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予防接種とワクチン① 予防接種法

今年はすでにインフルエンザの予防接種に関する記事が出てきている。
言わずもがな、コロナウイルスの影響だ。

記事では今年は特にインフルエンザの予防接種が重要だと書かれている。
COVID-19と併せての流行は避けなければならない。
現在、インフルエンザ流行期に入っている南半球ではそれほどインフルエンザは流行していないようだが、4-5ヶ月後の北半球はどうなっているかわからない。

そこで、改めてワクチンによる予防接種について勉強していきたいと思う。

今日は予防接種法について。

■予防接種法

予防接種法は1948年に制定されている。
当時は環境衛生も悪く感染症が蔓延していたこともあり、この対策のために国民に対し予防接種を義務付けるものだった。

ここから、予防接種の普及、医療の進歩、公衆衛生の向上などから感染症がそれほど驚異ではなくなり、1994年に法改正が行われた。
この法改正では大きく3点変更された。

①予防接種は努力義務(勧奨摂取)
それまでは接種義務があったが、「受けるように努めなければならない」という表現に変わった。これにより、個人の意思で予防接種を受けない権利が確保された。

②有効かつ安全な予防接種体制の整備
集団接種から個別接種化となり、接種前予診の徹底、国民や医師への情報提供が推進されるようになった。

③予防接種による健康被害に対する救済制度の充実
予防接種の影響と考えられる健康被害が生じた場合、一定の手続き・審査ののちに、被害の程度に応じた見舞金、医療費、年金などが支払われるようになった。

その後も感染症の状況や社会情勢から何度か改正があり、現在に至っている。

■分類 A類疾病とB類疾病

A類疾病は主に集団予防を目的としている。本人または保護者に努力義務が生じる。予防接種法では下記の疾病が指定されている。

…「A類疾病」とは、次に掲げる疾病をいう。
一 ジフテリア
二 百日せき
三 急性灰白髄炎
四 麻しん
五 風しん
六 日本脳炎
七 破傷風
八 結核
九 Hib感染症
十 肺炎球菌感染症(小児がかかるものに限る。)
十一 ヒトパピローマウイルス感染症
十二 前各号に掲げる疾病のほか、人から人に伝染することによるその発生及びまん延を予防するため、又はかかった場合の病状の程度が重篤になり、若しくは重篤になるおそれがあることからその発生及びまん延を予防するため特に予防接種を行う必要があると認められる疾病として政令で定める疾病

「三 急性灰白髄炎」はポリオのこと。

B類疾病は個人の発症または重症化の予防を目的としている。予防接種を受けるかどうかは、各人の裁量による。努力義務もない。

…「B類疾病」とは、次に掲げる疾病をいう。
一 インフルエンザ
二 前号に掲げる疾病のほか、個人の発病又はその重症化を防止し、併せてこれによりそのまん延の予防に資するため特に予防接種を行う必要があると認められる疾病として政令で定める疾病

■定期接種と任意接種

日本では、主に子供たちや高齢者にできるだけ受けてもらいたい予防接種「定期接種」として定めている。自治体から対象者に案内が届くようになっており、接種が強く勧められている。

A類疾病は主に子供が対象で、国や自治体の負担により原則無料である。
B類疾病では高齢者向けのインフルエンザ・肺炎球菌ワクチンが対象である。

対して「任意接種」には、疾患発生数が少ないもの、症状が軽度であるもの、開発されたばかりのもの、公費として予算が確保されないものなどがある。

ところで「定期接種」とされている予防接種は絶対受けないといけないのか?
法律による強制力はなく、何らかの事情により予防接種を受けられないケースもあると思われる。しかしながら、自由に受ける・受けないを決めて良いということではない。個人の問題に終わらないからである。

■予防接種の目的

◎予防接種は個人を守る
一人一人が感染症に罹らない、重症化を防ぎ健康を守ることが、わかりやすく重要な目的である。
ワクチンの中には、感染症の抑制だけでなく、感染症から癌になることを防ぐ目的のものある。

◎予防接種は集団を守る
個人の免疫がつくと、集団(学校や職場など)への蔓延が防げる。集団内の感染症発生数がぐっと減ることで社会全体を守ることができる。

◎予防接種は次世代の健康を守る
一人一人を感染症から守ることで次の世代の健康を守るワクチンがある。
例えば、風疹は症状としては軽い感染症だが、胎児に影響を及ぼし先天性風疹症候群が発生する。これは女性だけの問題ではなく、女性への感染源となる男性も予防が必要で、風疹ワクチンは男女区別なく接種される。

◎予防接種を受けていない人も守る
集団内で多くの人が免疫を持つことにより感染症が流行する機会は少なくなる。そうすることで、持病などで予防接種を受けられない人も結果的に守ることができる。

したがって、予防接種、特に定期接種は「特別な事情を除いて強く推奨されるもの」である。

■予防接種が目指すもの

予防接種は最終的に根絶を目指している。
天然痘のように。
現在最も近づいているのはポリオ、次に麻疹風疹だろうか。
国際社会への貢献という意味においても予防接種は重要なのだ。


参考:予防接種法


<予防接種とワクチン>
① 予防接種法
② インフルエンザ
③ ワクチンギャップ
④ 麻疹と風疹
⑤ ワクチンの組成
⑥ 副反応・有害事象


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