【コロナ禍の健康管理5】この1年間で変化したESG投資 その関心の内訳
~なぜ健康経営が投資価値として注目されるのか~
前回の記事で、世界の企業価値の評価が人材へと向かっているという話をいたしました。
具体的に、企業への投資という側面から、企業価値が今どこに置かれているのかについてみていきましょう。
ここでのキーワードは「ESG投資」です。
ESGは投資リスクを明確にする
世界の動きは、従来型の財務情報を重視した投資から、企業の持続可能性を視野に入れたESG投資へと移ってきています。
定量的な財務情報の必要性はすでに当たり前。定性的な非財務情報が重要な要素になっているのです。非財務情報の指標として、これまでSRI(社会的責任投資)が中心でした。
SRIでは倫理的価値観が重視され、財務事情と並行して企業のもつ社会的・倫理的価値観をみて投資家の期待を反映させる傾向にありました。
歴史的な流れをみると、1920年代は倫理的価値観に基づく投資、1960年代社会問題を意識した投資、1990年代以降は環境問題に配慮した投資がトレンドでした。
人生100年時代における資産形成が必要な現在、近年の社会問題に対する要望を踏まえつつ、企業の持続的成長を考慮した形で企業活動をみる傾向にあり、より具体的で長期的な活動を明らかにする必要が高まっています。
ESG投資はその延長上にあります。
持続可能性を問うESG投資のきっかけはSDGsにあります。
SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年に国連で定められた「持続可能な開発のためのアジェンダで、2030年までに達成を目指す17の目標が掲げられており、国を挙げての大きな取り組みがなされています。
ESG投資では、SDGsが掲げる目標を経営戦略に組み込むことにより、企業価値が持続的に成長すると考えます。
これまでは財務状況や市場の動向を参考に、倫理側面を考慮した比較的短期的観測から投資判断が行われてきたものが、今は世界規模、長期的な視野で持続可能な活動を考えなければ企業の存続そのものが危ぶまれ、投資リスクが高まると考えられているわけです。
ESGは、投資リスクを明確にするための指標ともいえます。
ESG投資のトレンドは「S」にある
ESGとは、次の3つの観点に整理されます。
E:環境(Environment)環境問題対策やエネルギー対策など
S:社会(Social)労働条件の適正化や人権対策、多様化推進、地域貢献など
G:ガバナンス(Governance)情報開示や法令遵守、不祥事回避など
簡単にまとめると、ESG投資により、社会と環境の問題への取り組みと企業統治が持続可能な企業の利益を生み出すと考えるわけです。
この中で、今注目されているのは「S(Social)」の観点です。
ESG研究所の「ESG投資実態調査2020」によると、2020年度に重視するエンゲージメント(投資家から投資先企業への積極的な働きかけ)テーマの2位に「労働慣行(健康と安全)」が入りました。
(出典:ESG研究所「ESG投資実態調査2020」P21より)
「気候変動」は全体で94%、1番めに重視するものとして1位になっています。これに対し、「労働慣行(健康と安全)は全体で62%、2番めに重視するものとして1位となりました。また、「人権」も全体で3位、2番めに重視するものの2位になっています。
気候変動などの環境課題への対策はもはやあたりまえの領域になっており、これからの投資傾向は健康や安全といった労働慣行や人権などの社会的側面、特に人への対策を重視するようになっていることがみてとれます。
コロナ禍で企業に求められるのは人的資本の強化
ESG投資の中で社会的側面、特に人的資本への投資に注目が進む中、今後重要視すべきなのは、人材をリソースとして扱わず資本として扱う視点です。
人的資源(Human Resources)は資源ですから、使うと目減りします。一方、人的資本(Human Capital)は資本。投資により価値を高めていくことができます。
もちろん投資なので、かけたコストに見合ったリターンが必要です。目的を定め、成果を測定する人材戦略が不可欠です。
人材を資源ではなく資本としてとらえ、働き方を変える仕組みを構築し、価値を高めていくことが重要になります。健康管理は、人的資本の価値を高める際の質的向上を測定する鍵となります。
人的資本へ注目が集まっている要因には、コロナ禍をきっかけにして企業内の活動において労働慣行に関する課題が明確になってきたことも大きいと考えられます。
例えばテレワークへの移行など企業の業務形態が大きく変わる中で、これまで見えていなかった職場の課題が浮き彫りになるなど、企業価値を評価する上で労働慣行に関する要因が外せなくなってきているのです。
先に紹介したESG研究所の「ESG投資実態調査2020」によると、コロナ禍における企業活動で重要とみなす上位に、健康管理を含む働き方改革の推進と持続可能性を高めるためのビジネスモデルの再構築が挙げられています。
(出典:ESG研究所「ESG投資実態調査2020」P31より)
ESG投資のトレンドが、健康管理のしくみを整備して企業体制の再構築を図り、人的資本を強くする企業活動に注目していることが伺えます。
次回は、具体的な人的資本の確保戦略について解説します。
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株式会社WellGoでは、ESG/SDGs時代における人材への投資戦略としての健康経営について、ウェビナーを開催いたします。
開催日時:2021年1月25日(月)12:00~13:00
開催方法:Zoomウェビナー(無料/事前登録制)
タイトル:ESG/SDGs時代におけるWell-being経営とは
~次世代の経営人材と産業保健人材の連携に向けて
第一部 笹原英司 氏 講演
第二部 石川善樹 氏 講演
第三部 パネルディスカッション
概要:
ESGが市場を席捲する中、米国では「人的資本情報の開示」が上場企業の義務となった。国内でも昨年「人材版伊藤レポート」が公表されたことが記憶に新しいが、今後の経営人材に求められるアクションとは何か、欧米のヘルステック事情に明るい笹原英司氏を講師に迎え、欧米企業の取組事例を基に迫ってゆく。また、予防医学研究者として有名な石川善樹氏も参加。ポストSDGsも見据え、ダイバーシティを生かすWell-being経営について、独自の切り口で提唱予定。
講師プロフィール
笹原英司氏
在日米国商工会議所 ヘルスケア委員会副委員長(デジタルヘルス担当)
欧米の最新ヘルスケア・テクノロジー情勢に詳しく、ヘルステック領域での講演実績多数
石川善樹氏
予防医学研究者、公益財団法人 Wellbeing for planet Earth 代表理事
近著は『フルライフ』(NewsPicks publishing)、『考え続ける力』(ちくま新書)など
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URL:https://zoom.us/webinar/register/WN_AyHamkF0Qn-D_pv_ilCYww