【ダイソーでできるIoTプロダクトの試作品づくり 】お弁当箱版スマートトラップ
お弁当箱に入った怪しい機器、それがスマートトラップの最初の試作機でした。コンセプトを紙に起こしただけの状態で猟師さんに話を聞きに行っても大抵「いいね」という感想で終わりです。モノがあるからこそ本当に必要な要求が聞けます。機能見本レベルであれば、ダイソーで手に入る工具と材料を使ってだいたいの試作品は作れちゃいます。必要な機能を絞り込み、実装方法を切り分け、スケッチを書き、身の回りにあるもので工作というシンプルなプロセスでIoTプロダクトの試作品を作りました。
その機能の実装はハードで?Webで?
IoTプロダクトではハードウェアとがWebの組み合わせによって価値提供が行われます。そのため最初の段階で必要な機能の検討に加え、それらをハードウェア/Webのどちらで実装するか切り分けが必要です。
開発担当のTのバックグラウンドがWeb側にあったことや開発サイクル、製造・運用コストを考えると機能は本当に必要なものに絞った上でなるべくWeb側での実装に寄せたいと考え、まずは見回りを楽にするために必要な機能として以下の3つに絞りハード/Webのどちらで実装するか検討しました。
①罠作動時に通知する(罠の状態変化の検知、設置者への状態変化の通知)
②罠の場所が記録される(位置情報の取得、位置情報の登録)
③捕獲情報を残せる
①は現場でないとできないもの。②は罠の設置者が場所を覚えておいてWeb上からの登録でもできますが、毎回猟師の人が携帯を開いて登録するといった手間を考えると実現可能性は低く、自動で現場からとっちゃった方がよいもの。③残したい情報項目は人によってことなるし、現場で登録する必要がないもの。(仮に網羅的に情報が自動登録されるようなセンサーを搭載するととんでもない難易度・価格になる)
ということで、①と②はハードウェア側で実装すべきものとし、③については都度都度利用者の意見を聞きながらWeb側で実装していくこととしました。
非機能要件による機能実装方法への影響
屋外などでの利用が想定されるIoTプロダクト開発の中で多くの人を悩ませるのが電源問題。屋内のプロダクトであればそこらへんにあるコンセントとつなげばいいため電源は問題になりませんが、屋外ではそうはいきません。市街地であれば配線工事を行い電源を引っ張ってくることは出来ますが、山中かつ設置場所をちょこちょこ変えるような罠の監視センサーだと独立した電源(バッテリー内蔵)が必須です。
はじめは「Webカメラも安くなってきたし、クラウドで監視して画像解析噛ませればすぐでしょ?」と思ってましたが、とんでもない。カメラ、ましてや常時通信なんて機能を実現しようと思ったらどんだけバカでかいバッテリーを積まないといけないか。毎日の見回りはしなくてよくなったが、その代わりに毎日バッテリーの交換にいく必要になったというオチでしかありません(独立型のソーラー電源もありますが、価格や持ち運び・敷設コストを考えると現状気軽に使えるものではないです)。ということで、監視中は極力電源を使用しない状態(電源が落ちているまたはスリープ)で罠の作動をトリガーとして起動し通信する仕組みを考えることに。
頭に浮かんだのは毎晩寝る時に消灯していた照明のスイッチ、引っ張ってカチカチするとついたり消えたりするアレ。これなら作動時以外は物理的に回路がオフになって大幅に電源が節約できるんじゃないか。他に世の中にどのような仕組みのスイッチやセンサーがあるかなんてたいして知らなかったので、とりあえず作り始めました。
スケッチにおこすとイメージ共有に加え非機能要件も考えやすい
作動時に電源がオンになるコアな機構案ができたあとは、使えそうなパーツを探してみたりサンプル品をいじってみたり。「罠にかかったら場所と共に通知する」というシンプルな仕組みではあるものの、メンバー間でもアウトプットイメージはバラバラ、質問が来るたびに何か漏れがある気がしてならない。もっと具体的な意見を聞くためにどうしようかと考えた結果、絵心がないなりにスケッチを作成しました。
↓↓実際のスケッチ
