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フランスの旅(8)~トゥール

Bonjour ! 長く鬱陶しかった梅雨( Saison des pluies )も終わり、いよいよ本格的な夏( Été )が来ましたね。

しばらくご無沙汰しておりましたが、今回からまたフランスの旅の思い出について書こうと思います。まず私が滞在したトゥール( Tours )を最初に、「フランスの庭」と呼ばれ言葉も風景もこの国で最も美しいとされるロワール川( La Loire )流域の街を旅した時のお話をいたします。

私がこの街のホテルに泊まったのが、今から15年前の2007年春。通っていたパリ大付属の語学学校のイースター休暇を利用して、一泊二日の貧乏旅行に出た時でした。パリに比べてとても静かな街でしたが、まず最初に駅から出て歩いたシックな店の並ぶ商店街が印象に残りました。あとロワール川のすぐ近くにあるパン屋さん( la boulangerie )で食べたチョコパン( pain au chocolat )の美味しかったこと!木組みの建物が立ち並ぶ旧市街の傍にあった本屋さん( la librairie )のショーウインドーに日本の漫画が置かれているのを見て驚いたのを覚えています。(あ、でも今思えば驚くほどのことではありませんでしたね。この頃からフランスでは日本の漫画は人気がありましたし。)

堤防の階段を下りて、街を流れるロワール川の川岸に腰かけ、ぼんやりと物思いにふけった時は楽しかったです。緑豊かな森の中を青く澄んだ水をたたえる川が流れるのを見ていると、何だか本当に土地の女神( la déesse )妖精( la fée )がそこから現れるような気がしました。なおこのロワール川は、大雑把に言えば古代はケルト人とローマ人、中世は後のフランス語の祖先にあたるオイル語とオック語、そして第二次大戦期はドイツ軍が直接支配する占領地帯とその傀儡政権であるヴィシー政府/フランス国が統治する自由地区という風に、文字通り長い歴史の中でフランスを南北二つのテリトリーに分ける境界となって来ました。

さてこのトゥールにゆかりのある人物で、忘れてはならないのが19世紀の文豪オノレ・ド・バルザック( Honoré de Balzac )です。後にドストエフスキーやトルストイにも強い影響を与えたこの作家は、この街の裕福な実業家の息子として生まれましたが、母親( la mère )に愛されることがなく孤独な少年時代を送ったとか。その悲しい思い出が、大人になってから創作のエネルギーになったのかも知れません。


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