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IPO株 目論見書の読み方(注目ポイント)

スタートアップ企業が上場する瞬間は華々しいもので、上場承認のニュースが流れると、twitterやFacebookですごい数のいいねや祝福のコメントが飛び交います。
そんな中、新規上場企業がどのような会社を少し知っておけば、打ち合わせ前のスモールトークネタに使えます。「あの上場承認された会社ですが、時価総額が●億円で、調達額が●億円で、株主が●で、売上と利益は〜」というような感じです。「あの会社、上場するらしいよ!」という一言から、ちょっとだけ知ってる風になれるように、新規上場会社を語るための目論見書の読み方を記事にしました。
このnoteでは、目論見書の目次を1から順に読めるようになるnoteではなく、知りたいことの順番にどこにあるかを解説してます。

ちなみに、このnoteを読むと、この程度語れるようになります。
(以下は、ヘッドウォータースの例です)

■時価総額
8月24日に上場承認されたヘッドウォータースは9月29日に上場予定で、上場時の時価総額が21億円で、資金調達額は2億円。株主には、ベクトルやチェンジなどの事業会社も株主になってます。ストックオプションは15%くらい発行してます。

■売上と利益
2019年12月期の売上高は10.6億円で、経常利益は1.2億円。2020年12月期の業績予想は、前期比売上高11.3億円で前期比6.3%増、経常利益は1.7億円で42%増です。今は、業績は堅調ですが、5年前は赤字で債務超過、翌年は減収で赤字拡大していたので、そこから業績V字回復して上場承認に至ってます。粗利率は45%です。

■会社概要
社員は74人、今はグループ企業がないんですが、以前はカンボジアやベトナムにグループ企業がありましたが、2016年に株式譲渡してます。

■事業
事業内容はAIソリューションでプロダクト販売ではなく受託開発中心。販売先は、特定の2社合計で50%近く依存してます。

こちらの記事がある程度理解できるようになりますので、よろしければ、目論見書分析の記事もご覧ください。

上場承認を一早く知る

新規上場承認のニュースをいち早く知るためにはいくつか方法がありますが、最も確実な方法は、日本取引所グループの「新規上場会社情報」になります。

今年何社上場してるのかを、同じページ内の下にあるリンクから簡単に知ることもできます。

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上場直後の主な情報元としては、EDINETになります。本来であれば目論見書を読みたいところですが、証券会社のホームページには上場承認後数日間経ってから見つけることができる(証券会社により日数差ある)ので、早く情報を入手するならEDINETで会社名で検索します。ここなら上場承認日に確実に上場が掲載されています。
書類検索で「ヘッドウォータース」を入れたのち、「その他の書類種別」にチェックして、検索します。検索結果の「有価証券届出書(新規公開時)が閲覧する書類になり、クリックすると別ウィンドウで書類を閲覧することができます。PDFでも閲覧可能です。

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左側にメニューがあるため、目的のコンテンツにたどり着きやすいUIになってます。

時価総額

■時価総額
8月24日に上場承認されたヘッドウォータースは9月29日に上場予定で、時価総額が21億円で、資金調達額は2億円。株主には、ベクトルやチェンジなどの事業会社も株主になってます。ストックオプションは15%くらい発行してます。

まず時価総額の計算式は、株式数 × 株価 = 時価総額となり、発行済株式数と株価を知る必要があります。ここでの株式数は、公募増資前の株式数で潜在株式(ストックオプション等)を含む株式数とします。
「第3 株主の状況」の 計 948,200(125,400)が株数にあたり、カッコ内は潜在株式の内数になります。また、ここで株主一覧を知ることができます。

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株価は、2 募集の方法想定仮条件(2,240円)がそれにあたります。

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よってヘッドウォータースの時価総額は、
948,200株 × 2,240円 = 約21億円です。

ストックオプションの比率は、株主の合計数から計算します。ストックオプションを除いた発行済株式数が948,200株−125,400株=822,800株となり、ストックオプションの数を発行済株式数で割ると、下記のとおりです。
125,400株÷822,800株 =15.2%となります。

売上と利益

■売上と利益
2019年12月期の売上高は10.6億円で、経常利益は1.2億円。2020年12月期の業績予想は、前期比売上高11.3億円で前期比6.3%増、経常利益は1.7億円で42%増です。今は、業績は堅調ですが、5年前は赤字で債務超過、翌年は減収で赤字拡大していたので、そこから業績V字回復して上場承認に至ってます。粗利率は45%です。

売上と利益を確認する方法はシンプルです。1 主要な経営指標等の推移をご確認ください。

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業績予想については、目論見書に記載されておらず、会社ホームページで公表する業績予想リリースになります。会社によっては、ホームページに掲載せず指定された報道機関のみに開示される場合もあります。その場合には、トレーダーズ・ウェブの新規上場企業概要の業績予想で開示されることがあります。

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トレーダーズ・ウェブIPO銘柄詳細より抜粋

粗利率に関しては、損益計算書の売上高と売上総利益から計算しています。

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売上原価明細書もありましたので掲載しておきます。外注加工費、労務費がかなり多いことから、受託開発であることが想定できます。

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会社概要

■会社概要
社員は74人、今はグループ企業がないんですが、以前はカンボジアやベトナムにグループ企業がありましたが、2016年に株式譲渡してます。

社員数は、前期末時点の数字であれば主要な経営指標等の推移に記載があり、直近時点の従業員数であれば、5 従業員の状況にて確認することができます。今回は直近の数字を記載しています。また、関係会社の有無については従業員の状況の上、4 関係会社の状況にて確認できます。現時点の関係会社はありません。過去のベトナムグループ会社については、2 沿革に記載があったため、抜粋しました。

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事業

■事業
事業内容はAIソリューションでプロダクト販売ではなく受託開発中心。販売先は、特定の2社合計で50%近く依存してます。

事業の内容、および、第2事業の状況については、市場環境、事業内容、事業等のリスクに対して経営者がどのように考えているか記載されています。形式的なフォーマットである目論見書の中では、ある意味最も自由記述をする箇所になります。ここでは、3 事業の内容を抜粋して記載します。

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特定の販売先については、2 事業等のリスクに記載があります。

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おわりに

いかがでしたでしょうか。目論見書は形式的で読みづらいフォーマットではありますが、どの企業も決まった同じ情報を入手することができます。今後、気になる企業が上場承認された時には、いち早く目論見書を見て、情報収集しておきましょう。

もしよければ、このnoteをブックマークしておいてください!

さらに、目論見書から深堀分析した内容を知りたい方は、グッドパッチなどで記事を書いてますので、ぜひこちらも読んでみてください。

今後も、目論見書からの分析記事を書いていきますので、引き続き宜しくお願い致します!