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化粧が嫌いだし出来ないままアラフォーになったけど、やっぱり「お化粧出来る人」がめちゃくちゃ羨ましい、という話。

私は化粧が嫌いだ。

嫌いなので、流石に今日は化粧しないと他人に迷惑がかかるかも、と思ったシーン以外では一切化粧をしないまま、アラフォーまで生きてきている。最後に化粧をしたのが息子の小学校の入学式で3年前、その前が幼馴染の結婚式で9年前、更に前が自分の結婚式で10年前だ。どれもめちゃくちゃ嫌だったので、しつこく根に持って覚えている。
その間に父の葬儀とか、気が向いて受けてみた役場の採用面接(落ちた)などのイベントもあったのだが、他の誰かに迷惑掛けるわけじゃないしと、化粧をしないまま押し切った。そのぐらい、化粧をしない。ほぼ永遠に肌断食中である。

化粧をしないので当然下手くそだし、化粧をすればするほど「なんか自分の顔がキモくなってる」という感想になり、「美人になった感」を全く感じられないのが、嫌いな主たる理由である。自分の結婚式でプロにフルメイクしてもらった時でさえ「キモいとまでは言わないけど、別に良くなったとも思えない」という感想しかなかったので、私の好みなだけかもしれないが。
加えて肌が弱いらしく、化粧水だろうとファンデーションだろうと、つけると数分で顔全体がムズムズ痒くなってくる。せめて化粧水だけでも使えるようにならないとマズいのでは?と、数年に一度ぐらいの周期で思い立ってあれこれ試したりするのだが、今のところ顔に塗っても平気なものが、ベビーローションやベビーオイルと、日焼け止めぐらいしか発見できていない。リップクリームや口紅は大丈夫なのだが、その手の成分だけで作ったファンデーションとかないのかな。ないよねー知ってたー。

で、世の中にはそういう面倒な人間を救ってくれるはずの「化粧品売り場のお姉さん」という存在がある。のだが、私には非常に人見知りな上に「化粧をしてる若い女性が怖い」属性もあって、まさにその権化のような化粧品売り場のお姉さんの姿を見ると、条件反射で逃げてしまう。新入社員だった頃、初ボーナスを握りしめてデパコス売り場に突撃したのに、お姉さんが近付いてきただけで逃げ出してしまい、結局目的を遂げるどころかデパ地下で旨そうだった牛そぼろ弁当を買って帰ってきてしまってからは(実際めっちゃ旨かった)、もう何もかも諦めて、化粧をしない人生を貫いている。

だって、仕方ないのだ。
化粧をしたら最後、顔をめちゃくちゃ擦りたい衝動に耐えて何とか一日過ごしても、翌日にはニキビが大量発生するのだから、もう化粧を好きになれという方が無茶だ。そうだ私は悪くない。「成人女性が化粧もしないのはマナー違反!」なんて概念がこの世にあるのが悪いのだ。
多分、前世が白粉で鉛中毒起こして死んだ江戸時代の遊女だったとか、何かその手の因縁でもあるんだろう。そうだ、そうに違いない。

あーあ、男に生まれたかった。
なんて思いながら改めて洗面所を見たら、夫の髭剃り用品に並んでメンズ化粧水とか乳液とか何かとかが何種類も並んでいて、本気でビビった。ごめん、アラフィフ男性よりも顔面に努力してなかったわ、自分。

で、こういう話をすると必ずと言っていいほど、親切な女性が「お化粧してみましょうよ!やり方色々ありますから!教えますよ!」とか、「この化粧品なら敏感肌でも大丈夫!」とか言ってくれるのだが、もうこのコンプレックスは一生抱えて生きていく覚悟を決めているので、どうか放っておいて欲しい。もう私にとっての化粧は、努力とか工夫とか幸運な出会いとかでどうにかできるレベルの話ではないのだ。ハゲとか貧乳とか近眼とかと同じ「どうしようもない」という諦めで受け入れるしかない代物なのである。
去年からダイエットして10kg減量した私が言う、努力でデブは治せるが、「化粧出来ない」は治せない。努力の量で言ったら、私は化粧に対して、減量20kg分ぐらいの努力は既にしてきたし、50kg分ぐらいの出費だってしてきた。それでも化粧が出来るようにはなれなかったし、微塵も手応えを得られなかった、これが私の結論である。だからこのコンプレックスは最早、解決できる種類のものではないと、そう言わざるを得ないのだ。
ハゲに対して「シャンプー代かからなくて羨ましい」とか「頭の形が良いからハゲでいられるのよ」とか「出社するのに髪がないなんて失礼」とか「スカルプは試しました?」とか面と向かって言わないように、私の「化粧出来ない」に対しても、その手の発言を全面的に慎んで欲しい。切実に。

あ、ハゲの方ごめんなさい。つい引き合いに出したけど、個人的にスキンヘッドや坊主頭はロン毛より断然カッコいいと思ってるし、馬鹿にしてる意図は全くないどころか勝手に同志だと思ってて、それ以上に単純にかなり好きなので許してください。世の中貧乳好きの男性がいるように、ハゲが好きな女もいるんです、ここに。但し落ち武者は勘弁してください。潔く刈って、絶対カッコいいから。

