ミッドライフクライシスを自覚しながら楽しむということ


A2Z / 山田詠美
久しぶりに恋愛小説を読んだ。
「大人の極上の恋愛小説」という謳い文句である。
1999年に小説現代に掲載されたのち刊行ということで、時代はまだ景気が良い頃の話である。
コンセプトは少しダサいのだが、恋愛小説としての内容は面白かった。

主人公は35歳既婚の女性。
バリキャリで子どもがおらず仕事に恋愛に打ち込む女性像は、あの時代確かに周りにたくさんいたと思う。

主人公には同業の夫がおり、夫に若い彼女ができたと。
しかし離婚する気はなく、恋愛の相談を主人公の妻にまでする始末。
一方、主人公の妻にも新しく10歳年下の彼氏ができて、新鮮な恋愛を楽しむというものである。

まわりにもありがちなのだが、仕事ができる妙齢の女に限って年下の「夢を追いかけてます」系の男を囲う現象が起きる。
お金はあるから、うぶな可愛い男がいて体力のあるセックスしてくれるだけで満足のようだ。
これは私の中で「オヤジ化現象」と呼んでいる。
これが50がらみの女性ならもう好きにしてくれと思うばかりであるが、
ことこの小説の主人公に関しては35歳というギリギリの年齢である。

ギリギリというのは出産できるか否かという点においてだ。

特に頭が切れて、容姿にも自信のある女は30代になると仕事で認められ給料も増えるため、お金の心配はないし、美貌も体力もあるとなると一番調子に乗って楽しい時期なのだ。

わかるがしかしこのまま絶好調という時代が続くわけはない。
悪いことは言わない。
恋愛ができる女性は35までに子どもを産んでおくのだ。
恋愛経験が豊富な女性は子どもを育ててからでも恋愛は楽しめる。
アラフィフ以降でも。

非常にモテるであろうこの主人公の夫は結局若い愛人と別れ、主人公もまた若い彼氏と別れて元の夫婦へと戻っていく。

私の友達にやはりセカンドパートナーがいる女がいて、その夫婦もこの小説に夫婦に似ていて、結局はお互いのことをよく知っているため、それ以上のパートナーなんて見つからないだろうという気持ちがあるのか、妻のセカンドパートナーについての恋愛相談に夫がのっている。
多少の嫉妬はあるのだろうが、夫婦の絆というものは思ったよりも強いものである。

ミッドライフクライシスというのは世界中でよくある話だけれども、実際に妻を捨てて若い愛人と結婚するということはあまり考えられない。
よほど知能が低ければありうる話というのも考えられるが、そういうカップルはただ底辺の恋愛をし続けるだけなのである。
ろくなもんじゃない。

セカンドパートナーは何度でも替えが利く。
だから女性は35歳までにたくさん恋愛をして、魂のパートナーと思える人と結婚し子どもを産むのだ。
さもなくば、将来とてつもなく寂しい未来が待っている。



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