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→にげる


 皆さん、こんにちは。なんでロシアの肩持つの? とか言われる木賃もくちんふくよし(芸名)です。
 ちっとも持ってないんだけどね。

 今回のロシア-ウクライナ紛争に関して、言わばウクライナは完全な被害者である。
 単に、何故ロシアが侵攻に至ったか、と言う点はスルーしちゃいけない問題だって言ってるだけで、平たく言えば、


 どんな不幸な生い立ちがあろうとも、
 犯罪に手を染めたら罰されるべきだ。


 ロシアには侵攻を選択するだけの事情や動機があった。それをちゃんと紐解いておかないと駄目よ、って言ってるだけなのである。
 例えば、両親から虐待されて育った子供がいたとしよう。
 それは大変に不幸な話であるが、その子供が何らかの犯罪に身をやつしてしまったら、それは犯罪者として裁かれるべきである。
 無論、不幸な生い立ちってのは情状酌量の余地があるかも知れない。しかし、その犯罪の被害者には関係のない話なのである。

 ワタクシはここで「戦争は外交のひとつの形」なのか「外交の失敗の結果が戦争」なのかを議論する気はない。必ずしも戦争が最悪の一手なのかと言われると、返答に困る。
 歴史的に見るのか、国家間問題として見るのか、それとも国民の目線で見るのか。あるいは、当事者ではない国外の人間として見るのか。
 真実はいつも1つなんて言う小学生もいるが、答えは1つではないからだ。

 今回の騒動をもう少し身近な形で乱暴に説明するとするなら、ロシアは果物屋さんである。ウクライナは果樹園農家さん。
 果物屋と農家は先祖代々、一緒に仕事をしてきた。
 ただ、果物屋は販売ルートが多く、立場的に「お前らの果物を売ってやってるんだぞ」という強い態度が目立っていたのである。
 農家さんは、それでもそれなりに仲良くやってきていたし、契約書もあり、契約通りの仕事をしてきたつもりだ。
 この関係はこれまでと同じく、これからも続くと思われた。

 そこに、ヨーロッパさんというフルーツパーラーさんが現れたのだ。
 彼らはフルーツパーラーだけでなく、欧州カフェというカフェとも業務提携しており、「ウクライナさんの果物をぜひウチで売らせて欲しい」と申し出たのだ。
 そこで、ウクライナさんはロシアさんとの契約を終了させ、ヨーロッパと新たな契約を結んだ。
 ウクライナさんが契約を切ってくるなんて夢にも思わなかったロシアさんはカンカンです。
 しかし、特に目立った契約的不備がウクライナさんにある訳ではありません。
 そこでロシアさんは、契約書を隅々までチェック。その文言の小さな粗を見つけて、「コレって契約違反じゃないの?」と難癖をつけ始めたのです。
 それだけではありません。
 ウクライナさんの果樹園で働いている従業員に探りを入れ、果樹園に不満を持つ人間を集めて、「ウチの果物屋においでよ」とヘッドハンティングを持ちかけたのである。
 そして、ロシアは今ひとつ理屈の通らない「突然契約を切られたから、我々果物屋が損害を受けた。どうしてくれる!」と弁護士を雇い、不満を持つ従業員を焚きつけ、


 「この果樹園の一部は、不当に扱われた従業員が所有すべきだ!」


 と裁判を起こしたのである。
 コレが8年前のクリミア併合。
 ロシア-ウクライナ間はコレだけでは説明し切れない複雑な関係なのだが、今回の紛争の直接のトリガーはこの辺だろうと思う。

 裁判って言い方にしてるが、ぶっちゃけ法的な係争ではなく、武力侵攻である。また、結果としては調印という形で、法的にロシアが勝利する形に決着している。
 ここで、ウクライナさんは「ロシアさん、やべえな。関わり持ちたくねえ。ヨーロッパさんと仲良くしよう」と態度を硬化させた。当然と言えば当然の結果である。

