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ハラリ『サピエンス全史』&『ホモ・デウス』を読む

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『サピエンス全史』を中心に、ユヴァル・ノア・ハラリの著作に関するnote+αを集めました。
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#歴史

フロイト著『モーセと一神教』から考える"ことばの憑依"の様式について

フロイトは『モーセと一神教』という不思議な本を書いている。 フロイトというのはジークムント・フロイト。精神分析の始祖である。 そしてモーセとは、あの有名な旧約聖書のモーセである。 フロイトは『モーセと一神教』で、モーセは「(おそらく高貴な)エジプト人」であったと書く。 モーセはユダヤ人ではなくエジプト人 のちのユダヤ教、キリスト教、イスラム教へ繋がっていく一神教のルーツはエジプトにあるというのである。 どういうことだろうか? 詳しいことは是非『モーセと一神教』を読

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未来を想像し直すための「虚構」を ーユヴァル・ノア・ハラリ著『ホモ・デウス』を最後まで読む

『サピエンス全史』の著者である歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏による『ホモ・デウス』を引き続き読んでいる。 ハラリ氏の『ホモ・デウス』は『サピエンス全史』の続編ということになる。ハラリ氏は数万年前から近現代にいたるまで、そして近未来にあり得る可能性まで人類の歴史全体を論じる。 ハラリ氏は様々な時代の様々な人々を比較するための基軸として「虚構」そして「意味」を置く。『ホモ・デウス』でも近代現代の人類の歴史と近未来にありえる可能性とを思考する鍵は「虚構の力」である。 虚構の

『サピエンス全史』の幸福論―感情から意味、意味の生成へ、虚構の力を引き受けること

ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』を読んでいると、下巻の240ページに興味深い一節を見つけた。 そこには次のように書いてある。 「感情は自分自身とは別のもので、特定の感情を執拗に追い求めても、不幸に囚われるだけであること[…」もしこれが事実ならば、幸福の歴史に関して私たちが理解していることのすべてが、じつは間違っている可能性もある。」(p.240) 「特定の感情を執拗に追い求めても、不幸に囚われるだけ」とある。なかなか強烈な一言だと思う。下巻のこのあたりでハラリ

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信じられる「未来」についての虚構をどう描くか? ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』が問いかけるもの

歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏による『サピエンス全史』。上下二巻にわたり人類の歴史を一掴みにしようというおもしろい本である。 様々な人々の無数の経験が織りなす複雑な人類の歴史を、わずか二冊の本で一掴みにする。そのための方法としてハラリ氏が選んだのが「虚構の力」という概念を軸に設定し、その軸の周囲に人類史を記述していくというやり方である。 だからこそ7万年前ほど前の人類に起こったコトバの力の獲得、虚構を音声や物に置き換えて他者と共有する力の獲得から、『サピエンス全史』の記

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人間の崇拝から科学革命へ 『サピエンス全史』が問うものとは?

歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏による『サピエンス全史』。ハラリ氏はコロナ後の社会についても積極的な提言を行っている。 『サピエンス全史』の原著の刊行は2011年、もうすぐ十年経つところであるが、その問題提起は全く古びていない。それどころかコロナのもとで、むしろより切迫した課題を捉えているとも言える。 さてベストセラーになった『サピエンス全史』だが、読んだという人たちに話を聞くと次のような答えが帰ってくる。 冒頭の「認知革命(「虚構の力」の獲得)」や、「農業革命」あたり

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『サピエンス全史』から『ホモ・デウス』へ ー「虚構の力」の使い方

『サピエンス全史』で知られるユヴァル・ノア・ハラリ氏の著書『ホモ・デウス』を読む。 本書のタイトルにある「ホモ・デウス」とは一体何のことだろうか? ホモ・サピエンス(わたしたち)やホモ・ネアンデルターレンシス(いわゆるネアンデルタール人)といった様々な種をひとまとめにしたカテゴリーが「ホモ属」である。 ホモ・デウスは、やがてホモ・サピエンスから分かれて進化するであろう、ホモ・サピエンスとは別種の新種のホモ属のことを呼ぶ名前である。遠い将来、ホモ・サピエンスの子孫たちは変

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「暗黒時代」は誰にとっての「暗黒」時代か―ジェームズ・C・スコット『反穀物の人類史』を読む(1)

ジェームズ・C・スコット著『反穀物の人類史 〜国家誕生のディープヒストリー』を読む。 「穀物」と「国家」から人類史を論じる一冊である。 [国家] 対 [反-国家] [穀物] 対 [反-穀物] 今日の私たちは、「国家」の存在も、「穀物」の存在も、当たり前だと思って生きている。 「日本人なら朝ごはんはお米だわ」 などと、さも当然のように言えるところまで来ている。 ところが、穀物はもちろん、国家も、人類の歴史の中で見れば、最近登場した新しいアクターである。国家も穀物もな

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