話が逸れたが、私はそういう「親切な」コメントをされたくないがために、日頃いかなる女性に対しても「化粧をしない件」について、絶対にこちらからは話を持ち出さないようにしている。のだが、どんなに気付かれないよう祈ったところで、完全なノーメイク顔で生きている以上、相手が真面目に見さえすれば、いつでも誰にでも完全にバレる。だからアルバイトの休憩時間、みたいなシーンでスキンケア系の話題が出た時には、素直に白状することにしている。
すると、やっぱり親切な女性たちは、「シャンプー代かからなくて羨ましい」とか「頭の形が良いからハゲでいられるのよ」とか「スカルプは試しました?」あたりに相当するコメントを、よってたかって言いまくってくれる。
そうじゃない。そうじゃないのだ。私にとって「化粧してないんです、出来なくて」という告白は、「俺実はハゲなんだ、ヅラでぱっと見は分からないかもしれないけど」というのと同じで、だから一番優しい対応は「あ、そうなんだー」からの完全なスルーなのだ。もう少し何かを言ってくれるとしたら「大変だね」とか「全然大丈夫でしょ」、お世辞なら「気付かなかったよ」、このあたりのコメントで終わりにしてくれたら、私はきっと心の底から、その人に感謝できるだろう。これはあくまでも私の話で、「化粧出来ない人」全員がそうかどうかは知らないけれど。

あー、クッソ羨ましい。「お化粧しないと外に出られない~」って愚痴はよく聞くけど、自逆風自慢だろそんなの。
化粧品に金をかけられる経済状況が前提で、化粧をすれば美人度が上がるだけの化粧スキルを持っていて、そのスキル向上のために努力出来るだけのモチベーションがあって、毎日自分の美人度を上げて、その分自己肯定感が上がった状態で世の中を渡って、その底上げした自己肯定感に慣れきってしまっているからこそ「お化粧しないと外に出られない」があるわけで、どう考えても自業自得だし、毎日メリットを享受してるんだから、甘んじて受け入れろよそのぐらい。こちとら生まれてこの方、デフォルト設定の無課金アバター顔から1ミリも盛れずに勝負してるんだぞ。
本当は化粧なんてしたくない、面倒くさい!って言うなら今すぐこっち側に来ればいい。その気になれば寝起き1分でコンビニ行けるし、風呂上りにはそのまま寝られる。洗面所スペースだって、男性と同等どころか、髭剃りグッズが要らない小4男児と共用で済む。歯ブラシと歯磨き粉、ベビーローション、日焼け止め、以上なのだ。
ただし「こちら側」に来れば「成人女性は化粧をするのがマナー」という一般常識が蔓延るこの世で、あらゆる「良識ある人々」からいつどこでどんな風に攻撃されても仕方ない弱点を、常に顔面に晒し続けることになるから覚悟して欲しい。それが嫌だと思うなら、とっとと「そっち側」にお帰り下さいという話である。自意識と世間体さえ解決できれば、気分次第で好きな方選べる人はいいよねー、ケッ、贅沢なセレブどもが。

「化粧が出来る人」は、もうその時点で私より間違いなく優れた人間だ。
私より丈夫な皮膚を持ち、肌の不快を耐えられる忍耐力があり、上手な化粧スキルを持ち、毎日欠かさず化粧をし、それだけでなく肌のお手入れや化粧スキル向上にまで労力をかけられる、勤勉な努力家なのだ。そっちが優等種でこっちが劣等種、運動センスに優劣があるように、少なくとも「化粧」というフィールドにおいてはそうなのだ。
だからどうか、化粧しようとちょっと思ったぐらいじゃ出来ないこっちを「マナーとして少しはした方が良いよ?」なんて窘めたり、「化粧ができるように」親切に誘導したり、「化粧しないで歩けるなんて肌が綺麗だから」なんて、羨む振りをしながらマウントを取ったりしないで欲しい。そんなこと本心では微塵も思ってもいない癖に、私がアンタらに一体何したってんだよこんちくしょー!

と、うっかり取り乱すぐらいのコンプレックスで「お化粧が出来る女性」を羨みつつも、「私は自分の自由意思で化粧をしていないんです、何ら後ろめたいことはありません!」という顔で生きてきています、アラフォーまで。

はぁ。やっぱり羨ましい。
私も一度でいいから、カワイイを作ってみたい人生だった。

もうここから先は開き直って、人生の重みとか渋みとか荘厳さとか、太古の英知を継承していく感じのお婆ちゃん顔の作り方の練習でも始めた方が良いかもしれない。FFの魔女マトーヤ的な。そんでたまに洞窟に訪れる若い冒険者を無意味に罵倒してみたり、意味深な感じを匂わせて無茶な雑用押し付けたりしつつ、何だかんだ冒険の手助けしてあげたりするツンデレお婆ちゃんになるんだ。そうだ、きっと私が目指すべきはアレに違いない。多分マトーヤも絶対化粧しない派だと思う。「化粧?フン、くだらない。顔なんて所詮皮一枚の話じゃないか、そんなもん気にするぐらいならカエルにでもなった方がマシさね」とか、そんなことを心の底から思えるようになりたい。

ともあれ。
「化粧が嫌い・出来ない」ってだけでうっかり4200字も書いてしまうほどコンプレックス丸出しの私も、何とかそれを気にせず生きて行けるようになりたいなぁ、と思っている所存ですので、どうか化粧が出来る方々も、化粧が出来ない人の事を気にせず生きて頂ければ幸いです。
是非ともよろしくお願いします、切実に。

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