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小説◆セピア色がキャラメル色に変わる瞬間《とき》

小説◆セピア色がキャラメル色に変わる瞬間《とき》

2012年10月作

ほんのりと冷たい風が吹き抜ける夕暮れ時。

オレ裕介は人気の疎らな大学校舎を出、校門へと向かっていた。

(秋だねえ……)

頬を撫でる風に煽られるように見上げた黄昏た空。

キュッと胸を掴まれるみたいな切なさが込み上げて……。

この季節特有の寂しい気持ちを堪能しようと、校門の前で足を止めたオレは、おもむろに上着のポケットからiPodを取り出し、イヤホンを耳に宛てる。

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