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【ショートショート】         映画と車が紡ぐ世界 chapter9

卒業 ~ ジューク 16GT FOUR 2011年式
The Graduate ~ Nissan Juke 16GT FOUR 2011

サンタクロースが 仕事を終えて フィンランドに到着したころ
親友の彼女からメールが届いた
帰国子女で アンハサウェイ似の彼女は 
どうやら友人と喧嘩したらしい 
年越しそばを一緒に食べることを条件に 僕は愚痴を聞くことにした

日本人が総出で 蕎麦殲滅作戦を展開する『大晦日』
僕と彼女は かんだやぶそばにいた

「街中でキスは無理だと わかってたけど 
 彼はあまりにも 私に無関心なの」

着席と同時に彼女の不満は暴発した 
僕は 蕎麦殲滅作戦遂行まで 生き延びられるか 心配になった


「私の顔を見ないから 美容院に行っても全く気付いてくれな・・・」

Zuzuzuzzzz・・・
左隣に座る老夫婦がせいろう蕎麦をすする

「それに 彼はいつでも受け身で 
 なんでも『お前が決めろ』って言・・・」

Zuzuzuzzzz・・・
今度は右隣に座る紳士が天ぷら蕎麦をすすった

おかめ蕎麦を音を立てずに食べる彼女は 左右を一瞥すると 小声で言った

「日本人の感覚って・・・ 理解できない・・・」
僕の弁護対象は 友人からオールジャパンになった

「アイツは 日本人の中でも特別なんだ 
 ”ラストサムライ”さ
 無口で物静かだけど 間違いなく君このとを思ってるよ」
僕は静かに月見蕎麦を食べた

「それに 庶民的な日本文化も 馴染んでくると風情を感じるもんさ」
「そう? 
 でも あなたは お蕎麦を食べるときに音を立てないわ 
 それに いつも私をしっかり見てくれる 
 あなたと一緒にいるほうが 楽しいの」
彼女の思いがけない言葉に 
僕のハートは一気に7000回転(red zone)に突入した

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オーバーヒートすれすれの僕は 
店の外で行列をなしている 蕎麦殲滅第2部隊に席を譲った
そしてブルーのJUKE 16GT FOUR に 彼女を乗せると夜の高速を駆った
MR16DDTとALL MODE 4×4-iの足回りは 
心地よいドライブを演出した
しかし 僕の頭は 彼女の言葉が いつまでも木霊している

「あなたと一緒にいるほうが楽しいの・・・」

僕はベンジャミン(卒業 1967)になりそうな自分を押し殺した

空が白けてきたころ 二宮海岸に到着した

「S極同志は どんなに似ててもくっつかない 
 最終的に結びつくのはS極とN極なのさ」

僕の言葉に 彼女は 寂しげな笑顔を見せた
僕は 海岸線を指した

・・・ !!

彼女は 砂浜に アイツを見つけた 

「日本の風習(初日の出)もいいもんだろう・・・」

僕は 彼女の背中を押した・・・

彼女がアイツに飛び込む瞬間 
僕は JUKEをUターンさせていた 

抱き合った瞬間・・・ 
ラストサムライのポケットから落ちた携帯の画面には 
 友人からのメッセージが残っていた

『俺たちの練習場所に 初日の出が昇るとき 天使が現れる』


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