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対談「『難民から人材へ』のスキームを生みだすまで~現場から見えてくる課題と可能性~」 イベントレポート

 WELgee設立5周年キャンペーンとして、4月3日(土)にWELgee職員の対談が開催されました。

 就労伴走事業の山本、キャリアコーディネーター坂下、武居が日本初の「”難民特化”の伴走型人材紹介サービス」JobCopassの事業開発の秘話や、難民の人材に伴走をする現場から見えてきた課題・可能性について語りました。

▼当日の流れ▼
・登壇者自己紹介
・就労伴走事業部、事業内容(JobCopass)紹介
・これまでの変遷
・対談


 当日は、登壇者3人の自己紹介、JobCopassの事業紹介、そしてこれまでの変遷に沿って対談が進んでいきました。

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(当日資料より)

試行錯誤の日々、そして坂下のJoin

 学生であった代表渡部と山本で試行錯誤の日々を経て、奇跡的に1件目のマッチングが成立。その直後、現在WELgeeでキャリアコーディネーターとして活躍している坂下が、インターンとしてJoin。

 坂下は元々難民支援に興味を持っていたところ、友人からWELgeeの存在を教えてもらいインターンに応募。しかし、Joinして三ヶ月くらいは何をやってるのかよく分からない状態だったと言う。当時は、WELgee代表の渡部がフランスでグローバル・コンソーシアムINCO主催『Woman Entrepreneur of the Year Award 2018 (2018年女性起業家アワード)』で、グランプリを受賞した直後。その授賞式の後に、渡部と山本でパリやベルリンの難民支援の活動を視察して強烈に刺激を受け、「日本でも全てやりたい!」と実績もノウハウもないまま夢中で色々と考えている時期だった、と山本。

坂下「半年経ったころから人材紹介の事業に携わっていきました。市場のニーズ、在留資格、ビザなど何がポイントになるか分からない状態からでしたね。WELgeeと協働してくださるサポーターやプロフェッショナルの方々に助けて頂きながら、一歩ずつといった感じでした。」

「難民本人が何をしたいのか?」を考えたと言う山本。母国でしたかったことや母国で生み出したかったインパクトをまず日本で生み出したい。だから「起業したい」「アフリカと日本を繋げい」という想いがある。その一方で、それを実現するためには乗り越えるハードルがとても多かった。
 最初のハードルは、在留資格。現在WELgee顧問行政書士である長岡氏に出会い、まずはWELgeeとしてやりたいことを熱く話したことをとてもよく覚えている、と言う山本。長岡氏から「熱い想いはよく分かった。しかし、在留資格というハードルがある」とお話があり、在留資格に関する知識をゼロから教え込んで下さったそう。
 渡部や山本がベルリンやパリで見た支援の在り方は、難民がすでに政府から難民認定を受けている、という前提があった。しかし一方で、日本での難民は難民申請中の方がほとんどで、法的立場がかなり不安定なことに気付いたという。

坂下「長岡さんのサポートがなければ取り組めていなかった。それほど在留資格はボトルネックになっていましたね。何年も先を見据えた長期目線でのアドバイスは感謝しかありません。」


「With/ともに」の精神

 人材マッチングのとして、最初は農業を考えていたという。日本社会における労働市場の社会課題に目を向けると、農業・林業・建設現場などが一般的に外国人労働者のニーズがあり、それは日本に限らずベルリンやパリも同様。しかし、「ニーズがある一方で、ビザ得られないため難民の法的な安定性は担保できない」と山本。悩んでいた時に、長岡氏から「ホワイトカラーの職業でマッチングしよう」とアドバイスを受けたことが転機となった。

山本「長岡さんのアドバイスが泣ければ全く違う事業になったいたはず。」

 坂下も、より多くの難民をエンパワーしていくことができ、また本当に顕在化していくことは何なのか、長岡氏は気付かせてくれたと言う。

山本「当時最も意識していたのは、当事者よりも当事者を理解すること。難民が仲間だからこそ、想いだけで動くのではなく法的制度の面で不安定な状況をどうやって打破していけるのか。知識を身に着け情報提供し、一緒に走るという『WITH/共に』の精神です。WELgeeをチームメンバーとして受け入れて下さる企業の存在も大きかった。」

 受け入れて下さるパートナー企業は、いわゆるイノベーターに分類される方々だ、と坂下。志・人間として大事だから採用をしたいと言って下さり、お客さんにとどまらない関係性があるそう。また、山本も、「難民を人材として受け入れることは法的に不可能」と言われていた時期にWELgeeへ真摯にむきあってくれた方や企業へ繋げて下さった方は、自分事としてWELgeeのビジョンに共鳴してくださる方が多かった、と話す。

実例として大川印刷の大川社長との出会いをシェア。

 大川社長に初めてお会いした時、難民の状況を理解した上で、すんなり受け入れて下さったことをよく覚えているという坂下。メリット・デメリットを取り払ってそれ以外の部分で繋がっていると強く感じた、という。山本も「パッションの共鳴の様なものがある」と話す。

山本「"自分事"としてWELgeeのビジョンに共感してくれる人が多かった。互いにhappyがうまれるワクワク感があった」

 そして、2019年夏JobCorpassはまた大きな転機を迎える。
 ヤマハ発動機さんでの一般採用選考を経て難民人材が採用。「人材マッチングサービスとしての自信となった」と山本。そして、企業としてどんな部分をマッチングサービスに期待するのか、期待以上のものを提供したい、と考え始めるきっかけにもなった、という。
 そして、JobCopassのさらなる進化のため新たなチームメンバーを迎えたいと考えていたところ、友人からの紹介で武居がJoin。