スケッチを作ることのメリットは、作るものの大きさや機構、部品の構成といったアウトプットのイメージが共有できるだけでなく、使われるシーンも併せて描くことの副産物として「持ち運ぶときにはなるべく軽い方がいい」や「外で使うから雨や紫外線への対応が必要そうだ」、「設置する際にベルトとかあった方が楽そう」といった非機能要件に関するコメントが出てきました。これらのコメントは最新のモデルにもしっかり反映されています。
ダイソーさまさま、工具も材料もなんでも揃う
「さぁイメージはできた!作り始めよう!」とはいっても都内一人暮らし。しかも今までモノづくりなんてまともにやった経験はなし、家にある工具といえば家具の組立に使ったドライバー程度。あんまりお金もかけたくないことに加え、近所にホームセンターもないので仕方なく近所のダイソーへ。気軽に来たもののダイソーすごすぎる、、、(近所=武蔵小山のダイソーは店舗も大きく品揃えも豊富)
まずは手に入る工具。ドライバーやペンチといったいわゆる工作用工具はもちろん、のこぎりやドリルビット(電動ドリルの替え刃)も種類が豊富。電子工作にはハンダゴテはもちろん、ハンダも複数種類完備。電子部品の固定や回路の防水・絶縁をしようと思えば使えるグルーガンなどもあります。それがもちろん100円~。
個人的にオススメなのは下↓↓のようなクランプ。モノタロウでは500円超で売っていますが、ダイソーではもちろん100円。作業をするときに簡単にモノが固定できるため重宝しています。
https://www.monotaro.com/p/6944/4682/?utm_medium=cpc&utm_source=Adwords&gclid=EAIaIQobChMIrYOY1I-i5AIVSmoqCh0xLAQ3EAkYASABEgJoQ_D_BwE
続いて材料。試作品を作る上で重要なのがケース。むき出しの状態とケースに入っている状態とでは印象がかわるだけでなく、短期であれば実環境にも置けたりします。収納・文房具類のケースはもちろん、タッパーやお弁当箱は一定の防水性を持ちつつ加工もしやすかったり結構万能です。木工なんかだと工具の他に木工用材料なんかも結構あります。MDFボード(木質繊維の成型板)なんかはある程度強度もありますし、のこぎりで加工して組み合わせれば様々な機構もつくれます。あとは既存製品のハック。似たような機構を持っている製品が実は安価に製品として販売されていたりします。これらを買ってきて分解して使うのもおすすめです。壊れたところで100円なので。↓↓ハックの例
http://jellyware.jp/kurage/raspi/daiso_sensorlight.html
どうしても足りない電子部品や通信端末なんかは秋葉の電子部品ショップ等に買いにいってましたが、気軽にそして安価に入手でき、機構を考える参考商品があふれているダイソーは試作を作る上で本当にありがたい存在です。
そして完成、お弁当箱版スマートトラップ
店内にあるほとんどのお弁当箱・タッパーのサイズ感を把握するほどダイソーへ足しげく通いつめたころ、最初の試作品が完成しました。それがコレ↓↓
まんまお弁当箱に入っていますが、罠と連動した紐が引っ張られると手元のスマホに通知が来、マイページへアクセスするとどこの罠にかかっているのか地図上に表示されるといった基本的な機能を備えています。
猟師の方にお渡しし実際の捕獲現場で使ってもらったところスマートトラップを設置した罠に一度鹿がかかったのですが、残念なことに罠とスマートトラップを結んだ紐が引っかかってしまい通知が届きませんでした。ただ、実際使ってもらったことで使い勝手に対するコメントと共に「イノシシには機器を噛まれる可能性がある」といった運用上のTipsを得ることができ、その後の製品版に活かされています。
↓↓設置の様子
IoTプロダクトの試作品づくりにおけるポイント
・必要な機能を絞込み、ハードウェアとWebどちらで実装するか振り分ける
・非機能要件、特に電源は実装方法に大きな影響を与える
・要件漏れを確認するためにもスケッチを起こす
・買い物、まずはダイソーへ
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