綺麗な鳥を捕まえましょうと 言ってた君も今はカゴの中でFly
翌朝10時に僕は歩いてツーリストポリスの事務所に行った
事務所といっても、そこはポリス達の宿らしくて 普段着のままくつろいでいた。
2〜3分待っていると、制服に着替えた所長が階段からおりて来て「そっちの所長室に入れ」と案内された。
入り口でスマホは置いていけと言われたので、僕は中学校のときに習った英単語を頭の中でフルスピードでめくりながら会話をした。
部屋には机と椅子が置いてあり、僕は机をはさんで所長と向かい合って座った。
「昨日は眠れたか?今はクリーンか?」などと聞いてきた。僕は「イエス」と答える。
「君は昨日weedを所持していた。俺の部下が君を捕まえてパスポートを没収した。これに間違いはないな?」
「イエス」
「ラオスではドラッグは犯罪だ。だから君は罰を受けなければいけない」
「ノー、weedはドラッグじゃない。自然に生えている植物だ。持つのが違法なのか?」
「でも君はこれを吸っていたんだろ?」
「いや、吸っていなかった。あなたの部下がホステルにやってきて、weedを持っていないか?欲しいから売ってくれないか?と言ってきたんだ」
「わかった、君は吸っていなかったんだね。でも持っているだけでもこの国では犯罪なんだ、だから君は刑務所に行かなければならない」
「どれくらいの期間?」
「まず3週間拘束されて、そのあと刑務所に6ヶ月間収容される。ラオスの刑務所はとてもハードだ」
「え、そんなにハードなの?」
「ああ、ラオス人でも とてもハードな場所だ。しかし、それを逃れる方法がある。それは罰金を払うことだ」
「罰金はいくら?」
「450万キープだ」
「よ、よんひゃく ごじゅうまん?」
「そうだ」
「いや、そんなお金持っていないし、高すぎませんか?」
「ATMがある。払わなければ刑務所にいくだけだ」
「……」
昨夜、僕は短期間なら刑務所に入ってもいいかなと考えていた。2〜3週間刑務所に入って済むなら、宿代も浮くし あとで話のネタにもなるかな と。
タイのパンガン島で出会ったヒビキは、タイに来てすぐに刑務所に入ったという。アクセサリーに実弾を使っていたためらしいが、僕は20代の若者からいきなりそういう衝撃的な話を聞いて刺激を受けていた。
でも3週間と半年も刑務所に入れられる、それもラオス人でもハードということは そうとう厳しいんだろうなと思い、しぶしぶ罰金を払うことにした。
「今はそんなお金を持っていない。ATMだと1回で150万キープしか引き出せない」
「今はいくら持っている?」
僕は有り金を全部出した。たしか30万キープ(2,300円)くらい。
450万キープ(34,000円くらい)というのは、ラオスだと3ヶ月くらい生活できる金額だ。
「残りの420万キープは12時まで待つ。それまでに持ってこい」
パスポートは取り上げられたまま、僕は解放された。
とりあえずATMを探して歩く。朝の10時過ぎだというのに、ヴァンヴィエンの日差しは照りつけるように暑い。
近所の人にATMの場所を聞きながら歩く。指をさして教えてくれるのだが、ラオ語なので何を言っているのかは分からない。
15分くらい歩くと道端にATMマシンが2台並んでいた。(日本以外のアジアの国では、ATMが路上にある。ドアも衝立もなく自動販売機みたいに)
僕はクレジットカードを入れて150万キープをキャッシングした。これをあと2回くり返す。すごい札の量だ。
罰金を払ってしまうと、生活費がなくなるのでもう1回クレジットカードを機械に入れてキャッシングしようとすると カードの上限に達したのか引き出せなくなった。別のクレジットカードで試してみると、そちらもなぜか利用できなかった。
隣の機械ならいけるかなと思い、もう1台のほうのATMにクレジットカードを挿し込みお金を引き出そうとするが こちらも使えない。あきらめて帰ろうとすると、カードが出てこない!画面の色々なボタンをタッチしてみるが うんともすんとも言わない。
