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映画と車が紡ぐ世界chapter143

風立ちぬ:トヨタ プリウスPHV NHW20型 2015年式
The Wind Rises : Toyota Prius
 PHV NHW20 2015

日曜日のレイクタウンは大混雑・・・

君は 
地球の一周が4万Kmと きりがいい理由をしってるかい?
それは 
北極から赤道までの長さを実際に計測して 1万kmと人が定めたからだ
地球一周は その4倍・・・ 
だから 端数無しの4万kmとなったわけだ
最近では宇宙開発のおかげで 
正確な1mの定義が別にできてしまったので
端数無し という訳には いかなくなってしまったけれど・・・

こうして地球の長さが決まった後で 
1/40000にしたのが 1m・・・この幅だ
僕は 小さく両手を広げて1mをつくった
ちなみに・・・ 
恋人同志の距離は40cm以内だそうだ 
でも・・・君は いつも人混みの中を すいと泳ぐように先に行ってしまう
君が僕の40cm圏内にいた記憶を 僕は持ち合わせてないよ・・・

♪ You Raise Me Up - Celtic Woman ♪

1秒の定義は
元々 一日を24時間で分割したhour
それを60に細分化して minutes(細分化)を作った
そして・・・
二度目の細分化(セカンド)が 秒=secondだ

先人も 
カノジョのウィンドウショッピングに
付き添わされた男のために 
時が刻まれていることを 認識できる単位が必要だったのだろう
しかし・・・
この時間の定義も 今では セシウム原子時計で定義されている
曖昧の許されない時代なのだ

兎に角・・・ 
君は そんな時間の原理にとらわれず
一日中 この巨大モールを歩き続けた
もう帰ろうかと 僕が言おうものなら

「あなたは ホントに 体力ないよね」
と微笑まれる

そうさ・・・
僕は MoriからKazeへ そして もう一度Moriに帰る前に 
アウトレットエリアに向かくキミのような 体力はない
それに・・・
同じようなショップの前を通過していると 鏡の迷路に迷い込んだ気になる
そんな僕を見て 
最後は可哀想に思うのだろうか
太陽が オレンジ色になるころ

「今日はこの辺で・・・」
助け舟を出してくれたキミ

これが 僕とカノジョの週末デートだった

広大な駐車場では 
待ちくたびれて 転寝していたようなプリウスが待っていた

待たせたね・・・
コツンとステアリングを叩きながらスタートボタンを押す
ほとんど始動音がない コイツのスタートは 優しい
窓を開けて 街の囁きを聴きながら 
僕は 風の吹いてくる 西へ向かった

やがて
一面 芝に覆われたの丘陵地に到着した
丘の上に駆け上り ごろりと寝ころぶ 
空には ぷかぷかと流れる浮雲
芝のこすれる音 遠くに聴こえる虫の声・・・ 20dbの競演

そうそう・・・ 音の単位だけは 
少しだけ 人のあいまいさが残っている
0db は 人に聴こえない状態
10dbは 静かな息
そして20dbは 木々の触れ合う音・・・

曖昧な感覚が 心地良い
全てが データで実測化され 遊びの無い世界では 
キミの居場所が なくなってしまう・・・

堀越二郎さん・・・
僕は 風立ちぬの主人公に向かって呟いた

”君は 菜穂子さんと 
 短いけれど とても凝縮した時間を過ごしましたね
 別れの時・・・ 
 君は どんなに悲しかったことでしょう  
 もっと一緒に居たかった そう思ったのでしょう・・・”

僕は ショッピングセンターのパンフレットを取り出して
紙飛行機を折った そして・・・
西風に合わせて 思い切り 空に投げた

”でもね・・・
 楽しい時間と思い出をいっぱい いっぱい共有できても・・・
 30年も 連れ添うことができたとしても・・・
 先に逝かれてしまったら・・・ 

 それもね・・・ 

 とっても 寂しいことなのですよ・・・”

上昇気流に乗った カラフルな紙飛行機は
夕陽を浴びながら 空の中に消えた 
そのとき・・・

40cm隣から 
10dbの静かな吐息と やさしいぬくもりを 感じた

「ずっと 隣に居てくれたんだね・・・」

この世界に残っている理由を 僕は ようやく見つけた 


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