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予防接種とワクチン⑥ 副反応・有害事象

ワクチンについて学習してきたが、今日で最後。
ワクチンには高い安全性が求められることについては以前書かせてもらっている。(③ワクチンギャップ
ここをもう少し詳しく勉強する。

■「副作用」「副反応」「有害事象」

なにか薬剤を投与した後、本来の狙いではなく生じる事象を「副作用」「副反応」という。どちらも英語では”side effect"である。

「副作用」は、投与薬剤そのものが作用する症状。
「副反応」は、投与薬剤が引き起こした生体反応による症状。

ややこしいし線引も難しいが、ワクチンの場合は後者を使用する。

副作用・副反応は好ましい(有害ではない)場合もある。
例えば、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬と呼ばれる降圧剤がある。詳しくは割愛するが、投与の際の目的は基本的には血圧を下げる作用が期待されている。
一方で咳が出やすくなる作用もあり、空咳が副作用として有名である。これは、嚥下と咳を司る神経伝達物質の1つ、サブスタンスPの分解をACE阻害薬が抑制しているためである。この作用を逆手に取って、高齢者に誤嚥予防として使用されることがある。
この場合、副作用は好ましく働いていることになるだろう。

「有害事象」は、薬剤投与後に起きた好ましくない有害な出来事すべてを指す。ワクチンを接種したあとに転んで怪我をしても、臭い放屁がたくさん出ても有害事象となる。因果関係は問わない。
ワクチン接種後の接種部位の痛みは因果関係がありそうだ。これは「有害事象」であり「副反応」といえる。
大体の副作用・副反応は有害事象に包含される。

ワクチンの副反応は接種部位の「局所反応」と、「全身性反応」に大別される。

■局所反応

局所反応は不活性化ワクチン・トキソイドで生じやすい傾向がある。これはアジュバントが添加されているからだ。(⑤ワクチンの組成
アジュバントにより炎症反応が強く引き起こされる可能性がある。もちろん、アジュバントの入っていない不活性化ワクチンや生ワクチンでも局所反応はある。

局所反応には、接種部位の「疼痛、発赤、腫脹、熱感、末梢性神経疼痛」などがある。
接種部位にもよる。筋肉注射では疼痛や可動時痛、皮下注射では腫脹、発赤、疼痛が出やすい。

一般的に接種後すぐから2日以内に発症して、1-7日間症状が続く

■全身性反応

全身性反応は局所反応に比べて頻度は少ない。

症状としては「発熱、頭痛、倦怠感、関節痛」などがあり、一般的には摂取直後から2-3日で出現し、数時間から2日で治まる

重篤なものもあり、アナフィラキシーやギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)などの報告もある。これらは明確な因果関係がわかっていないものが大半であり、頻度も低い。

■全身性反応(生ワクチン)

生ワクチンによる全身性反応は、接種後しばらくしてから出現することがある。
これは摂取する対象となる疾患の潜伏期と大体同じであり、症状も似てくる。麻疹ワクチンなら発熱と発疹、風疹ワクチンなら発熱、発疹、リンパ節腫脹などである。これらは軽症で、感染性もほぼないと考えられている。

従って、「生ワクチンを摂取したときは次のワクチン接種までには27日以上、不活性化ワクチンを摂取したときには次まで6日以上空ける」(予防接種に関するQ&A)となっている。
副反応の発現時期が異なるのが理由の1つである。

■副反応が生じたら?

大抵の副反応は軽いもので時間の経過とともに改善されるので原則治療の必要はない。

もし重篤な副作用が生じた場合には救済給付制度があるが、対応先が「定期接種」か「任意接種」かで異なる。(①予防接種法

定期接種の場合、予防接種健康被害救済制度(厚生労働省)に基づいて救済給付がなされる。これは居住地の市町村に申請することになる。

任意接種の場合、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が行う医薬品副作用被害救済制度による救済給付がなされる。これは直接PMDAに対して請求する。

いずれも診断書などの書類が必要となる。各窓口での相談の上、医師に書類を書いてもらおう。


以上、ワクチンを勉強してきた。
最近はインフルエンザワクチンの助成などの話も出てきている。

周囲を守るためワクチン接種を!


<予防接種とワクチン>
① 予防接種法
② インフルエンザ
③ ワクチンギャップ
④ 麻疹と風疹
⑤ ワクチンの組成
⑥ 副反応・有害事象


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