「Fuck!くそっ!なんて日だ!」
僕はATMの機械に貼ってある電話番号に電話したが、ガイダンスが流れるだけで切れてしまう。
これはとりあえずあとにするとして、警察署に戻ろう。
ツーリストポリスの事務所に戻ると、そこには僕のほかにフランス人の女性がいた。
余談だが、日本以外の国の女性は身体の毛を剃っていない人が多い(逆に陰毛は ほとんどの人が剃っている)
そのフランス人は体にフィットした半袖のTシャツを着ているのだが、脇毛がワサッと はみ出ていた。僕は女性の脇毛フェチなので嬉しくなって「ナーバスな質問かもしれませんがあなたに聞きたいことがあります。もし失礼だったらすみません、フランスの女性はみんな脇毛を生やしているのですか?」と聞いてみた。
すると彼女は笑いながら「なーんだ、そんなこと?まあ剃っている人もいるけど私は剃らないわ。だってそのほうが自然でしょ?」と答えてくれた。
僕は「そうだよね、そのほうが自然だしとてもセクシーだと思うよ」と言った。
それだけの話や
そのフランス人はドイツ人の友達で、付き添いで来ているという。僕がフランス人と外で待っていると、同じホステルに泊まっていたドイツ人の男性が出てきた。
「あー、どうしたの?君もつかまったの?」
「ああ、昨日の夜weedでつかまったんだ」
「俺は夜中にホステルでつかまったんだけど、君はどこでつかまったの?」
「昨日の夜 joint を吸いながら道を歩いてたら、ポリスがきて俺をつかまえやがった」
(そりゃ つかまるやろ…)
「で、罰金払ったの?」
「ああ、300万キープも払わされたよ」
「えっ!俺は450万キープって言われたよ」
そしたら横にいたフランス人が「それは払い過ぎよ」と言った。
「そうなんや。わかった交渉してみるよ」と僕は言って署内に入った。
さっきと同じ所長室に案内されて座る。今度は部下が2人立ったまま同席した。
僕は「ATMに行ったけどこれだけしか引き出せなかった」と言って300万キープを出した。
あらかじめ150万キープずつをポケットの別の場所に入れておいた。
「自分で数えながらここに置け」と所長は言った。ラオスのお札は最高額が10万キープなので僕は「1枚、2枚、3枚…」と数えながら30枚を机の上に出した。
「あと150万たりない」
「わかっています。でも僕にはお金がないんです。日本はお金持ちの国かもしれませんが、多くの日本人は安い給料で貧乏生活をしています。僕には日本に病気の母がいて、とても大変なんです。なんとかこれで勘弁してもらえませんか?」
「だめだ、払えないなら刑務所にいくしかない」
「そもそも、weedを吸ってもいなかったのになんでつかまえるんですか!weedはドラッグでもないし、ただの植物なので危険なものじゃないですよ」
「ほかの国では合法でもラオスでは違法なんだ!俺はこの国を愛している。だからこの国を守る必要があるんだ。わかるか?」
僕はその言葉を聞いて涙ぐんでしまった。こんなことを言える警察官が日本にいるだろうか? 政治家からも総理大臣からも「日本を愛している」なんて言葉を聞いたことがない。感動して、僕はあきらめた。自分がやってしまったことだからしょうがない、罰金は授業料だと思って払うしかない。
(ドイツ人の罰金が300万キープだと聞いたというのは言えなかった)
そして追加で150万キープを払ってパスポートを返してもらった
所長は「このことは他言無用だ」と言った。
僕が「なぜですか?」と聞くと、「このことを言うとお前は犯罪者だと見られる、怖がられたり嫌がられたりするのはイヤだろう?」
僕は分かったような分からないような感じだったが、早く帰りたかったので「イエス」と答えて署をあとにした。
これからどうしよう?
