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デザフェス56で展示をしてきました。

実はこの作品は、この状況ではまだ未完成となっていて、見に来て下さった方なら誰でも簡単にできる行動で、作品を完成させることができます。さて、その行動とは何でしょう?

 という無茶ぶりな質問から、作品の解説を始めました。

6行目まではただ単に性格を表現する言葉を羅列しているだけで、最後の2行と、言葉が穴になっている、ということにものすごく意味があります

 と続けました。この段階で分かる人は、少数でした。

『言葉の中にいるのは私自身でしょうか。それともあなたが思い描いた私でしょうか。』この最後の2行の意味を感じて欲しいので、正解は──

 そう言いつつ、作品内に入り込みます。

作品の中に入る、ことです。正確には、『中に人間がいて、それを言葉越しに見る』という状態となって、作品の完成となります

 どうしてこんな質問を交えて解説をしたか(──この記事内でも同じ説明を繰り返したか)。もちろん、(傲慢ではありますが)頭と心を費やして欲しいからです。これまでに何度か書いてきましたが、「思考することこそがアート」だと自分は思っています。

 というわけで、そんな作品をデザフェスで展示してきました。たくさんの方に中に入ってもらいました。写真を撮られたり、自分がシャッターを押したり。あわせて、大阪のイベントでお客さんに協力していただき作り上げた『客観』も壁面に飾り、一作品だけですが両面印刷のしおりも販売しておりました。あとは新作のコースター小説を名刺として置いときました(販売していたときより、半分の厚さです)。


 以下、搬入から搬出までの日記みたいなもんです。

 うまく搬入できるか。作品をちゃんと展開できるか。とにかく当日まで不安を抱えていました。巨大な画用紙に言葉を穴で書く、という下準備は少し前に終えていたのだけれど(めっちゃ疲れたよ)、材質は紙なので、まぁとても脆いです。簡単に破れます。加えて作品の運搬は、いわゆるバズーカと呼ばれる筒状の図面ケースに入れて持っていくという方法しかないので、作品を丸めることによって紙に強い癖がつき、作品を天井から垂らすという行為が容易でなくなることは目に見えていました。言葉の穴の部分が他の穴に引っかかって破けるなんてこともある……。搬入に失敗をしたら、それだけで作品を展示できなくなる。そんな緊張を抱えつつ、あれこれ荷物を肩に掛け、東京ビッグサイトへ。
 頭の中では何度かシミュレートしていました。その手順通りに、どきどきしつつも──。結果、上記の写真の通り、想像で描いていた空間と、同じものを展開することができました。どっと、肩の荷が下りました。いや本当、うまくいきました。あとはもう、いつもの通りに読書をしながらお客さんを待つばかりです。

 やがて、興味を持って立ち止まって下さる方が。すすんで解説をいたします。解説が進むと、目を見張り、あぁっ、と声を漏らし──作品の意図が伝わった瞬間はとても嬉しいものです。というか作品について話しているときが、楽しくてたまらない。メインの作品だけでなく、『客観』やら、しおりについても、問いかけを交えつつ解説をします。もう、こんなに話すことは以前はなかった。そもそも以前は「何となく」で作品をつくっていたから、語ることがあまりなかった。しかし今回は、作品が「必然」に裏打ちされているので、もう語りまくることができます。「まだ(解説が)あるのか!」と驚かれもしました。

 ただ、暇な時間も結構ありました。そうして傾向としては、会場が混雑している時間帯のほうが、立ち止まって下さる方は少なかったように感じています。というのは、ブース全体に作品を展開しているので、必然的に通路に立ち止まって作品を鑑賞していただく形となります。つまり、通路が人で混雑していると、なかなか立ち止まりにくくなります(初日は、コミケかっていうくらいに、駅からビッグサイトまで行列が続いていたようで)。で、本来はこの作品もっと広いブースを使いたかったのだけれど、申し込んだ時点ではまだこれまで通りの販売をする気だったので、一番小さいスペースでエントリーをしておりました。それが途中で活動名と活動内容を変えたものだから、今回のように鑑賞するスペースが通路になってしまったのでした。今回は避けようがなかったけれど、今後は鑑賞するためのスペースも頭に入れなくては。

 ただ、本音を言えば、もう少し忙しくなるかなぁ、とは皮算用していました(2日目は漱石の『坊っちゃん』を7割近く読み進めることができるほどに暇な時間がありました)。とはいえ、自分の思ったとおりに作品が展開できて、そのとおりの結果になったというだけなので、特にあれこれ思い煩うことはありません。今後も自分のやりたいように作品を展示するだけです。

 以下、気づいた点やら。
・立ち止まるお客さんは、圧倒的に女性が多かったです。販売の頃も少しはそういう傾向があったけれど、今回は多分9割以上女性の方でした。デザフェス自体女性が多いけれど、ここまで顕著になったのはどうしてだろう。

・多分、こういった空間を活かしたアート作品=インスタレーションを展開しているのは、少なくとも今回のデザフェスでは自分だけだったのではないかと、ざっと会場内を歩いて思いました。「ここは何を売っているんですか?」という質問を何回か受けたし、やっぱ作品を売る/買うことを目的に来ている方が多いんだろうなぁ、と。

・もし次にデザフェスに参加するとしたら、ライブペイント枠になる気がしています。あるいはデザフェスを卒業して、どこかの街のギャラリーで個展をやるかもしれません。まぁ、好きにやります。というか、今回の作品の構想やら準備やらで結構疲れたので、また2泊3日くらいで湯治旅でもしてぇなぁ、なんてことを思っています。

 以上、未だにこの作品に名前をつけちゃいないけれど、デザインフェスタ56の出展レポートでした。最後までお読み下さり、ありがとうございました。


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