digitization)
     アナログ・物理データのデジタルデータ化

  • デジタライゼーション(Digitalization)
     個別の業務・製造プロセスのデジタル化

  • デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)
     組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化
     “顧客起点の価値創出”のための事業やビジネスモデルの変革

そして、3つの段階ごとに、DXを進める体制の整備、プラットフォームのデジタル化、業務のデジタル化、製品・サービスのデジタル化、ビジネスモデルのデジタル化が必要と説いています。

経済産業省「DXレポート2中間とりまとめ(概要)」より
DX成功パターンの策定 DXフレームワーク


DX人材の育成を

さらに、企業のDXを牽引する要素として「DX人材」の存在が不可欠だとし、社会全体としての学び直し(リカレント教育)のしくみの整備が必要と説いています。DXレポート2では、DX人材を次のように定義しています。

自社のビジネスを深く理解した上で、データとデジタル技術を活用してそれをどう改革していくかについての構想力を持ち、実現に向けた明確なビジョンを描くことができる人材

経済産業省「DXレポート2中間とりまとめ(概要)」より


これからの健康管理は、単に情報をデータ化して整理するでなく、変化し続ける社会課題へすばやく対応し、企業の存在そのものを変革させるDXの実現に向け、データの一元的管理とデジタルプラットフォームの整備、また、常に生じる変革へ柔軟に対応し持続的にアップデートする人材確保が要となるでしょう。

これからのDXは、「しくみづくり」と「人づくり」が大きな鍵を握っているといえそうです。


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