お金は全部とられたし、クレジットカードも使えない。
あれ、でも最初に渡した30万キープが帰って来てないな。くそ!署に戻って取り返そう。
僕は署に引き返して「所長いる?」と言って所長室に入った。
「最初に払った30万キープ返してよ」
「なに言ってんだ。お前の罰金はさっき全部支払われたよ」
「いや、先に30万払って そのあと450万払ったやろ?」
所長は「お前の罰金はこれで全部だ」と言い張る。
あー、もう面倒くさい。こいつに怒っても 権力をかさに着て言い負かされるんだろうな。とっととサヨナラしよう。
「わかったよ。ところで、ATMからクレジットカードが出てこなくなったんだけど、電話しても繋がらないんだ」
「それは銀行に行かないと無理だ。ここでは何もできない。今日は土曜日だから月曜日にならないと銀行は開かない」
踏んだり蹴ったり、弱り目にたたり目、泣きっつらにハチ
僕はとっととラオスを抜け出してタイに行きたかったが、この状況では動けない。どうしよう?
旅をしているときはAgodaで宿を探している。Agodaでクレジットカード決済できる宿もあれば、チェックイン時に払わないといけない宿もある。チェックイン時にクレジットカードを使用できる宿はほとんどない。そして、ヴァンヴィエンの安宿はAgodaで決済できる所がなかった。(手元にあるクレジットカードはキャッシング枠は利用できなくなったが、ショッピング枠は使えるはずだ)
その日から2日間、なぜだか僕は前もってAgodaで宿を予約していた。(普段はその日に行きたいところに行き その場で予約するのに)
その宿に行ってみると あんのじょうカードが使えない。その宿の主人はベトナム人で英語が話せない。僕は現金がないから なんとかカードで払えないか?とGoogle翻訳を使ってベトナム語を表示してみせた。だけど無理らしい。
どこかカードが使える店で僕が払って、その店から現金を宿に渡したりできないか?と聞いてみたが断られた。
僕は「わかった。ちょっと考えるからロビーにいさせてくれる?」と聞くと、それはOKだった。
僕がヴァンヴィエンで泊まっていた Nana Backpacker Hostel
https://maps.app.goo.gl/xM9i1jDcpS2sRPRU7?g_st=ic の横には、不思議なことにモバイルショップがあった。(スマホやパソコンなどを売っている、日本でいうとGEOみたいなお店)
僕は日本から、何かの役に立つだろうと思って 壊れた iPhone X と壊れかけの AirPodsを持って来ていた。そのときにメインで使っていたのは iPhone SE、iPad Pro、iPad mini4 だった。
ヴァンヴィエンに来た初日に、僕はそのモバイルショップで 壊れた iPhone X と壊れかけの AirPods を売って現金に変えていた。(メルカリで売るよりも高く売れた)
そのことを思い出し「iPad mini4 はマップをみたり動画を観たりするのにちょうどいいサイズのサブ機だけど、これを現金化しよう」とモバイルショップに行った。
するとシャッターが閉まっており、店は開いていない。店の前でジュースを売っている女性に「この店はいつ開くの?」と聞いてみると「ここは開かないよ」と言われた。
「え、でもこの前は開いてたよ」と言うと「それは知らないけど、明日も明後日も開かないよ」と答える。
ウソだろ。だって、つい2〜3日前にここでiPhoneを売ったのに そんなに急に潰れることってある?
なんかキツネにつままれたような気分。
宿に戻って「僕が持っているこの iPad mini4 をモバイルショップで売りたいんだけど、今日は店が閉まっていた。明日もう一度行ってみるから今日は泊めてくれない?」と聞くと「お金を払わないとダメだ」と、もっともな答えが返ってきた。
ロビーといっても道路に面していて、ドアもガラスもないのでソファに座っていると目の前を人が歩いていく。
僕は考える。
ここを通る人は欧米の旅行者が多いから、この人たちにiPad 売れないかな?と思いつき 宿の主人に聞いてみる。
「ここの前を通る人に僕のiPad を売ってもいい?」
主人は少し考えて「ダメだ」と言った。
「わかった。そしたら今日はここ(ソファ)に朝までいてもいい?」
「ダメだ。夜9時までならいてもいい」
「OK」
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