 しかし、「今回の件で懲りました。またロシアさんに納品させてください!」って泣きを入れてくると思ってたロシアにとっては面白くない結果なのである。いや、自業自得なんだけど。

 で。ウクライナさんとヨーロッパさんが微妙に仲良くなって、このまま行くと、ウクライナさんが欧州カフェと業務提携して、果実屋「ウクライナ」をオープンしかねない。果物屋の危機だ。

 頭に血が上ったロシアさんは存在してない契約書をでっち上げ、「正義は我にあり! ウチと再契約するか、果樹園をよこせ! さもなくば契約違反で訴える!」と言い出したのである。
 「そんな無茶苦茶な話があるか! ヨーロッパさんの力を借りて、訴え返してやる!」とウクライナさんがキレるのも当然な結果。

 で。リアルな戦闘というドロドロの裁判沙汰になっているのが現在、という所。
 そりゃ確かに、全面的にヨーロッパに切り替えるのではなく、徐々に、こっそり切り替える方法にしてれば、ロシアさんはキレなかったかも知れない。それらの点は失策だった可能性はある。
 だが、まさか謎のブチ切れで裁判を起こしたりする事までは予測できただろうか。
 それに、こっそりゆっくりと切り替えてるのがバレても、ロシアがキレてた可能性もあるのだ。
 だから、この場合ほとんどウクライナに非はない。
 そりゃ「果実屋ロシア」には沢山の従業員がいて、その給料を産出するためには、無茶な行動をしてでも金を稼がなきゃならない事情がある事はわかる。
 わかるが、だからと言って、ウクライナを被告人にするのは正しいとは言えないだろう。

 さて。ワタクシが好きでない時事ネタを、明るくも楽しくもない時事ネタを取り上げたのには少々理由がある。

 TVだかラジオだかで、タレントのテリー伊藤がウクライナ人に「命は大事だから、逃げて欲しい」と言った事である。
 ワタクシはその番組を見てもいない。だから、そのやりとりがどの程度切り取られたのかも知らん。その上で、テリー伊藤が「人命より大事なものはない」と主張する事は、特段間違っているとも思わない。肯定したくない文言がいくつか含まれていたが、全面否定もしない。
 そのテリー伊藤の言ってる事が、国家よりも人命の方が大事という事なら同意もする。

 ただ、身に覚えのない冤罪の裁判に出廷して無実を訴えること、上告することの何が悪いと言うのだろう。
 もっとわかりやすく言えば、今リアルタイムでブン殴られてる人に、「命は大事だから、戦わずに逃げてください!」ってのは如何なものだろう。
 ワタクシは武術が好きで、齧った事もある。それでも、他人にはトラブルには近寄るな、出くわしてしまったら逃げてくれと切に願う。

 基本は「危険に近寄らないこと」であり、次に「危険な事になる前に遠ざかること」、その次が「逃げる」 そして「大声で助けを呼ぶ」 「戦う」のは最後でいい。個人の危険なら、それがオススメだ。
 だが、国家間の問題で、個人が「近寄らない」「遠ざかる」のは容易ではない。

 そして、多くの人が勘違いしてるが、


 逃げるって事は
 容易ではないのだ。


 避難も含め、逃げるって事は簡単じゃない。戦うよりも絶対に安全と言う訳でもない。ドラクエだって、逃げるのに失敗して一方的にダメージを食らう訳だ。
 下手をすると、戦うより危険なケースだってあるのだから。


 金品を差し出したら口を封じる強盗は幾らだっている。
 逃げたら追いかけて来ない保証が何処にあるのか。
 今、殴って来ている相手は、こちらが逃げようと背を向けた瞬間にナイフを突き立てるかも知れないのだ。
 走って逃げるにしても、元々相手の方が強いから逃げる訳で、相手の方が速く、長く走れるかも知れない。てか、その可能性の方が高い。
 財布を奪われるだけで済んだから、命がある方がいいなんて言ったりもするが、その財布を奪われる事が命を奪われるに等しい人もいる。
 それでも、「命さえあれば」「とにかく逃げろ」なんて無責任な事は、ワタクシには言えない。