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(対談の様子)

スキームをサービスとして企業さんに伝えていく

 武居は「難民の外国籍、という人材への興味があった。そして、その人材のマッチングという大変な事業を20代の若者がやっている。素直に会ってみたい、と思いました。」と話す。一方山本は、難民支援という観点ではなく、アフリカ進出している企業に難民の人材が適任なのではないか、と話してくれたことが強く印象に残っているという。

武居「難民というより、難民の外国籍の方を通して世界を広げられるのではないか。日本にも貢献することでお互いにハッピーになれるんじゃないか、と考えました。」

 自身のことより社会へのビジョンが強いなど難民の特性を含め、企業とのマッチングが楽しみという武居の姿勢が嬉しかった、と山本。一方、武居も「実際にWELgeeのメンバーに会って『仲間を見つけた!』という衝撃的な縁を感じました。パッションの共感のようなものでしょうか。」と話す。


難民の人たちの挫折について

 キャリアコンサルティングの経験がある武居へ一般的な人材紹介とJobCopassとの違いを聞いてみると、「一般的なマッチングの方法は、広告で人材を募集してカウンセリング、そして企業の求人票からマッチングという流れで期間は1~2ヶ月、長くても半年。でもWELgeeの場合は1〜2年、長くても3年もかかる長期伴走をし、マッチング後も難民はもちろん企業とも伴走している。これはクライアントというより仲間というスタンスを大事にするWELgeeならでは、そして信頼があってこそ。」と話す。

 しかし同時に「長期伴走していると自分達も安定した状態で、相手の心情を読み取りながら寄り添うのは難しい部分でもある」と坂下。
 難民申請して半年間は就労できない期間がある。その間支援がない場合も多い。「キャリアなんて考えられない。生きていくことで精一杯」という状態で出会い、良い時も悪い時も共に歩んでいく3人。希望を持ったとしても、言語や難民申請中ということが大きな壁となり、実際就労許可がおりて就労しようとすると就労先を見つけられなかったり、、、難民同士でも「ビジョンや夢を考えるだけ辛い。考えない方がいい」と諦めの言葉がでてくるほど厳しい現実が待ち構えている。また、ワーキングプア状態になることもあり、「何のために生きてるのか?何がやりたいんだろう?」と自身のアイデンティティが分からなくなったりもする。それを一貫して伴走しているのが就労伴走事業部。

坂下「その様な状態になったときにWELgeeとして何が提供できるのか。挫折しているときにWELgeeができることは、ゆっくり対話していくこと。」

 ぶつかることは沢山ある、と三人が頷く。しかし、一番ぶつかり合った人から「仲間のあなたたちだからこそ本音で話せる」と言葉をかけられたことを、とてもよく覚えているという山本。

山本「調子がいい時だけの関係ではなく、”Family”という関係を構築できている」

 坂下も「仕組みとしての生活、働くことは勿論大切だがそれ以上に、人としての繋がりが実は生きていくうえですごく大切だと感じている」と話す。かけがえのないことを今やれている実感があるという。

山本「就労伴走について綺麗にストーリーがまとまっているように見えるが、曖昧な世界でどう前進していけるのかをWELgeeは常に試行錯誤している」

 武居は、「WELgeeのメンバーは巻き込むのが上手い。年齢の差を感じさせないフラットな関係があり、一つのビジョンに向かって活動しているのが面白い部分だ」と話す。山本は、「本当にピュアな想いで共感し、年齢や大企業の役員などの立場を超えて仲間意識を持って参画してくれる方たちがいることが嬉しく、まさにCo-Creatioonがあると感じている」という。

Sempai Sessionについて

 山本は、「WELgee内のフラットな関係が難民の仲間たちにも伝わっていて、そこから生まれたのがSempai sessionだ」と話す。

山本「難民の人が自分の原体験をもとにロールモデルとして、仲間に伝えていくSnpai sessionが難民同士仲間としてのコミュニティが自発的に生まれてきて、とても嬉しい。難民自身がアンバサダーとなってくれていて、誰もが活躍できる社会をつくっていこうといううねりを感じている」

 坂下も「WELgeeに関わることで、新しい活動のアイディアが生まれてきている。これからさらに新たな広がりが生まれるのではないか」と期待を込めて話す。

対談を終えて

武居「改めて今までの歩みを再確認し、試行錯誤、手探りの中で今までを創ってきた。これだけで感動しているし、私自身が今Joinしていることに感謝している。」
坂下「目の前にはワクワクしかない。集まっている人たちの志がぶれずにある。面白そうと感じた人がどう関わって伝播していくか肝がなのではないだろうか。カオスから始まったが、そこから整えつつもカオスを残し進んでいきたい」
山本「WELgeeには今の悲惨さに挫けないというポジティブな精神がある。やっと整いつつある型が、今後どう波及していくかというワクワクを感じている。」

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★こちらから当日のライブ動画を視聴できます。
是非ご覧ください
https://fb.watch/4GpCXM6cWL/

★Jobcopassの最前線! 
「就労伴走事業部密着企画!〜クリスさん×ネントリーズ社 前編〜」
https://note.com/welgee/n/n86fd576bb056
(*後編については近日公開予定)

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