国家の債務は安保上〝最大の脅威〟 日本よ、目を覚ませ|【WEDGE SPECIAL OPINION】政府、分科会、首長よ コロナ対応の転換から逃げるな[PART3]
「財政赤字を出してはいけない本当の理由は、自分たちの子どもや孫、あるいはそれが誰であれ未来の納税者に、私たちが今やりたいことの請求書を付け回すことがフェアではないことにあります」
米国の財政を監視する独立財政機関、議会予算局(CBO)初代局長で元米連邦準備制度理事会(FRB)副議長でもあったアリス・リブリンは、「I・O・U・S・A」(A・ウィギンほか著、2008年)の中で財政赤字の本質的問題をこのように指摘した。
国債を長期化させながら借金の返済時期を先送りすれば、今の世代は増税や歳出カットを回避できる。しかしそれは将来世代への「借金のツケ回し」になる。
赤ん坊が生まれた瞬間に前の世代が作った国の借金を背負わされてしまう現象を「財政的幼児虐待」と財政学者は呼ぶ。急速に人口が減少していくわが国の場合、先行きの1人あたりの「虐待度」は自ずと大きくなる。それが酷くなるにつれ、才能ある若い人々が日本を捨てて出て行く恐れがある。
下グラフの横棒は、政府債務残高の経済規模(名目国内総生産〈GDP〉)比を表している。日本政府の借金は01年時点ですでに高水準だったが、この20年でさらに膨張した。左側の国・地域名の右に記載した「%」は、同期間の実質経済成長率である。日本はこんなに財政資金を使ってきたのに12%しか成長していない。
日本の債務残高は他の先進国に比べ圧倒的に多い
対照的に、アイルランド、スイス、スウェーデン、台湾は、政府債務の水準が遥かに低い、またはその経済規模比を縮小させつつも高成長を遂げている。IT系やバイオ系産業の目覚ましい伸びがそれらの経済を牽引してきた。
スウェーデンの人々は財政規律に非常に厳しい。国債を安易に発行していたら必ず破綻が来ると彼らは信じているからである。財政支出を抑制するため、高齢者への延命治療は原則行われていない。そこまでして確保した貴重な財源は、……
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