 想像して欲しい。
 住む家を突然奪われ、財産も手持ち分ぐらいしか持ち出せない。更には金銭価値さえも不安定になる。
 今逃げ出せば、必ず良い人生が待ってるなんて、誰が保証してくれるんだ?
 ようやく買ったマイホームを壊され、家族を殺され、仕事も金も失って、「それでも生きてた方が良い事あるよ」なんて、ワタクシには言えない。死んだ方がマシって状況は存在するし、戦った方がマシだから戦うのだ。
 そこで逃げ出せば、第2、第3の自分が作られていく。
 侵略ってのはそーゆー事だ。武器を手に取るな、戦うな、なんてのは綺麗事に過ぎない。そして、逃げろ、さえも綺麗事だ。
 「法的には」なんて寝言は、無法者に縄をかけてから言うべき話なのである。

 ワタクシにある、それでも命を捨てないで欲しい、死なないで欲しい、と願う気持ちも嘘じゃない。真実は1つじゃないから。否定はしない。「命よりも大事なモノのために戦え」も綺麗事だ。

 ただ、それでも「逃げて欲しい」とは単純に言えないのだ。言うべきではない。

 わかりやすい話、これだけ地震が多くて、いつ大地震に巻き込まれて死ぬかも知れない日本に、ワタクシも皆さんも住んでる訳だ。
 「地震で危ねーから、外国に移住したら?」なんて言われても、「そうだね! 引っ越すよ!」なんて奴はおそらく誰一人としていないんじゃないか?

 水害や火山の被害が大きい街もある。
 誰かが引越し資金や、次の住居、仕事を斡旋してくれるでもなく、慣れ親しんだ土地、家、親戚や友人と離れて暮らすことになる。それを「危ないから引っ越せよ」なんて気軽に言える方がどうかしてるだろう。

 それに、ほとんどの人間は今の自分の仕事に不満の1つや2つは持ってるモンだ。
 それが大概ブラックで劣悪な環境でも、「今月も給料を払ってくれて、保険とか色々出してくれる」ってメリットがあったり、転職した所で次の職場が今よりマシとは限らないって不安や、会社が潰れるか、クビになるまで何とかしがみつこう、なんて保身で働いてたりする。

 それを、門外漢に「不満があるなら辞めれば?」とか軽々しく言われたらどう思うだろう。

 それが戦争や侵略だとするなら尚更だ。
 だから、勝てる、勝てないだけの問題ではない。「戦う」だけじゃない。「守る」だけでもない。「逃げる」も簡単な事じゃないのである。

 現地の、現場の、現在の人間の決死の選択を軽んじる発言は看過しがたいと思う。

 さて。
 なんで、こんな話をしてるかってーと、ワタクシは以前、水害の多い土地に住んでる人に対し、



 「何年かに一回くらい浸水したりしてるのに、引っ越したりしないんですか?」



 という不躾な質問をしてしまった事がある。
 その人は怒りもせずに、サラッと答えてくれたのだが、その答えが、現地の人間でしか思いつかないであろうモノだったので、衝撃を受けたのだ。
 彼の答えは、なんと、




 (´・ω・`) 大事なモノは、
 1階には置かないからな。




 と言う、



 (´°Д°)」 浸水前提で
 生活してる人の発言だ!!




 ってなって、カルチャーショックを受けた。
 要するに、部外者がわかったようなツラして「なんでこうしないんですか?」とか言うのは要注意ってこった。


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 なお、この先には、ちょっと不謹慎な事が書かれています。


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(´・Д・)」 文字を書いて生きていく事が、子供の頃からの夢でした。 コロナの影響で自分の店を失う事になり、妙な形で、今更になって文字を飯の種の足しにするとは思いませんでしたが、応援よろしくお願いします。