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〜 プロローグ〜 

   (ぜひ小さな声に出し読んでみてください)

 人はいつか必ず死ぬ時が来る。そんなことは当たり前で必然で完全な事実。
けれどもそんな必然よりも早く‘死’へと向って行きたがる、走りたく無いのに
悲しく重い暗闇を抱えたままただひたすらに走り続けた。もがき払う力もなくただ自分の嘘や涙に溺れながら時間をぞんざいに貪ってしまっていた。
心は本来、素直で正直だから耳を傾けなければならない。

 蛇口を捻った、塩辛い水が虚な目からこぼれ落ちた、コップの水もまた、溢れ出た。
静かな夜と暗い夜空だけは必ず味方になってくれる。何も言わずただそこに在ってくれる。

人は生まれた瞬間から人生が始まり、死という終わりへと向かってゆく。
自分もまた、自らの意思で死へと走り続ける者の一人であった。 

  これは真っ暗闇のどん底に住み着いてしまった一人の人間のある種の備忘録であると同時にただの彼女の吐け口の様なもの。
また、誰にでもあり得る今の現実に耐えかねた人へ贈る共感と励ましの様な文書です。

 

  〜頭の中の鉛〜

 ‘また’だ。また寝坊してしまった。遅れてはいけないのは当然理解しているし相手には大変申し訳ないと思っているが、こんな話がある事を思い出した。
「遅刻するのって、その相手のことを自分より下に見てるとか舐めてるって事なんだよ。」自分が言うのもおかしいが馬鹿馬鹿しい、自分自身が遅刻してしまうのは当然悪いと自覚しているし改善する努力だって行っていると言うのにあまりにも不甲斐無いことを思い出してしまい、
朝からとても不愉快極まりない気持ちと低血圧も由来する苛立ちに苛まれたいた。
 人は常に何かに追われながら生きていると常々思うことがある。
課題、仕事、時間、期限、人、兎に角思い当たるものが沢山あり人に限らず生きとし生けるものは皆必ず何かに追われている。
毎日時計や、やらなければならない事とにらめっこをしながら生活する。
私はそれが音楽だった。
周りにはもっとハードなスケジュールをこなしながらもきちんとこなす人もいる
私にはそれが出来なかった、昔から。
その度に幾度となく劣等感や自分への失望が止まなかった。
アクセント記号、強弱記号、楽語の意味、表現するための歌い方、ブレスの位置やタイミング長さ、できる事なら全部完璧にしたい。出来ない。なぜ?
分析する、理解する、実行…出来きれない。なぜ?どうして?
そしてまた基礎をする、昨日までできていたものがまた戻っている。ほんの少ししか変化していない。こんなのではダメだ、もっと考えてやれよしっかりしろよもっと頑張れよもっともっともっともっともっと…、
自分への怒りや劣等感、怒られたことへの自責の念や申し訳なさ、過去のトラウマ
今起きていることのストレス、今まで自分を騙して乗り越えてきた我慢がある不特定の周期でぐるぐるとループして一瞬にして彼女の心と頭の中を暗闇のどん底に引き摺り下ろす。朝も夜も家でも外でも考えることや集中ができない、何も楽しく感じないい、
毎日死にたいとか消えたいとか私のことなんか忘れてほしいとか忘れないでいてほしい
なんて頭の中の糸がぐちゃぐちゃに絡まり合ってまたさらに疲れてしまう。
体を起き上がらせることが出来ずまるで大きくて重い鉛を体の中に埋め込まれたみたいに地べたに足をつけることも出来ない。たくさん泣いて息が出来なくなったり過呼吸になる。泣き止んで少し落ち着いてまた…の繰り返し。
気がついたら上着を着たままで床で寝ていた、寝た記憶どころか地面に横になった記憶すら無いというのに一体何が起きてこんな時間になっているのかと動揺したまま急いでお風呂に入る。
するとまたシャワーから出てくる水流とは違った生暖かい水滴がこぼれ落ちていく。

 もう泣くのには疲れたんだ。もう少しでも希望を持って生きていく事には疲れたんだ
だって結局何も変われなかった。弱くて脆くて頭の悪い最低な出来損ないのまんま、
このまんま二十歳を迎えてしまった。
大人になったら少しは変われると思っていた。
笑っちゃうくらい成長どころか退化していった。体が少し大きくなっただけだ…
特別才能があるわけでもなく、勉強ができるわけでもない。私には音楽以外何も無い
その音楽が今苦悩に変わっていることが悲しい、できない自分が憎い、いろんな
人間関係や過去の最低な記憶も醜い自分も辛い現実もぜんぶ全部どこかに捨てててしまいたい。
 人間として何か大事なものを失ってしまった気がする。
何をするにもすぐに諦めてしまう、絶望してしまう、
有頂天まで気持ちの高揚が届かない、簡単に希望を捨ててしまう。
少し怖くもあんなに楽しかったコンクールもいつの間にか「認めてもらうため」 
に変化していった。自分の力量を知り乗り越えて磨いた技術や作品のルールを守り楽しく演奏することが喜びだったのに、あの頃から過呼吸になったり不眠、夜泣きはあった
けど、「まだ大丈夫」「もっと頑張れ」と心の中で言われ続けてじぶんで自分を騙すことを止めなかった。
自分のいうことなんて耳を傾けていたら甘えて腐ってしまう様な気がして、
自分の事を時間をかけて嫌いになっていった。
そうして自分を騙し、憎らしく、嫌悪感や劣等感を抱き少しずつ心がボロボロに壊れていった。
大学へ進学してもいろんなことの恐怖や苛立ちから更に壊れて行き消えたいとかもうどうしようもないとかごめんなさいとか疲れる事ばかり考え…いや、頭から離れて行ってはくれずに一筋の光も通させない程に真っ黒でグチャグチャな大きな鉛といつも悲しそうな顔をした黒い犬が私にまとわりついて離れようとしなかった。
吹奏楽の授業でいつもはしない間違いをしてしまった。数が数えられなかった。
いつもしている指の動きが分からなくなった。「こんなことも出来ないのか自分は…」
一人周りの音の波に置いて行かれた様な気がした。乗るバスや時計を見ているのに時間が分からなくなる。言われた数字を逆から繰り返すという簡単な問いにも答えられなかった…、「失望した。」
 誰かと話しているときや、お風呂に入っているとき、喉を通したく無い食事の際や
練習しているとき寝るとき。兎に角ずっと側を離れてくれない。
 病は人にうつると言う。
助けて欲しい。でもそんなの言えるはずもない。
薬を飲んだら、一日中頭痛や吐き気、眠気、ボーッとして集中ができない。
今まで苦しんだのに何故また苦しまなければならないのか。
昔から線路や交差点、高いところに立つと「今だ、今いけば楽になれる」
そんな言葉が頭の中を這いずり回って鬱陶しくて煩くて疲れてしまう
 「死のう。」と、
覚悟を決めることももちろんある。

「この後練習が終わったらさっさと死のう。」とか、「このまま素敵おな思い出を最後に死のう。」とか考える事があるが、結局生きてしまっている。逃げられなかった。
いつも必ず母の悲しそうな顔を思い起こしてしまい実行に移せない。最愛の母が悲しむ姿が頭の奥底から映像化されてしまいまた涙が溢れてくる。「ごめんね、ごめんね。こんな私でごめんね。」と、胸や眼が締め付けられる様な感覚に堕ちて行ってしまう。
私のために頑張っている母もまた…続

#うつ #適応障害 #大学生 #休学  
#音楽 #日記 #エッセイ


 

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